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2022年08月15日

「SNS、共有の心理学」
本能的欲求と紐づく5大動機を解説
~人はなぜ、シェアするのか?~

共有の心理学 人はなぜ共有するのか

時間や空間を超えて、人との繋がりを保ち、常に新しい情報を提供してくれるソーシャルメディアは、現代社会に生きる私たちの生活の一部となりました。現在ソーシャルメディアユーザー数は、全世界で46億人を超え2027年には58億人が何らかのソーシャルメディアを利用すると言われています。(July 2022)

情報がとめどなく溢れるソーシャルメディア上では、ユーザーは投稿されるコンテンツをどんどんスクロールし読み飛ばし、あるコンテンツには「いいね!」をつけたり「これは共有したい!」とシェアをします。ネット社会に暮らす私たちは、日々この行動を(無意識的に?!)一日に数時間も繰り返していたりします。

しかし、なぜ、人々はこうまでしてコンテンツを消費し、共有するのでしょうか?なぜ多くの投稿から、たった数時間で何万の「いいね!」や「共有」される投稿が生まれるのでしょうか?そして、SNS上で起きる「コンテンツを共有し、共感が生まれる」現象の裏側には、人間の本能的な何かが関わっているのでしょうか?

今回は、日々当たり前のように目の前で起きる「SNS × 共有」という現象について、人間の心理面から紐解いていきます。

目次

人々が「共有」する5つの動機

Instagramに”映える”ランチ写真、Facebookで幸せそうな結婚報告、Twitter上で社会の関心事へのリツイートなど、SNSでは日々多くの投稿やコンテンツが「共有」され、新しい発見や可能性が生まれています。では、人々はなぜ、SNSで「共有」するのでしょうか?

The New York Times Customer Insight Group(以下、NYT CIG )は、「人々がなぜSNSで共有するのか、そしてそれはどういったことを意味するのか」というテーマで調査を実施しました。この調査の結果、ユーザーがSNSで何かを共有する行為は、類型的な5つの「動機」が存在することがわかりました。

(自分が共有した投稿を思い返しながら、自分がどのような動機で共有したのかを振り返ると、自分の傾向が見えてきます。)

1.「自分がいいと感じるもの、人を喜ぶものを伝えるため」

例えば、自分がウェブ上で発見した「新しいマーケティングトレンド」をSNSで共有する。この共有の背景には「この情報は自分にとって有益で凄くよかった。世の中のマーケターも喜ぶに違いない(だから伝えたい)。」という人間の「”価値あるもの”を他人と共有したい」という深い心理と結びついています。

NYT の調査における実に49%の参加者が「自分が関心がある商品を他人に知らせて、行動を促そうと考えることがある」と回答しています。

 

 2.「自分の存在価値を確かめるため」

「私が投稿したSNSコンテンツが『良い情報だ!』と友人たちが思ってさらに共有(拡散)されたときは凄く嬉しい。自分の存在価値を感じる」

調査のなかでこうした回答がありました。自分が投稿した情報が共感を得て、人にさらに共有されると嬉しいのは人間の共通認識です。先程ご紹介した施策の例えでいえば、自分のTweetの「いいね・リツイート数」が一種の”バズ状態”になるとき、投稿者は「あぁ、満たされる(自分の社会的な存在価値を感じる)」状態となり、満足感を得ることができます。

「自分の存在価値を認めてほしい」という、人間の元来持っている「承認欲求」と連動していると言えるでしょう。

 

3.「好きなヒト・モノ・コトを応援するため」

「あの社会的に素晴らしい取り組みをしている企業の取り組みを共有して、社会が少しでもよりよくなるといいな。応援したい」

自分が好きなブランド・商品・有名人のSNS投稿を自分も共有することはありませんか?

