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2022年12月17日

海外向けSNS運用「見直しチェックリスト」
~やってはいけない!SNS戦略~

ソーシャルメディアはユーザーと企業を繋ぐ、優れたコミュニケーションツールの1つです。ソーシャルメディアを効果的に活用することで、BtoCはもちろんBtoB企業であっても、ユーザーとの強固な繋がりを構築し、有効なリードを生み出すなどビジネスを大きく発展させる可能性を秘めています。

しかし、SNSマーケティングには多くのメリットがある一方で、誤解を招く投稿は、一瞬にしてブランドの信頼性を破壊し、大きな代償を払う可能性があることを忘れてはいけません。言語や文化・価値観・嗜好性・宗教も違う海外の場合は、その国や地域にローカライズさせることはもちろんのこと、細心の注意を払いながらSNS運用を行う必要があります。

今回の記事では、効果的な海外向けSNS運用を実施するために見直したい項目をチェックリストとしてまとめました。既に海外向けにSNS運用を実施してるマーケターの方や、今後、SNS運用に取り組みたい方も、ぜひ参考にしてみてください。

目次

 

check 明確な戦略・ゴールを設定がない

世界中で既に多くの企業がSNS運用に乗り出している現在では、SNSマーケティングは既にレッドオーシャンと言っても過言ではありません。「とりあえず、始めてみる」とSNS運用を開始しても良いですが、進むべき目標設定や戦略を持って運用を行わないと、海外向けの場合は特に工数だけがかかり、現場が疲弊してしまう…… なんてことも起きてしまいかねません。

そうならないためにも明確なプランを設計し、ゴール・指標を定め、戦略的に運用を実施することで、SNSの力を最大限に引き出すことが出来るでしょう。

SNS運用見直しチェックリスト 目標設定

一般的な海外向けSNS運用では、下記のような目標を設定します。

  • ブランド認知の向上
  • 顧客エンゲージメントの構築
  • ブランドの評価、評判を向上させる
  • 売上げ、コンバージョンの増加
  • カスタマーサービスを提供する
  • 市場と顧客に関するインサイトを収集する

 

check 一貫性のない不定期な投稿を行っている

SNS運用を行う場合、一貫性のない投稿や不規則な投稿は、ユーザーを側を混乱させてしまいます。効果的なマーケティングを展開するには、コンテンツを定期的に投稿することは大前提です。新しいキャンペンーンがあるときだけ投稿し、それ以外はアカウントを放置するなんてことは厳禁です。また、投稿・広告キャンペーンなどは視覚的にも内容にも一貫性を持たせましょう。

<Starbacks Blonde esoressoキャンペーンは、当時さまざまな物議を醸し出しました。>

SNSに投稿する画像の配色に気を配る必用があります。1投稿の配色であっても一貫性がないと、ブランド認知度が高まりにくいとされています。「配色」を統一するとブランドの認知度が最大80%高まるというロヨラ大学の調査もあるほどです。

複数の担当者が投稿を行う場合でも、一貫した投稿を行う必要があります。「担当者が変わったら投稿内容が変わってしまった」「投稿者によってトンマナが変わってしまう」といったことがないよう、「ソーシャルメディアポリシー」を策定し、以下の項目を含めておきましょう。

  • ソーシャルメディア使用ガイドライン
  • 全てのプラットフォームで伝えるべき「ブランドの声」
  • 著作権に関する方針
  • 担当者向け守秘義務
  • 危機対応プロセス

 

check SNSの特性を理解していない

世界中には非常に多くのSNSが存在し、各SNSそれぞれに特徴があり、長所と短所が存在します。また、SNSを利用するユーザーの年齢層や利用目的も異なります。そのためSNSを選定する際には、SNSの特性を理解する必要があります。単にユーザー数が多いからと言ってFacebookを選んでいませんか?

  • ターゲットとなる国と地域で利用されているSNSは?
  • ターゲットとなるユーザーがそのSNSを利用する目的は?
  • 自社のビジネスに相性の良いSNSは?

