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2021年02月19日

不確実時代を乗り越える「海外マーケ戦略、5つのポイント」
~大不況を乗り越えた世界の企業事例~

世界恐慌

2020年から始まった新型コロナウイルスの世界的流行にともない、各国政府はこの感染症を封じ込めるために一部経済活動を停止せざるを得ず、「モノ・ヒト」の流れが寸断されました。これまで当たり前だった市場が崩壊し、人々の生活や価値観までもが変化することとなり、世界経済は短期間で大きなインパクトを受けました。

The World Bank(世界銀行)の発表によると、2020年の世界全体の経済成長は̠マイナス4.3%を記録。20年以上ぶりに「極度の貧困」が増加し、1日1.90ドル以下で生活する人が約1億人も増加したそうですまた、近年はウクライナ問題、原油高騰、世界各地で発生しているインフレーション。日本では記録的な円安(2022年3月28日時点)、物価上昇と景気後退同時進行するスタグフレーションも現実味が帯びてきました。それに加え、今後世界各地で発生すると言われている自然災害やそれに伴う移民増加、政治不安、通貨危機など世界を取り巻く社会情勢は、まさに「不確実な時代」へと突入しました。

今回は、不確実な時代を生き延びるために押さえておきたい海外マーケティング戦略、5つのポイントと、不況時代を生き延びた世界企業のマーケティング事例を併せてご紹介します。

 

多くの困難を乗り越えてきた「日本企業」

皆さんは、世界中の企業の中で「創業200年を超える企業の65%・1340社が日本企業である」ということをご存知でしょうか?

日経BPコンサルティングラボの調査によると、「創業100年以上の企業のうち41%・33076社」もまた日本企業であり、「創業200年・創業100年共に世界で最も多い企業数を誇っている」ことがわかっています。


日経BPコンサルティング・周年事業ラボ調べ>

世界的にみてこの数字は驚異的であり、このデータから“日本企業には多くの困難を乗り越えられる“力や知恵”が存在する”と筆者は感じています。

17世紀半ばから始まった産業革命以降、1914年の第一次世界大戦、1918年スペイン風邪、1929年10月の「暗黒の木曜日」(米ニューヨーク証券取引所の株価大暴落により深刻な長期不況を生んだ世界恐慌)、第二次世界大戦、オイルショック、ITバブル崩壊、リーマンショックから派生した戦後初のマイナス成長など、多くの企業は今日に至るまで様々な困難や経済不況に直面しながらも、その不況を適切に対処しながら乗り越えてきました。

現在の直面している多くの問題は、過去の不況と比較することは出来ませんが、「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」という諺が示すように「過去の困難や不況から学び、やがてやってくる(かもしれない)未来に備えること」はできるはずです。

 

不況時のマーケティング戦略、5つのポイント

不況時にマーケターが大切にすべきポイント

1.マーケティング予算を大幅削減しない

不況のあいだ、企業経営者は「出来るだけ支出を減らしたい」と考えます。企業の中でマーケティングチームは「コストセンター」と呼ばれ、“経費”としてみられる場合が多く、不況に面した際に企業の多くはマーケティング予算をカットする傾向にあります。

不況の影響で利益が減り始めるとき、不要なコストのカットは自然のことです。しかし、マーケティングの本質的なメリットは、短期的ではなく長期的に実現されることが多いという側面を持っていることを忘れてはなりません。

McGraw HillResearch社は、1980年~1985年までの期間で、600企業のマーケティング施策分析を行いました。その結果、1981年から1982年の不況時に広告費を維持または増加した企業の平均は、不況時とその後の3年間の両方で、広告を掲載しなかった又は、減少させたものよりも売上が増加しました。また、1985年までに積極的に広告を出稿した企業の売上高は、広告を掲載しなかった企業よりも256%増加しました。

Marketing recession

Mac Tech Magazine

広告宣伝費・マーケティング予算の削減は、短期的には効果的なリストラ施策に見えるかもしれませんが、長期的なブランディングにとっては致命傷になりかねません。マーケティングは、消費者と企業を結ぶライフラインともいえ、ブランド・商品を人々の頭の中に結びつけます。消費者がブランドを認識し、顧客との信頼構築して維持することは、経済が悪化した場合のリスクを軽減するための最良の方法の1つと言えるでしょう。

マーケティングは顧客との「接点」を生み出します。そして、顧客との「接点」は企業が不況を生き残るための唯一の「道」となります。

 

