コロナで加速!?
「マーケター型 燃え尽き症候群(バーンアウト)」
~3つの予防対策~
私たちの生活は大きく変わりました。
世界中の多くの人がコロナウィルスの蔓延防止のために、出社をせずにリモートで仕事をしたり、これまで当たり前だった海外旅行を一切しなくなったりなどライフスタイルが激変。このような中で、医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーは医療の最前線で働きながら多くの方が耐え難い不安に押しつぶされそうになったことは想像に容易いでしょう。
WHO(世界保健機関)は、不安症やうつ病などによる生産性の低下により、2020年に世界経済は1兆ドルの損失が生まれたと推測しました。新型コロナウィルスにより世界中の多くの人が家族・友人・同僚といった「人とのつながり」を喪失し交流機会が減ることで孤独と恐怖に苦められる状況が生じたのです。
実は、私たち「マーケター」という職種も、心身的な不調から生産性の低下をもたらす「燃え尽き症候群」と隣り合わせだという調査結果が出ていることをご存知ですか?
毎日最新の情報・トレンドに触れ、最善の結果を期待され続けるマーケター。ネット情報過多が人間に及ぼす影響は「デジタル・ウェルビーイング」の記事でご紹介しました。今回は、新型コロナウィルスがもたらした新しい世界においてマーケターが直面する「燃え尽き症候群(バーンアウト)の可能性」と「予防のヒント」をご紹介します。
「燃え尽き症候群」とは?
近年「燃え尽き症候群」や「バーンアウト」と言った言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
WHO(世界保健機関)は燃え尽き症候群を、「”燃え尽き症候群はうまく対処されていない慢性的な職場のストレスに起因する、概念化された症候群である。」と定義付けています。また、燃え尽き症候群の症状として、以下の3点を挙げています。
- エネルギーの枯渇や疲労感
- 仕事に対する否定的な感情の増加
- プロフェッショナルとしてのエフィカシー(自己能力に対する自己評価)の低下
Blindが実施した調査によると、調査した7000名のなかでもっとも燃え尽き症候群を経験した職業は、(なんと!)私たち「マーケター及びコミュニケーション関連」の業務に関わっている人たちでした。
<Blind : The Evolution of the Burnout>
これは驚くべき数値であり、エンジニアや営業担当、財務などの専門職を上回っているのです。
では、なぜマーケターはこんなに「燃え尽きる」のでしょうか?
マーケターが「燃え尽きる」原因とは?
燃え尽き症候群・バーンアウトの原因は一律ではなく、その個人によっても異なります。しかも、どのような仕事でも起こりうる可能性があります。そんな中、なぜマーケターは燃え尽き症候群を経験するのでしょうか?
主な原因に、マーケターを巡る次のような特性が挙げられます。
高い期待と「常に、On」
高い期待を常に求められるのがマーケターです。いくつものプラットフォーム上で最大の結果を得る必要があるとともに、常に創造的で、新しいことを考え出すことが期待されます。周囲の期待に応えるためにも「手を動かし続ける」必要がついてまわり、プライベートであっても「オン」である必要があること、皆さんも身に覚えはありませんか? 様々な業種のなかでも、この「常に、On」という観点から考えると仕事への高いプレッシャーに晒されている職種といえるかもしれません。
進化し続けるテクノロジー
次から次へ生み出される新しいアプリ、ソーシャルメディア、分析ツール、プラットフォーム。マーケターはそうした最新のテクノロジーに自分の知識やノウハウを最新の状態にアップデートしておく必要があります。
マーケターは平均して「13個のソフト(もしくはアプリ)」を活用していると言われています。これは他の職種の人々が利用するアプリの平均数10個を上回っています。雨後の筍のように、世界中で毎日テクノロジーが生まれる現代において、私たちマーケターは常に最新のテクノロジーにアンテナを立てることが必要です。
不明確な幅広い業務領域
マーケティング担当者の業務は「ウェブサイト運営、デジタル広告運用、メールマーケティング、SNSの運用、ブログの執筆、動画作成、ウェビナー、コピーライティング、グラフィック、データの定点分析、CRM利活用、24時間体制のお問い合わせ対応」など、360度型のあらゆる要素を含んでいます。この点は、上記のテクノロジーの進化に伴ってビジネスにおけるマーケティングが果たすべき機能が日々拡張していることとも関連しています。
「これもマーケティング。あれもマーケティング。あ、こっちも…」と全方位型に構えることで、いつしか自転車操業状態になっている、なんてこと皆さんも体験していませんか?