複数のSNSを同時に運用する場合は、そのSNSに最適なコンテンツフォーマットで投稿する必要があります。Facebookで投稿したコンテンツをそのままInstagramに転用してもエンゲージメントは高まりません。

各ソーシャルメディアの特徴 (1)
ホワイトペーパー_海外マーケティングに役立つ!「ビジネスに最適なSNS選定のヒント」〉

以下はFacebook、Instagram、Twitter、LinkedInの特性をまとめました。

Facebook-logo Facebookの特性

Facebookは実名制登録のため、匿名性が低いのが特徴です。また、テキスト・画像・動画・ライブ配信など、さまざまな投稿フォーマットが利用可能です。Facebookのタイムラインは「投稿順」ではなく、エッジランクというユーザーの興味関心が高い投稿が上位に表示される仕組みがあります。そのため自社のターゲットユーザーの「興味・関心が高い投稿=エンゲージメントを獲得しやすい投稿」やユーザーとの「コミュニケーションを目的とした投稿」がベストといえるでしょう。SNSの中ではユーザー年齢層が高めであり、30代~40代のユーザーが多い傾向にあります。

Instagramの特性

Instagramは、SNSの中でもビジュアル訴求に優れた特性を持っているため、投稿は視認性の高い画像や動画がメインです。しかし、単に「画像・動画」を投稿しても効果は低く、「インスタ映え」という言葉があるように、ターゲットユーザーにとって魅力的な投稿をしなくてはいけません。また、新しい発見を求めるユーザーが多く、ハッシュタグ戦略も効果的なプラットフォームです。比較的若いユーザーに人気で10~20代の女性ユーザーが多い傾向です。

twitter logo Twitterの特性

Twitterは拡散に優れているという特性を持っています。ただし、投稿できるテキストには280文字(半角)の制限があるため、1つのツイートで簡潔に情報を伝える必要があります。ユーザーの共感を得るような投稿をすることで、多くのユーザーにリツイートされるので、権威性を高めたい、ブランド認知度を高めたい場合などに最適なプラットフォームといえるでしょう。Instagramと同様、10~20代のユーザーが大半を占めています。

LInkedIn logo LinkedInの特性

LinkedInはBtoB企業に親和性の高いSNSです。もともと転職・採用に活発に利用されており、ビジネスに関心が高い人たちが各業界の専門家とつながるための重要なソーシャルネットワークとしてすでに多くの国で浸透しています。LinkedInの特徴は、LinkedInユーザーのうち9000万人が上級レベルの役職、6300万人以上が意思決定のポジションについていると言われています。LinkedInをうまく活用できれば、企業はより多くの購入決定者に商品やサービスをアピールすることができ、顧客とネットワークを築く機会を得られるでしょう。

また、LinkedIn広告を活用する場合、年齢・性別・場所など基本的なターゲティングセグメントに加えて、会社名、会社業種、会社規模、会社フォロワー、会社のつながりや、経験年数(1年~12年以上まで)、スキル、業種、役職、職務タイプ、職務レベルなどのほか、出身校や専攻、学位といった区切りでのアプローチが可能になります。

 

check 商品を売り込んでいる

SNS運用見直しチェックリスト商品を売り込んでいる

SNSを利用するユーザーの目的はSNSによって異なりますが、主に「情報収集」や「他人とのコミュニケーション」がほとんどです。SNS運用の最終ゴールが「購入」であっても、日々の投稿が最新商品の案内やセールの告知ばかりでは、せっかくのコミュニケーションの場が「商品カタログ」になってしまいます。

Facebook・Twitter・LinkedInの利用目的を調査したInterpretの調査レポートによると、Facebook、Twitterの利用目的の多くが「楽しむため・友人との交流したい」と回答しており、LinkedInの利用目的の最も大多数をしめたのが「キャリアを伸ばしたい・新しい機会を探す」でした。

SNSは、ユーザーと企業を繋ぐ「コミュニケーションの場」であることを忘れてはいけません。新しいキャンペンーンがあるときだけ投稿し、それ以外は「放置する」なんてことは厳禁です。

 

check フォロワーとの関わりを避けている

フォロワーを無視することは、ユーザーの興味・関心を完全に失わせてしまう行為の1つです。炎上を恐れて下手に返信しないほうが良いとばかりに、コメントやユーザーからのフィードバックに一切返信しない戦略はビジネス機会を逃す可能性があります。

企業が(大変な思いをして)SNSマーケティングを実施する最大のメリットは、「企業⇔ユーザー個人」の深い繋がりを構築することが出来ることです。従来の一方通行で情報発信だけを行うプッシュ型の運用では、ユーザーとの深い関係を構築できず、SNSマーケティングを実施するの最大のメリットである「個人⇔企業」との関係構築ができません。

