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2021年10月26日

「5Gが変えるデジタルマーケティングの未来」
~XR・デジタル動画・モバイルeコマース~

5Gのが変えるマーケティングの世界 (1)

日本政府は「成長戦略実行計画」においてデジタル空間とフィジカル(肉体)の融合を目指す「Society 5.0」の実現を掲げています。そして、その実現に欠かせない技術が次世代移動通信技術の「5G」です。

とは言っても、

「5Gって動画のダウンロードが速くなるんでしょ?」
「VR・ARが普及するんでしょ?」
「5Gという単語はよく聞くけど、実際なにがどう変わるの?」

と、実感のない方も多いのではないでしょうか? 日本においては、まだまだ5G技術は企業活動の基盤技術に用いられているのが主であり、日常生活のなかで私たちが実感することは少ないかもしれません。しかし、たとえば米国では、すでに2億人以上に5Gサービスが提供されており、近い将来全ての人々に5G技術は提供される計画にあります。また、欧州・韓国・中国・豪州など世界の主要国家の多くでも、すでに民間に向けた5Gサービスが開始され「社会全体のデジタル化」に向けて各国は動き始めています。(出典:5Gをめぐる各国の動向-総務省

では、実際に5Gはどのようなもので、私たちの生活をどう変化させるのでしょうか? そして、マーケティングの未来に5Gはどういった影響を与えるのでしょうか?

今回は「5G技術が変革するマーケティングの未来」を解説していきます。

 

携帯電話の進化「1Gの登場から5G」

携帯電話の進化

1980年代に登場した第1世代(1G)は、初代携帯電話。といっても初期は車載用として製造されており、総重量は7キロ。アナログ方式で通信を行っていました。その後、持ち運びが可能なショルダーフォンなどが登場しましたが、巨大で、重くて、高額なものでした。

1990年代に登場したのが第2世代(2G)です。デジタル方式で通信を行い、データ通信が利用できるようになりました。音声だけでなく文字の送受信が行えるようになり、メールやインターネットが利用できるようになりました。

2000年代になって普及したのが第3世代(3G)です。2Gと比較すると圧倒的に高速・大容量のデータ通信が可能となりました。そのためインターネットへのアクセスが容易になりました。また、「ゲーム」や「音楽再生」が可能になるなど、携帯端末でさまざまなコンテンツを利用することが可能になりました。また、携帯端末で画像を撮影してメールに添付できる機能が実装されたのがこの頃です。

2010年代になって普及したのが第4世代(4G )です。国内ではLTE方式を採用したサービスが開始され、その後さらに高速化したものが、現在(2021年)私たちが使用している第4世代通信システムです。このころに誕生したのがスマートフォンです。無線技術が4Gになってからは、大容量のコンテンツの消費もストレスなく行えるようになったほか、GoogleMapやFacebookやInstagramなどのSNSなどが誕生しました。Uberなどのアプリが効率的に使用することが可能になりました。

そして、2020年3月から商用サービスが開始されたのが、第5世代(5G)です。5Gの特徴としては「超高速通信・超低遅延・多数同時接続」の3つが挙げられます。5G の技術目標は「4Gの30~60ミリ秒の遅延を4ミリ秒へ短縮すること」。これは、人間の目がものを捉えて脳が反応するまでの時間を超えています。この速度での通信が可能となれば、人間とモノのリアルタイムコミュニケーションまでも効果的に実現することが可能にするのです。

 

5Gがデジタルマーケティングに起こす変化

5Gのが変えるマーケティングの世界

では、実際に5G はどのような変化を(デジタル)マーケティングにもたらすのでしょうか?

check 動画活用の急増

4Gが普及して以来、モバイルでの動画広告が劇的に増加しています。以前は、動画は通信データ量が多いため、技術的に普及するまでに時間がかかりました。

しかし、5Gによって動画広告の可能性は全く新しいレベルになると言われています。低速・遅延が解消されることにより、テキストベースのコンテンツより遥かに情報量の多い動画コンテンツの消費量はさらに増加します。また、動画データの読み込み時間短縮により、広告配信には高解像度(HD)動画をモバイルマーケティングに統合することができるようになることで、ユーザーは気軽に高精細な動画をモバイルで視聴することができるようになります。

アメリカにおけるモバイル動画広告はこれまでも毎年成長市場ではありましたが、今後5年で3倍以上、2028年には今よりも5倍以上に成長すると予測される巨大市場です。

check パーソナライズされた広告配信

情報があふれる現代においてユーザーはダイレクトに広告と思われるものを拒絶するようになりました。世界のアドブロックユーザーは年々増加する一方で、世界中のマーケターはどうにかユーザーを惹きつけるために試行錯誤を繰り返してきました。

