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2024年03月28日

「海外で”問題”になった広告事例」
~海外事例から学ぶ広告表現のポイント~

商品の売れ行きは、「広告の表現」1つで大きく変化します。

少しでも売り上げを伸ばそうと、マーケティング担当者や広告代理店の担当者が日々試行錯誤を繰り返しています。近年では、AIの登場で広告コピーはAIが考える時代に突入しましたが、一方で、どの時代であっても過度な表現や誤った伝え方なども見受けられるのが実状です。しかも、海外向けとなるとその国の文化・価値観はもちろんのこと、ニュアンス、伝わり方、日常的な言葉の使い方など細部まで注意しなくてはなりません。

文化、宗教、タブー、常識、言語……

世界はダイバーシティにあふれており、自分の認識にとらわれて表現することで、ブランド棄損に繋がってしまうこともあります。今回は、海外市場における広告の表現によって(おそらく)意図せず落とし穴に落ちてしまった「海外で問題となった広告事例」をご紹介します。

 

 海外で問題になった広告事例

では、実際の事例を見ていきましょう。

ケース1:カナダ

dot 広告主

オーストリアの清涼飲料メーカー「Redbull(レッドブル)」

dot 事象

「Red Bull gives you wings(レッドブルはあなたに翼を与える)」というインパクトのあるスローガンで世界的市場で強い存在感を築いてきたレッドブルですが、そのスローガンを巡って、2019年カナダで集団訴訟に発展しました。

日本でも話題となったこの訴訟は「レッドブルを飲んでも翼が生えてこなかった」という表現で揶揄されていましたが、実際は、「カフェイン入りのレッドブルの効能が、コーヒー1杯分以下という研究結果が出ているにも関わらず、集中力向上、身体的パフォーマンスが向上するといった特定の効果があるような虚偽の広告表現をした」という内容でした。

最終的にオーストリアの親会社Red Bull GmbH社は総額85万カナダドルを支払うと発表し、世界的に注目を集めた訴訟となりました。(実は、2014年にもアメリカでも虚偽広告について同様の集団訴訟が発生しており、1300万ドルの支払いで和解しています。)

レッドブルは世界中の若者から支持される人気の高いブランドです。しかし、今回の訴訟は広告宣伝におけるマーケティングメッセージの正確さ、透明性を高める必要性を改めて問い直す機会となりました。

 

ケース2:イギリス

dot  広告主

コカ・コーラ UK

dot 事象

コカ・コーラが発売したラグソービタミンウォーターシリーズの広告は、”Enhanced hydration for the nation – delicious and nutritious(国民の水分補給を強化 ‐ 美味しくて栄養価が高い)”という内容のポスターキャンペーンを実施しました。しかし、実際にはビタミンウォーターには、500mlの容量に対して23グラムの砂糖が含まれており、「栄養表示が誤解を招く」と苦情が寄せられました。

coca cola vitaminwater

コカ・コーラ社は、EUの栄養表示基準に沿った場合、「低カロリー」と表現される可能性があると述べましたが、広告基準局(ASA)は、一連の「栄養価が高い」という広告表現は、誤解を招く可能性が高いとして広告を禁止しました。

海外では食品や飲料に含まれる砂糖に対して非常に厳しい規制を設けるなど、国を挙げて対策を講じているため、広告表現も細心の注意が必要です。

 

ケース3:英国

dot  広告主

KFC(グレートブリテン社)

dot 事象

新鮮な地元の農場で飼育されたチキンだけを使用していることをアピ―ルするために、DMX の「X Gon’ Give It To Ya」に合わせて、踊るニワトリに焦点を当てたKFCの広告は、2017年イギリスで最も苦情が寄せられた広告となりました。

“the chicken, the whole chicken, and nothing but the chicken(チキン、丸ごとチキン、そしてチキンだけ)” というスローガンはベジタリアンやビーガンにとって苦痛を感じるものであり、映像は屠殺場に向かう鶏を連想させるといった声があがるなど、制作側の意図と反した反応を引き起こしてしまいました。

 

ケース4:英国

dot  広告主

イギリスのプロテインサプリメントを販売する「ProteinWorld」

dot ターゲット

「体型を気にしている女性」

イギリスのプロテインサプリメントの会社が「ビーチに行く体はできている?」というキャッチと、スレンダーな体型のモデルが目立つダイエット食品のポスターをロンドンの地下鉄に展開しました。

知らないと危険!?海外で問題になった広告事例

これを見た市民の多くから「ポスターのモデルのように痩せていないとビーチに行けないのか!」との批判が数多く寄せられました。減量・代替製品を宣伝するこの広告に対して、67,000人以上の請願書に署名があり、ポスターには落書き、SNS上ではその写真が皮肉な言葉と共にアップロードされるなど、まさに「炎上した広告キャンペーン」になってしまいました。

さらに一般市民だけではなく、ロンドン市長のサディク・カーン氏も「若い女性が自分の体型を気にして自信を持てなくなるような広告が多く、このような風潮は止めなければならない」と批判の声を上げるなど、ある意味で行政を巻き込んだ話題の広告となりました。

 

ケース5:フィンランド

dot 広告主

300種類以上のおもちゃを扱うECサイト

dot 事象

2015年、ショップ側は子供にプレゼントを探している両親や祖父母などの大人に向けて、スムーズにプレゼントを探せるよう以下のような文章をサイトに掲載しました。

Nuket kuuluvat jokaisen tytön lempileikkeihin! Tyttöjen ja poikien leikit erottaa jo varhain, sillä nukkevauvat ja muut hoivattavat kulkevat pienoisen tyttösen kainalossa mukana jo taaperovaiheesta. Meiltä saat suositut Barbie-nuket, Baby Born -nuket sekä tarvikkeet, kuten nukenrattaat ja tuttipullot. Katso rauhassa läpi laaja valikoimamme ja kuulostele hieman lapseltasi, minkälainen nukke olisi mieluisin. Voit täydentää lapsen nukentarvikkeita aina syntymäpäivinä, jolloin lahjan miettimiseen ei kulu aikaa. Pojille suosittelemme kauko-ohjattavaa autoa tai uusinta Legopakkausta.