こちらの記事「SNS、共有の心理学」でも掲載しましたが、ユーザーが「なぜ、企業をフォローするのか」、「なぜ、共有するのか」を理解した運用を意識しておくことで、SNSマーケティング成功への一歩となるでしょう。

 

check 投稿が少なすぎる・多すぎる

投稿の頻度が多すぎると、ユーザーに嫌悪感を持たれるリスクがあります。ただ、投稿が少なすぎてもフォローする価値がないと思われてしまうでしょう。投稿頻度の選定は業界や目標によって異なりますが、以下の回数を参考に投稿スケジュールを計画してみましょう。

SNS 投稿頻度の目安
Facebook-logo Facebook 1〜2回 / 日
Instagram(フィード) 3〜7回 / 週
twitter logo Twitter 1〜5回 / 日
LInkedIn logo LinkedIn 1〜5回 / 日

 

投稿回数や曜日を変更する場合、ある一定の期間で運用してデータを蓄積しましょう。ある程度データが蓄積したら、同等の期間・異なる投稿回数や曜日を変更し、ユーザーの反応のを比較します。その後、自社のリソースなどを考慮し最適な投稿回数を見極めます。

スケジュール計画では、曜日ごとにテーマを決めるなど、事前に投稿プランを決めておけば、投稿内容も考えやすく、コンテンツ制作をスムーズに進めることができます。

 

check 投稿だけを行っている

SNS運用チェックリスト 投稿だけ行っている

SNSが普及してきた2010年頃の黄金期、広告の力を借りなくとも非常に高い効果が得られていた時代がありました(遠い目)。しかし、数え切れないほど数多くのコンテンツが投稿される現在、「オーガニックリーチ数」は著しく低下しています。

ほとんどのSNSは非常に高度なアルゴリズムによって、全ての投稿を投稿順にフィードに表示するのではなく、表示させるコンテンツをユーザーにマッチするよう「選別」を行っています。したがって、戦略・設計なしに単にコンテンツ投稿を行うだけでは、表示すらされない可能性もあるかもしれません。

多くのユーザーにコンテンツを届ける一番効果的な方法は、SNS広告に投資することです。お金を出して投稿を拡散すること・SNS広告を配信することは、「予算のある大きなブランドしかできない」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、戦略を持ちターゲティングやキャンペーン設定をしていれば、少額でも効果を得られるケースもあります。

海外向けの場合、ある程度の金額を投資する必要がありますが、まずは試してみましょう。

 

check 人材に投資できていない

SNSマーケターは、マーケティング業務の中でも比較的新しいポジションです。必要なスキルを全て持ち合わせた担当者がいれば問題ありませんが、実際のところ多くの企業内でソーシャルメディアチームを立ち上げることは難しく、短期~長期の戦略立案、企画、コンテンツ制作、コピーライティング、編集、データ分析…など、適任者を1人アサインするだけでも一苦労です。

さらに、それが海外向けSNS運用となると…言うまでもありません。「現地で担当者を採用して運用していたが、辞めてしまって、誰も引継ぎができずに止まってしまった」なんて、そんな話も耳にしたり、しなかったり…

今後、世界ではさらにデジタル化が加速し、デジタルネイティブの世代が増加することが予測されています。SNS の使用率はミレニアル世代で9 割以上と、若い世代ほど利用率が高い傾向があります。SNSは社会でこれから活躍する世代とつながる重要なコミュニケーションツールです。

海外向けSNSマーケティングを成功させるためには、担当者が1人で実行するのではなく、人材育成にしっかりと投資したり、適切にエージェンシーを活用するなど、チームとしてSNSを運用する体制づくりが必要です。

 

check チャットボットに任せている

チャットボットは、ユーザーとのコミュニケーションを図る最適なツールの1つですが、すべての工程を安心して自動化できるものではありません。これは、海外向けSNS運用にチャットボットを使用してはいけないという意味ではなく、使用方法に注意すべきということです。

例えば、NFLチームのニューイングランドペイトリオッツでは、Twitter公式アカウントでチャットボットが人種差別用語を誤ってツイートしてしまった事例があります。

 

 

ニューイングランドペイトリオッツの謝罪までに、約1,500件のリツイートがあり、多くのユーザーに対してマイナスなイメージを与えてしまいました。海外向けのSNS運用は気の休まらない施策ではありますが、全てをチャットボットに処理させると、こういったケースに発展してしまったケースがあるということを覚えておきましょう。

