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2021年09月17日

コミュニティマーケティングとは?
~「コミュニティ構築」7つのステップ「始め方」~

ユーザーとの繋がりを強化する! 「コミュニティマーケティング」とは?ーKV

あなたはモノを購入するときに、どのような基準で商品を選びますか?

近年、人々の「消費」に対する欲求が変化しています。ただ単純に「優れた商品やサービスを手に入れたい」というだけではなく、企業やブランドとの「人間的な繋がり」を求め、自らの購買行動が自分の価値観やアイデンティティを基準に考える傾向がますます強まっています。

こうした消費活動に対する変化がみられるようになった近年、企業がこれまで頼りにしてきた「有料広告」や「インフルエンサーによるプロモーション」へのユーザーによる到達率は年々低下してきています。実際、SNS上のインフルエンサ―への信頼度も低下傾向にあり、SNS上でインフルエンサーを信頼している人はわずか4%(!)。そして、世界で広告ブロッカーを使用している人も増加傾向にあり、現在では7億6350万人以上が企業が発信する広告をブロックするほどです。

つまり、ブランドがユーザーを惹きつけるための選択肢は減少傾向にあり、情報があふれる現代社会において、マーケティングを成功させるには「情報を発信すればよい」「広告を打てば良い」という従来の方法は通用しなくなっているのです。このような流れの中で、近年注目を集めているマーケティング手法が「コミュニティマーケティング」です。

今回は、「コミュニティマーケティングの基本」から、実際に企業が構築しているコミュニティマーケティングの実例を見ながら「コミュニティ構築の7つのステップ」をご紹介します。

 

「コミュニティ」の定義とは?

まず、コミュニティマーケティングをご紹介する前に、コミュニティとは何かを理解すること必要があります。コミュニティとは、人々が同じ価値観や興味・関心事を共有し繋がりや帰属意識を感じる空間、と定義することできます。「同じ趣味で繋がる同人サークル」「部活」「社会人サッカークラブ」など、世の中には様々な形のコミュニティがありますね。

 

「コミュニティマーケティング」とは?

ユーザーとの繋がりを強化する! 「コミュニティマーケティング」とは?

そのうえで「コミュニティマーケティング」とは、企業やブランドが同じような興味・関心・価値観を持つ人々を集めコミュニティを構築し、交流を促しながら、コミュニティに参加しているメンバーを通じた情報発信によって商品・サービスを広めていく手法です。コミュニティに参加しているメンバーに対して、商品を宣伝・販売するのではなく、コミュニティに参加しているメンバー同士の情報交換・交流を通じて商品を宣伝・販売に繋げる手法です。

コミュニティマーケティングでは、既存ユーザーの声に耳を傾け、その「ニーズ(Needs)」や「ウォンツ(Wants)」を満たすことに軸足を置き、顧客との長期的な繋がりを保つことを目的とし運用します。

コミュニティマーケティングは、ブランドと顧客との間にインタラクティブな関係を育むのに最適な方法であり、満足したユーザーがブランドの最大の支持者となり「レビュー」「体験談」「クチコミ」など、コミュニティに所属するメンバー自らが情報発信者となって、商品やサービスの魅力をメンバーに伝播していきます。

冒頭でお伝えしたように、従来のOne Way型のマーケティング手法が限界に近づいてきたことに加え、Facebook・Instagram・LinkedinといったSNSの爆発的な普及によって個人の発信力が大きな影響力を持つようになったことで、「コミュニティベースのマーケティング戦略」が今まで以上に重要な意味・役割を持つようになりました。

 

コミュニティを求める心理とは?

では、なぜ「コミュニティ」は強力なパワーを持っているのでしょうか? もしくは、現代において「人々がコミュニティに参加すること」を求めるようになったのはなぜでしょうか?