”Vauhtia rakastaville lapsille ja lapsenmielisille meiltä löytyy kattava valikoima kauko-ohjattavia autoja, RC-autoja sekä -helikoptereita. Ilahduta koko perhettä hankkimalla esimerkiksi autorata tai kauko-ohjattava auto. Näillä leluilla saa ajan kulumaan ja tekemistä koko perheelle! Täältä löydät myös Brio-junat, pikkuautot, sekä parkkitalot. Mikäli etsit lahjaa tytölle, tutustu nuket ja tarvikkeet -kategoriaamme tai hanki leikkikeittiö perheen pikkuleipurille. Meiltä saat ilmaisen ja nopean toimituksen Anttila-tavarataloon!

黄色くハイライトをした部分を簡単に要約すると「女の子はみんな人形で遊ぶのが大好きです。女の子・男の子の遊びは早くから区別されます。」「男の子にぴったりな列車、小型車、駐車場などがたくさんあります。」「もし女の子用のプレゼントを探しているなら人形やアクセサリーのカテゴリをチェックしてみて下さい」という内容の表現でした。

「女の子=人形が好き」「男の子=列車や車が好き」といった表現が「性別によって子供の可能性を阻害する危険がある」として問題になったのです。サイトの文章を掲載してから、このサイトブログには多数の脅迫や不適切なコメントが相次いで書かれるようになりました。結果、2016年にフィンランドの広告倫理評議会(MEN)は「当該広告が女性または男性の典型的または特徴的な偏見を含んでいる」として男女差別的であるという判断を下しました。

LGBT理解増進法が施行された現在の日本でも、注意すべき表現と言えるでしょう。

 

ケース6:ドイツ

dot 広告主

メンズフレグランスの新商品を発表した会社

dot 事象

ドイツのメンズフレグランスの会社が新商品のコピーを「REAL MEN SCORE」と題し、ビルやネット、デパートなどにキャンペーンポスターを展開しました。「女性を下から眺める男性」を描写したポスターには、「性差別的である」といった多くの苦情が寄せられました。

性差別的であるとされた理由の1つに「本物の男性(REAL MEN)としてこのフレグランスを使うことで、女性に対して成功を収めることが暗示されている」という見解がありました。(日本でも男性の魅力を高めるような内容で制汗スプレーのテレビCMがありますよね)。「女性を貶めている」という苦情が非常に多く寄せられ、結果として議論・話題を呼んだ広告となってしまいました。

 

ケース7:オーストラリア

dot  広告主

Calvin Klein(カルバン・クライン)

dot  事象

オランダ出身のスーパーモデル、ララ・ストーンを起用した広告は、オーストラリア全土に設置されましたが「女性に対する性暴力を表現している」と多くの苦情が寄せられ、ある意味、世界的に非難・注目を浴びた広告となってしまいました。

画像は過激な描写であるため、こちらからご確認ください。

多くの抗議を受けたオーストラリア広告基準局は、審査委員会を設置。「女性を卑下しているだけでなく、男性に対しても侮辱的である」との見解を示し、広告の削除を命じています。

 

海外事例から学ぶ広告表現のポイント

海外向けの広告表現は、その国や地域の文化・価値観を理解したうえで制作する必要があります。近年、ジェンダーのみならず広告表現に関する問題が多く議論されています。イギリスでは2017年に「性別にもとづくステレオタイプを助長する表現の広告」は禁止されています。日本でも医療広告における表現をさらに規制する改正が行われるなど、世界中で厳しい制限が設けられています。

全てのデジタル広告はその国や地域において、全ての法律・規制に準拠している必要があります。100%全てを正直に表現することは難しいですが、顧客からの注目を集めるために過激な表現を行ったり、事実を拡大したり、差別的な表現や、言葉を捻じ曲げるようなことは決して行ってはいけません。

多くの広告にさらされている現代社会では、倫理観を持ってマーケティングに取り組むことは、顧客が商品を購入する際の重要な選択基準である「ブランド力」に直結します。既に世界は持続可能な社会へシフトするというフェーズに突入しており、企業の社会的価値が評価される時代になりました。ビジネスの成長と共に、倫理観の低い企業はグローバル市場において、市場機会へのアクセスを失うリスクさえあることを一人ひとりが認識して広告運用に取り組む必要があります。

 

まとめ

「よりユーザーに刺さるクリエイティブを」「より成果の出るマーケティングを」と試行錯誤を重ねるのは私たちマーケターの使命でもあります。しかし一方で、海外市場をターゲットとする場合、規制はもちろんのこと国・地域によって異なる価値観や文化を理解・尊重することを忘れてはいけません。日本国内はもちろん、海外でマーケティングを行う際は現地の状況を確認し、表現が適切か、法令違反がないかどうかなどを調べてから行いましょう。

海外ならではの「文化、慣習、価値観」などを踏まえたグローバルマーケティング・広告施策は、インフォキュービック・ジャパンにお任せください。さまざまな国・地域、媒体でアプローチが可能です!

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吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。