2.顧客の行動を調査する

厳しい経済状況が訪れると、人々の生活は大きく変化します。贅沢品は控えられ、優先順位が入れ替わります。

外食を自宅での料理に変化させ、価格に敏感になります。お気に入りだった製品はセール価格での購入か代替品を選び、消耗品のは不必要と認識されるのです。また、生活が変化すると、消費者行動が変化。商品やサービスの購入方法も変化します。

消費者行動変化

<Harvard Business Review : Changing Behavior(消費者の行動変化)>

景気が回復すると消費者の購買力は戻りますが、既に大きく変化してしまった「購買パターン」や「価値観」は元には戻りにくいと考えて良いでしょう。(今回のコロナ禍での消費行動の変化でも証明されました)

不況に直面した際に、顧客が「どのように優先順位付けを行い、消費行動をどう変化させ、価値を再定義するのか」を知っているといないでは、売上を含め、企業の存続に大きな影響を与えます。変化する消費行動を理解し、それに応じて戦略を再調整する準備をする必要があります。

 

3.既存顧客に焦点を合わせ、信頼を強化する

不況時に考慮すべき最も重要なユーザー、それは「既存顧客」です。

マーケティング戦略・施策が、自社の長年のファンだった人々にとって有益であるかどうか確認しましょう。サービスに満足を感じている既存顧客は、困難な時期に会社に利益をもたらしてくれるだけでなく、「口コミ」という形で企業の評判を高めてくれるポテンシャルを持っています。

長い長い不況が明けたとき、消費者は「自分が認識しているブランド」の商品を好んで購入する傾向にあることも忘れてはいけません。大切な既存顧客に対して、SNSやメールマーケティングを通じて既存顧客と継続的に接点を持ち、有用な情報を提供するようにしましょう。


Roadside:Detailed statistics about marketing during a recession>

 

4.マーケティング施策を再評価し、抜本的に見直す

上記でも述べたように、不況時は顧客行動が大きく変化します。顧客が「自分にとって本質的なもの」と「そうでないもの」とを峻別し「本質的なもの」だけを購入するようになります。

マーケティング予算を削減する代わりに、これまでのマーケティング戦略を振り返ってみましょう。定量的なデータ分析を用いて、不況下でも売上が減った商品、現状維持の商品、少し売上が上向いた商品などを洗い出し、現状把握に努めます。

Google Analytics、Google Search Console、およびその他のマーケティングプラットフォームが示すデータ・指標を確認して、何を削減し、何に継続投資するかを決定しましょう。限られたマーケティング予算を用いて、不況下でも投資対効果が高い商品にマーケティング施策を集中することが大切です。

また、不況に備えて早急にすべき対策として、SEO、デジタル広告、SNSなどデジタルマーケティングの施策結果データを集約したマーケティングダッシュボードを今のうちから整備し、データを定点観測する癖をつけることも非常に大切です。

マーケティング施策の効果を可視化できる手段を通じて、各マーケティング投資が「どのような利益をもたらしているのか」「事業成長の鍵となるのか」を明らかにしましょう。

 

5.逆転の発想「競合が少ない、勝てるチャンス」

企業は不況時にマーケティング費用を「コスト」と捉え、削減するのが一般的です。この「不況 → マーケティング費用削減」という動きは、競合他社においても同様です。言い換えれば、どの企業もデジタルマーケティングに投資する予算を削減する状況のなかで、効果的なデジタルマーケティングに注力することは、自社のマーケットプレゼンスを高める可能性があるとも言えるのです。また、この逆転の発想を持ったときに、とりわけ費用対効果の高い2つのデジタルマーケティング施策があります。

check SEOマーケティング

SEOは長期的なマーケティング戦略であり、SEO施策と体制マネジメントを継続することができれば、全体的な広告費用を削減しながら大きなリターンを得ることが可能です。現に、「Email、SEO(Organic Search)、Paid Search、SNSの中で一番投資対効果が高いチャネルは?」というマーケター調査で「SEO施策」が一位になるなど、SEOは継続的な投資が必要にはなりますが、不況下で競合他社よりもビジネスを優位に導く可能性を持っています。


<Twitter :どのデジタル施策が一番費用対効果が高いと思いますか?>

check Google広告のマーケティングキャンペーン

PPC(Pay Per Click)型広告、もしくはリスティング広告においては、直接的な利益を生み出さないコストのみを削減することが重要です。これは、リスティング広告をうまく活用できれば「確かに効果が出る広告チャネルに投資を集中させることができる」ことを意味します。