カリフォルニア大の教授でありSocial :  Why Our Brains Are Wired to Connectの著者である神経科学マシュー・リーバーマン博士によれば、人間の脳は「権力・お金・生命」といった外在的な対象を得ることよりも、「人との有意義な繋がり」を通じて「幸福」を感じることができると述べています。

また、人間の脳は「身体的な痛み」を感じる神経回路と、「拒絶される・失う・愛されていない・孤独・所属していない」などの「社会的な脅威」を感じる神経回路が重なりあっています。そのため、人々は孤独した状態が続くと脳が劣化します。また、「慢性的な社会的孤独感」は記憶と学習をつかさどる脳の一部である海馬を委縮させる可能性があるほど人間に影響を及ぼすそうです。

このように、人間は社会的的な繋がりが「断絶」されることに苦痛を感じるとともに、コミュニティを通じた「繋がりを求める欲求」が生まれながらにして存在しており、私たちの幸せには必要不可欠なものだといえます。

 

ブランドを育てる奇跡の空間「コミュニティ」を構築する7つのステップ

ユーザーとの繋がりを強化する! 「コミュニティマーケティング」とは?

コミュニティマーケティングで成功をおさめるためには、取りも直さずまずは「オンラインコミュニティを構築し、成長させること」が必要です。そして、オンラインコミュニティを成長させるためにはいくつか押さえておきたいポイントがあります。

pointing-finger 1.目標を設定する

どんなマーケティング戦略であっても、まず最初に何を達成したいのか明確にしておく必要があります。それはオンラインコミュニティにおいても同様であり、非常に重要なポイントでもあります。

コミュニティを運用することで、「会社として何をする必要があるのか」を明確にしましょう。

  • ユーザーと強固な繋がりを構築すること?
  • コミュニティの認知度を高めること?
  • ユーザーからのフィードバックを集めること?
  • 顧客満足度のレビューを集めること?
  • 売上を上げること?

pointing-finger 2.ユーザーを知る

まず、コミュニティに参加するユーザーが誰であり、このブランドにどのような関心を持っているのかを精査する必要があります。また、コミュニティは商品の宣伝・販売の場所ではなく、メンバーの「ニーズ(必要性)」や「ウォンツ(したいこと)」を満たせる場所であり、同じような興味・関心を持つ人々が繋がることができる場所である必要があります。

pointing-finger 3.プラットフォームを選ぶ

オンラインコミュニティを構築する場合、自社にとって最適なプラットフォームを選択しましょう。

世界中の多くの人が利用しているFacebookかもしれませんし、B2Bユーザーの多く集まるLinkedInという可能性もあります。また、自社ブランドのコミュニティサイトを独自に作成するのも良いでしょう。大切なことは、参加するユーザーがストレスなく情報交換や交流ができることが大切です。

pointing-finger 4.コミュニティガイドラインを作成する

コミュニティを運営するにあたり、明確なガイドラインを設定しましょう。コミュニティの運営をある程度ユーザーに任せることが信頼関係構築における重要なポイントであり、また自律的な情報発信サイクルを生むために大切なポイントですが、一方でコミュニティ内部で誰もが好き勝手しては秩序は保つことが困難になります。

「コミュニティを誰もが楽しめるガイドライン」を作成することは長期的なコミュニティ運用には必要不可欠です。

pointing-finger 5.新規ユーザーをコミュニティに招待する

コミュニティガイドラインが固まったら、コミュニティを立ち上げましょう! そして、コミュニティに参加してもらうために、コミュニティの存在をユーザーたちに知らせ、参加を促しましょう。

「SNSでの告知」「紹介プログラムの作成」「ウェブサイトでの告知」など、コミュニティに最適なメンバーを集め理想的なコミュニティの構築・拡大をめざします。ただし、むやみやたらに人を集めてもアクティブなメンバーがいなければ、継続的なコミュニティの構築は難しいでしょう。

コミュニティの活性が高く、内部では人を惹きつける・興味深いコンテンツがどんどんと生まれ共有されるコミュニティが理想的です。

pointing-finger 6.参加ユーザーに関心を持ち続けてもらう

コミュニティを構築する最大の理由は「エンゲージメント(商品・サービスへの関心・興味・愛着)を高めること」にあります。そのためにコミュニティメンバーには、コンテンツに対して継続的に関心を持ち続けてもらう必要があります。