コンテンツの創造苦
どんな企業も「自社の製品やサービス」を魅力的にアピールし、テクニックを駆使して、人々の注目を集めたいと考えます。
そのなかでマーケターは、ユーザーに「驚き、感動、発見」をもたらしたいといつも思っています。ユーザーが魅力的だと思う(デジタル)コンテンツを常に生み出したいと考え、そして生み出す必要があります。キャンペーン、ブログ記事、SNSポスト、ウェビナー企画… 既成概念にとらわれない発想を泉のように生み出し、施策として具現化し、ユーザーに届ける。「創る」ことはいつも大変ですよね。(はい、私も大変です。汗)
PDCAじゃない、DDDD!
インターネット上に情報があふれる現代においてマーケターに求められるのは、一貫して「魅力的なコンテンツで人の心を動かし、自社ブランドを選んでもらうこと」です。
「ブログ・動画・広告バナー」などの制作物をいくつか作成するのはさほど大変ではありません。しかし、一度動き出してしまった施策はそう簡単に止めることはできません。競合ひしめくマーケットの中から自社を選んでもらうためには、特にコンテンツの「作成頻度」は重要になってきます。効果を継続的に出し続けるためにも、コンテンツ制作や広告運用を継続しなければならないのです。「マーケティング戦略の基本はPDCAである。」といいながらも、実態は「DDDD(Do! Do! Do! Do!)」だったりしませんか?
そして、これがマーケターを悩まさせるポイントの1つでもありますが、コンテンツ量をむやみに増やしたからといって効果(売上・CV)に直結するとは限らないのです。活動量を担保しながら、ユーザーの心に訴えかけるコンテンツを作成し続けることが肝要です。
「マーケター型 燃え尽き症候群」を回避するためのヒント
ここまで見てきたように、ビジネスの最前線で常に躍動するマーケターの皆さんが燃え尽き症候群に陥ることを避けるためにはどのような対策がありうるのでしょうか?
1.「境界線」と「期待値」を設定する
マーケターは最新・最善を求められる職種ともいえます。しかし、常に「オン」である必要はありません。しっかりと「労働時間」を定めてワークライフバランスを重要視しましょう。
さらに、マーケターは業務内容からリモートワークが可能な職種であることから、ついついリモートワークで仕事をし過ぎてしまうことがありますが、そういうときは「仕事と生活の境界線」を定め、同僚や上司にもそのことを伝えましょう。
2.「優先順位」をつけて、賢く働く
「働きすぎ、長時間労働」は、燃え尽き症候群への入り口です。当たり前に聞こえるかもしれませんが、1日のうち余分な時間を費やす代わりに、少しでも効率的に働ける方法を検討しましょう。1日のスケジュールを事前に決め、時間を予め配分しておくことも効果的です。前もって1日の業務すべての時間をスケジュールに入れてしまうタイムブロッキングという方法も、効果的な生産性向上の手法です。また、自動化・効率化ツールを取り入れることで定型業務を省力化することも、中長期的に効果が出てきます。
3.「警告サイン」を認識しておく
燃え尽き症候群の兆候を認識しておくことで、何か症状があった場合によりよい対策を講じることができます。予防ですね。世界的に新型コロナウィルスが流行したことで、ライフスタイルや価値観は大きく変化しました。大きな生活環境の変化のなかで、負のスパイラルに入る前に以下のような「身体が発する警告サイン」が現れていないか確認しましょう。
- 孤独感が増していますか?
- 睡眠習慣に変化はありましたか?
- 仕事に対してモチベーションが低下していますか?
- 仕事から得られる満足感はありますか?
- 画面を見るたびに疲れ果てていませんか?
- 息が苦しくなることはありませんか?
こうした「警告サイン」を少しでも感じたら、何かアクションを起こしてみましょう。
憂鬱なニュースやソーシャルメディアの情報を遮断し、絶え間なく続くスクロールを止めてみましょう。身体を動かし、休息を取りましょう。深刻な場合は周りの人に助けを求めましょう。
まとめ
いま、ウェルビーイング(幸福度)は全世界の人々にとって重要な関心事です。「最新・最善・最大の結果」を期待される「マーケター」という職種は、他の職種と比べても燃え尽き症候群に直面する機会がもしかしたら多いのかもしれません。限界に達するまえに必要な術を認識しておきましょう。
様々なものが急激に変化していく現代。どんな職業・職種であっても「自分自身のメンタルヘルス管理よりも重要で大切な仕事はない」ということを忘れないようにしましょう。マーケターという職種は日々新しいことが起き、楽しくエキサイティングな職種ですが、「仕事」は私たちの人生を豊かにしれくれる1つのツールでなくてはいけないと思います。
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吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。