しかし、5Gによって「リアルタイムでの情報収集、行動・感情分析」などが行えるようになれば「誰が見ていて、どう感じているか、どう反応するか」に応じて、異なるデバイス上でリアルタイムでユーザーに最適な広告を提案することが可能になります。

また、個人のデバイスだけでなく、公共の場や店舗のスクリーンなども目の前の人に応じて反応し、そのユーザーに対して最適な表示を行うことができるようになります。買い物客が店内のどの位置にいて、カートに何が入っていて、他に何が必要かを予測して広告やクーポンの発行を行う。なんてことも可能になります。

check インタラクティブ広告の拡大

インタラクティブ広告とは、従来の「見る広告」ではなく、「触れることのできる広告」であり、クリックすることで実際のアプリや商品を体験できるなど、ユーザーが何らかのアクションを起こすことで、より深く理解してもらうことのできる広告として、世界中で注目されています。

しかし、これまでデジタルチャネルにインタラクティブな広告を配信すると、動的な機能がデータを大量に消費→遅延が発生→離脱に繋がってしまったり、視聴する環境によって正しく表示されない場合などがありました。

大量のデータ処理や応答の遅延が大幅に改善される5Gでは、この点が問題にならず、インタラクティブでありユーザーにパーソナライズされた広告や動画の配信が可能になります。

check モバイルeコマースの加速

Strategy Analyticsの調査によると現在、世界で約40億人が「スマートフォン」を利用しています。今後、衛星コンストレーションを用いた新しい形でのインターネット接続の提供や低価格化が進むことで、2030年にはスマホユーザーが10億人増加し50億人に達すると予測されています。スマホを通したモバイルショッピング市場は今後もますます成長する見込みです。


<Strategy Analytics>

2021年の世界におけるモバイルコマース経由の売上は3.56兆ドルに達すると予測されており、そのうちモバイル経由の購買はeコマース売上全体の72.9%を占めています。

この大きく成長するモバイルコマース市場において5Gが実装されると、通信の遅延が解消され、「コンテンツを読み込まない・動画が正しく再生されない」といったエラーから発生するユーザーの離脱は解消され、リアルタイムの顧客行動の分析や顧客に合わせた対応の自動化など、より消費者のニーズに寄り添った顧客体験を提供できるようになります。

check VR・ARの企業利用の増加

モバイルコマースの増加に加えて、5Gによって急成長すると見込まれているのがVR・ARの分野です。2016年IKEAのeコマースサイトでVR技術を利用したショッピングキャンペーンを提供しましたが、インターネットの速度などの影響によりたびたびバッファリングやタイムラグが発生する事態となりました。しかし、5GはVR・AR体験をよりスムーズに、「没入感のある拡張現実や仮想空間」を提供することが可能になることにより、多くの企業が活用に乗り出すと見込まれています。

また、ARやVRが浸透していくと、遠隔操作を行うドローンやロボットなどへの接続や、XR(クロスリアリティ:仮想空間と現実世界を違和感なく融合する技術)によって現実と仮想世界の境界線がわからなくなる技術などへ進化していくと見られています。こうなってくると我が国、日本が目指す「Society 5.0」の世界である「我が国が目指す未来社会、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって開かれるこの社会」がグッと現実味を増してきますね。

2019年には約400億ドル程度の市場規模でしたが、ゴールドマン・サックスは2025年までに800億ドルに市場規模が拡大すると見積もるなど、AR・VR市場は今後も目が離せない市場の1つになっています。

 

まとめ

3Gの登場によって音楽が携帯端末で楽しめるようになりました。4Gの登場によってGoogleMapやSNS、モバイルアプリが誕生。さらには、Uberなどの画期的なサービスが現れ、人々の行動を劇的に変えました。5Gの普及は、未来の日常生活からビジネスまで劇的な変化をもたらすことでしょう。2024年までに5Gネットワークは全世界の約40%を網羅する予定です。

既に世界各国は「6G」を視野に入れて動き始めています。間もなく到来する5Gの世界は、1種の通過点でしかありません。好むも好まざるも、私たちが「インターネット」をごく自然に受け入れた”あの時”のように、あっという間に生活に浸透してくるでしょう。

そんな、「動画を用いた海外ブランディング」など、5G時代に最適なデジタルマーケティングをご検討中ではございませんか? 日本企業と海外市場を繋ぐグローバルデジタルマーケティングに関してお困りでしたら、ぜひお声掛けください!

海外WEBマーケティングバナー

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。