SNSは自分が信じたり、好きなヒト・モノ・コトを支持しサポートしたいときに絶大な効果をもちます。NYTの調査でも84%の人々が「自分の関心事が議論されているときに、支持を表明する手段として共有を行う」と回答しています。

 

4.「他者との関係を育む・維持継続させるため」

これは少し意外に思われるかもしれませんが、人は「友人や知人との関係性を育み、維持するために」SNSで情報を共有します。調査の実に78%の人々が「SNSでコンテンツを共有することで、他の方法では連絡を取ることができない人との繋がりを維持することができる」と回答しました。

皆さんの中にも学生時代の友達とFacebookだけで繋がっている、なんてことあったりしませんか? 実は、「この関係を維持しようとするモチベーション」がSNSにおける共有の強い動機の一つになっています。

ソーシャルメディア上で情報を共有することは、新たな繋がりを生み出し、既にある繋がりを維持・育むことに役立ちます。また、共有することで、自分と同じ興味関心を持つ人達と一緒に成長し、仲間意識を持つことができ、人間関係や社会との繋がりを感じることが出来るのです。

 

5.「自分の意見・姿勢・ポジションを明確にするため」

SNS上で議論されるトピックに対して投稿を通じて自分の意見や姿勢を述べることは、自分と他者の境界線を明確にさせることができます。逆のケースでは「意見が同じ」という人とは境界線の内側に一緒にいる、という自他認識もできるのです。NYT調査の68%の参加者が「自分が何者で、何に感心があるのかをより理解してもらうために共有をしている」と回答しています。

 

このように、ソーシャルメディアにおける「共有」は、人の社会的・本能的性質に深く根付いていることが分かります。今まで可視化されていなかった「人間の欲求」を「いいね」や「シェア」によって、見事に可視化させたソーシャルメディアは、世界中の多くの企業が「人の心を動かし、行動を起こさせること」を目的とするマーケティングにおいて様々な方法・形で活用されています。

 

「動機」に基づくソーシャルメディア戦略、成功ヒント

企業がSNSマーケティングを実施する目的の1つとして、SNS上での「ユーザーエンゲージメントを高めて自社の商品やサービスの認知度を高めること」がありますが、それだけではありません。SNSマーケティングの効果をより高め、多くのユーザーに「共有」してもらうためには、企業⇔ユーザーとの繋がりだけでなく、自社のSNSコンテンツをきっかけにして「ユーザー同士で繋がりたい・会話をしたい」という動機をつくっていく必要があります

つまり「発信⇔受信」という一本のラインと考えるだけでなく、発信者から得た情報から「発信者 → 受信者 ⇔ 受信者 ⇔・・・」という関係性における「・・・」部分が表す放射状のモメンタム(勢い)をつくることが、「共有」を生み出すために非常に重要なポイントとなります。前段で挙がった5つの動機別に効果的な手法を見ていきましょう。

point1. 自分がいいと感じるもの、人を喜ぶものを伝えるため

この動機を満たすためには、ストーリーテリングが効果的です。ユーザーのサクセスストーリーや体験や課題を解決する方法などをコンテンツに反映させましょう。共有を促すために、共有行動を促す具体的なフレーズのCTAを採用し、ユーザーの共有を促します。


<Wix @Facebook「頻繁なUpdateが必要なWordPressを皮肉った動画」- 「またWordPressがおかしくなった?もっといいものがありますよ」と、Wordpress利用者の悩みにダイレクトに訴えかけるユーモア溢れる訴求動画です。ペルソナやビジネスの優位性が明確化されており、問題を抱えるユーザーにド直球に刺さる素晴らしいコンテンツです。>

 

point2. 自分の存在価値を確かめるため

自分が共有した有益な情報にコメントやフィードバックを受け取ると、誰であっても満たされた気持ちになり、情報を共有するモチベーションとなります。この動機を満たすためには、ユーザーが「有益だ、共有したい」と感じる情報を提供する必要があります。