 

check 適切な予算確保・配分ができていない

SNSメディアに費やす金額について、特に決まった最低金額などはありません。少額から始められ、柔軟にコントロールし、いつでも止めることが出来るのがデジタル広告の魅力です。しかし、競合ひしめく海外向けSNS運用となると、しっかりと予算を確保し、戦略を立て挑まなければ「お金をドブに捨ててしまう」と言った事態になり兼ねません。

自社のSNSマーケティングの予算が適切か、またそれが正しく活用されているかを知ることは、施策のROIを高める重要なポイントとなります。既にSNSマーケティングに取り組んでいる企業であれば、定期的に既存のソーシャルメディア予算を再評価しましょう。「ほとんど利用していないツールに高額の費用が掛かっていた」という話は、よく耳にする話です。

再評価の手順は以下の通りです。

  1. 使用している有料ツールをまとめる:ここには有料ツールの料金だけでなく、使用頻度、重要度も記載しましょう。必要なツール・不要なツールがあれば検討します。
  2. マーケターのリソースを分析する:チームの仕事量を明確に把握していますか?ジョブディスクリプションによって仕事量を可視化することはリソースを分析するうえで必要不可欠です。
  3. 既存のマーケティング予算を評価する:予算がどこに使われているかを評価しましょう。将来のKPIと予測にマッチしていますか?
  4. SNS広告パフォーマンスを把握する:広告パフォーマンスを再評価しましょう。どの広告が効果が良く、どの広告のパフォーマンスが悪かったかを評価し、自社のビジネスにマッチしたSNSの選定が出来ているか、最適な広告媒体で、目的に合った施策を実施できたかを特定しましょう。
  5. KPIを達成できる体制を確保する:今後のSNSマーケティングのKPIに対する人的リソース、プラットフォーム、ツールなどが最適化されているかを照合しましょう。

 

check データ分析を実施していない

データ分析を実施する

海外向けSNS運用を他業務と兼用で担当している場合などは、「とりあえず、投稿さえしておけばOK」としている企業も実際多く見受けられます。

しかし、分析を実施していないと、戦略の何が機能していて、何が機能していないか把握することができません。さらに、普段からデータを見る癖がないと、「パフォーマンスが急低下した!」など不測の事態が発生した場合、原因の特定も困難になる可能性もあります。実際に運用して蓄積されたデータを目標と照らし合わせ、戦略がどのように機能したかを評価しましょう。

データを正確に把握することは、以下の視点で「事象」を捉えることができるようになります。

  • 何が起こったのか(過去の原因究明)
  • 何が起こっているかを理解する(現状の把握)
  • 何がおこるかを予測する(未来の予測)
  • 注力ポイントの最大化
  • 予算の合理化

指標を理解することは、ビジネス目標の達成状況や実施している施策を正確に捉えることができ、より良い意思決定を行うために必要不可欠なものと言っても過言ではありません。SNSマーケティングにおける「ビジネス目標」に対する「把握するべき指標」は、こちらの「追跡すべき重要指標」の記事でまとめましたので、ぜひ、参考にしてみてください。

分析といっても自社のデータを分析するだけでなく、「競合」を分析することも大切です。

  • どのような内容のコンテンツを発信しているか
  • SNSの種類
  • 投稿頻度
  • ユーザーの反応

最低限、上記は把握をしておきましょう。競合分析は必ずヒントが隠されています。1度分析を実施しただけでなく、継続的に観察するようにしましょう。

海外向けSNSの運用では、戦略を立てたらそれをテストし、結果を評価して戦略を練り直し、また再びテストして再評価するといった繰り返しが重要です。考え抜いた戦略に慢心することなく、必要に応じて臨機応変に戦略を組み立て直すようにしましょう。

 

まとめ

皆さんはいくつ当てはまりましたか? SNSマーケティングはプラットフォームの特性をしっかりと理解した活用をすることで、ビジネスを大きく発展させるきっかけを作ることができます。「目標設定、戦略、そして最適なコンテンツ」を踏まえてSNSをマーケティングにフル活用しましょう。

先述しましたが、海外向けSNSマーケティングを成功させるためには、担当者が1人で実行するのではなく、人材育成にしっかりと投資したり、適切にエージェンシーを活用するなど、チームとしてSNSを運用する”体制づくり”が必要です。もしSNSを活用した効果的な海外マーケティングをご検討でしたら、ぜひ、私たちにお申し付けください。

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。