価値のあるコンテンツを提供したり、刺激的な質問を投げかけたり、思わずシェアしたくなるような物語を共有したり。エンゲージメントを高める起爆剤となるコンテンツを定期的に創造・投稿することでメンバーのモチベーションを高めましょう。メンバーのニーズを深く理解し、それに応える形でコミュニケーションを取ることにより、より強固な信頼関係を構築することができるでしょう。

pointing-finger 7.コミュニティリーダー(Adovocate)になるメンバーを特定する

コミュニティの活動がある程度活発になってきたら「ブランドを心から愛してくれる人、最もコミュニティを盛り上げてくれる人物」を特定します。

実は、オンラインコミュニティでは多くの人が「傍観者」になります。傍観者、つまり自発的にコンテンツを発信するのではなくコミュニティ内部で共有されるコンテンツを受動的に楽しみ学ぶユーザーです。しかし、そうした傍観者のなかに、継続的にコメントを発信したり、他のユーザーに有益な情報を情熱的に発信するなど、一風変わった(?)ユーザーが生まれます。それが、「コミュニティリーダー、支持者(Adovocate)」です。コミュニティ内でのリーダーを特定し、彼らに報酬を与えます。報酬といっても現金を渡すわけではなく「特別なクーポン」や「無料トライアル」など、コミュニティの活性化に貢献した人がコミュニティ内で評価される仕組みを作るのです。

そうすることで、コミュニティのメンバーは感謝され必要とされていると感じるため、報酬は継続的なブランドロイヤルティを強固なものにしてくれるでしょう。

 

成功しているコミュニティマーケティング事例

では、実際に成功している「コミュニティマーケティング」とはどのようなものか見ていきましょう。

dot Salesforce(セールスフォース)

CRMにも取り組むマーケターの皆さんであればご存知の方も多いと思いますが、セールスフォースは「Trailblazer Community」というオンラインコミュニティを運用しています。トレイルブレイザーコミュニティは、セールスフォースを利用するユーザーの人材育成を支援するために立ち上げられ、現在では世界中で200万人以上が利用する巨大コミュニティです。

コミュニティ内では専門用語ではなく平易な言葉で表現され、ユーザーが自ら学び、友人を作り、楽しみながら課題を解決し合える環境が構築されています。コミュニティのなかでSalesforceを使い始めた初心者、使いこなす上級者、そしてSalesforce社のスタッフなど、Salesforceというツールを「いかに最大限活用するか」という点をめぐって日夜議論がされています。その交流のなかでツールに対する知識も深まるとともに、ユーザー同士で共有するナレッジ(ツール知識)が蓄積されていくという好循環が生み出されています。

 

dot LEGO(レゴ)

2014年からレゴが運営する「Lego Ideas」というオンラインコミュニティは、コミュニティメンバーが新製品で創作した作品アイデアを共有したり、作品などを発表する場を設けています。コミュニティ内部では「投票」や「コメント」といった機能が実装しており、優れたアイデアは実際の製品に反映され販売されるなど、コミュニティ内部を活性化させる報酬制度が用意されることによりメンバー同士の積極的な交流につながっています。

 

dot Kiehl’s(キールズ)

1851年に調剤薬局として創業し、世界39カ国でスキンケア・ヘアケア製品を販売をおこなっているKiehl’s(キールズ) は、コミュニティマーケティングによって成長してきたブランドの1つです。キールズは顧客や地域との繋がりを大切にする精神を創業当時から継承しており「利益だけでなく、地域・コミュニティにも還元する」ことをステークホルダーと約束し、オンラインを含めた様々なコミュニティ活動を行っています。

マーケティング戦略においても広告宣伝費に一切投資せず、その代わりに「キールズと親和性の高いインフルエンサーを活用した口コミによるプロモーション」「世界中の全従業員による積極的なコミュニティへの参加」「キールズファミリープログラム」などによって特別なオファーや製品の無料試用を受け取ることができるなど、メンバーが自ら情報発信したくなるようなコミュニティの構築を実現しています。

 

さいごに

優れたコミュニティの構築は売上の増加だけでなく、ブランドの評価を高め、ロイヤリティの高いユーザーを継続的に育成します。同時にユーザーとの強い繋がりを実現し、長期的なブランド認知を向上させることができる最良の方法の1つと言えるでしょう。

インターネット上に情報があふれかえる時代では、一方的なマーケティングだけでは簡単に通用しなくなっています。選んでもらうことが難しい時代ともいえます。そうしたなかで「数ある世界のブランドのなかで選んでもらい、ブランドを愛してもらう」ために必要となるグローバルマーケティングにお困りでしたら、ぜひインフォキュービック・ジャパンにお声掛けください!

海外WEBマーケティングバナー

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。