企業はブログ記事・インフォグラフィック・動画・統計データなどの情報発信を行う場合、常に「価値を提供する」という視点を忘れないようにしましょう。ユーザーを教育・啓蒙するコンテンツ、楽しめるコンテンツ、問題を解決に導くコンテンツ、インスピレーションを与えるコンテンツなどを様々なコンテンツ組込みこんでみましょう。

 

point3. 好きなヒト・モノ・コトを応援するため

ユーザーが好きなヒト・モノ・コトを応援するために共有するときは、「他の人も豊かにしたい、楽しませたい、この情報を共有することで価値を与えることが出来る」という動機に紐づき共有をします。

このような動機から共有を生み出すためには、ユーザーが時間を費やすに値する有益な情報である必要があります。高いエンターテイメント性のある動画やインフォグラフィックを活用したり、問題を解決するために役立つ情報であったり、インスピレーションを与える情報を提供しましょう。

<New York Times-Ed Sheeranの楽曲制作の舞台裏@Facebook-当時最も人気の楽曲であったEd Sheeranの楽曲制作の舞台裏を提供することで、ユーザーの「好き・他の人も楽しんでほしい」を刺激して共有を生み出した素晴らしい投稿です。>

 

point4. 他者との関係を育む・維持継続させるため

人々は人間関係や社会との繋がりを感じたいと強く望む生き物です。この欲求を満たすためには、ソーシャルメディアをかつようした「オンラインコミュニティの構築」が効果的です。また、ブランドのハッシュタグなどを戦略的に活用することも効果的です。

コミュニティの育成には時間と労力がかかりますが、優れたコミュニティの構築は売上の増加だけでなく、ブランドの評価を高め、ロイヤリティの高いユーザーを継続的に育成します。同時にユーザーとの強い繋がりを実現し、長期的なブランド認知を向上させることができる最良の方法の1つとなります。

 

point5. 自分の意見・姿勢・ポジションを明確にするため

具体的な例でいえば、Appleやテスラなど。このようなブランドや製品の最新情報を共有することで「ハイテク・洗練された・最新の」というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか?自社の製品やブランドはもちろんのこと、ソーシャルメディアで発信するコンテンツは誰にどんな価値を提供しているかを明確にする必要があります。

人々は、自分がこの世の中でどのような存在であるかをより明確にするために「共有」を行います。ここを満たすためにユーザーの興味や関心事に焦点を絞ったコンテンツやポジションを明確に提示できるようなコンテンツを提供しましょう。


<LinkedIn@Facebook「黒人女性の就業機会に関する議論」- LinkedInの他ソーシャルメディアの活用方法は目を見張るものがあります。社会問題である”黒人女性の雇用”と、LinkedInのビジネスの軸である”就業”という議題を“Facebook”上で提示し、共有する人のポジションを明確に提示することができる秀逸なコンテンツです。>

 

世界中で話題となるSNSコンテンツは、その時々の「ユーザーの興味・関心をはじめとする広範な心理」に寄り添い、人々の感情や欲求を巧みに刺激することで、多くの「共有・ユーザー同士の議論」を生み出しています。このような「共有されるSNSコンテンツ」を作成しマーケティングの効果を高めるためには、「ユーザーがSNSで共有する5つの動機」を念頭に置きながら、その時々のユーザー興味関心ごとに響くことを徹底しましょう。

 

さいごに

「そもそも、人はなぜSNSで共有するのか」という根本的な疑問から始めることで、御社のSNSマーケティングは表層的ではない一貫したマーケティング戦略になるのではないでしょうか?今回ご紹介した「5つの動機」を考慮して、自社ならではのSNSマーケティングを実施しましょう。

日本だけではなく、海外のユーザーやステークホルダーをターゲットにする場合は注意が必要です。 SNSコンテンツ内容だけでなく、ターゲット国で最適なSNS媒体は大きく異なってきます。グローバルにSNSを活用したマーケティング施策をご検討でしたら、ぜひ、インフォキュービック・ジャパンにお声掛けください!

ホワイトペーパー_海外SNSマーケティング入門

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。