リスティング広告の優れている点は、「誰が、いつ、何を見るか」を細かくターゲティングができるため、自社にとって本当に大切な見込み顧客に絞った配信を行うことができることです。リスティング広告を活用することで、購買意欲のある顧客にターゲットを絞り、顧客のニーズに合わせてキャンペーンを発信することで、売上を生み出すことに繋がります。

不況下のデジタルマーケティングにおいてスマートなデジタル広告費は、限られた予算を最適化しながら、ビジネスの可能性を最大化することに結びつくでしょう。

 

不況時を乗り越えた、海外企業のマーケティング事例

では、具体的に「不況下で成功したマーケティング事例」はどういったものでしょうか?

1920年大恐慌中のKellogg’s(ケロッグ)

1920年代Kellogg’s(ケロッグ)とCWPostはシリアル市場を支配していました。大恐慌が襲ったとき、CWPostはマーケティングを大幅に縮小し合併と買収に焦点を合わせました。Kellogg’sは、世界大恐慌が吹き荒れるなか、新製品開発と広告費を倍にすることで、30%の利益増を達成しました。以降市場では100年以上もトップの座に就いています。

kellogg'sの広告
<ケロッグ社の広告>

1923年当時活動していた200社について調べたRoland S. Vaileによりますと、世界大恐慌時も広告を出し続けていた企業は、売上が大恐慌前よりも20%伸ばすことに成功しました。

 

1973-1975年 TOYOTA(トヨタ)

Toyota advertising

<画像ソース:Flickr>

Toyotaは、エネルギー危機に端を発した不況が続いた1973年から1975年までの17ヶ月間、マーケティングの予算を削ることなく、広告を出し続けました。トヨタはその長期戦略を堅持することにより、1976年までに米国でトップの輸入自動車として、トヨタカローラは、ホンダシビックに次いで2位の売れ行きを示し、フォルクスワーゲンを上回りました。

 

1990-1991年 PizzaHut(ピサハット)・TacoBell(タコベル)

Pizza hut Tacobell logo
< Pizza hut / Taco Bell 1990年代ロゴ >

1990年から1991年にかけて不況が続いたとき、マクドナルドは、マーケティング費用など宣伝費を削減することを決めました。一方Pizza Hutは、マーケティング活動を続けることにしましたが、マクドナルドが28%の減収だったのに対し、Pizza Hutは61%の増収、TacoBellも強力なプロモーションで40%売上が向上しました。

またドレッシングの製造販売を行っているKraftSalad Dressingも広告を増やし、70%の売り上げを伸ばしました。

 

2008年のGROUPON(グルーポン)

GROUPON

2008年の金融危機で消費者行動が大きく変化し、人々は買い物や外食などの娯楽を減らしていきました。共同購入型クーポンサイトという新しいビジネスモデルと、300以上の市場で、商品やサービスの割引を毎日メールで配信するなどのマーケティング戦略により、500億円以上の利益を得ることに成功しました。

 

2008年~2009年のAmazon

2008年と2009年の世界的不況下で注目されたのは、Amazonの躍進でした。Amazonは不況にもかかわらず、売上を28%も伸ばすことに成功しました。

amazon history
Bloomberg:Amazon’s Value>

Amazonは新たな商品開発を続け、不況時に電子書籍リーダーの先駆けとなるKindleを発表。Kindleの販売はリスクを伴うものでしたが、結果的に消費者に受け入れられて会社の売上に大きく貢献しました。

 

さいごに

不況下においては、マーケターは長く困難な戦いを想定して戦略と戦術を調整しながら、目の前の状況に合わせて柔軟かつ迅速に対応できなければなりません。

アメリカの自動車会社フォード・モーターの創始者ヘンリー・フォード氏は次のように述べます。

「Stopping advertising to save money is like stopping your watch to save time.(お金を節約するために広告を停止することは、時間を節約するために時計を停止するようなものです。)

経済状況が改善すれば、ほとんどの消費者はさまざまな消費活動を再開します。マーケティング施策は顧客との接点を保ち、自社ブランドに対する顧客の行動をより進化することにつながります。不況で誰もが苦しいとき。そんなときこそ、会議室でバランスシートとにらめっこするだけではなく、顧客を深く理解し、顧客との関係を改めて構築することが必要不可欠となります。

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

当社の「コンテンツマーケティング(企画・記事執筆)、メールマーケティング」を担当しています。オーストラリアの永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。「愛のあるコンテンツ作成」がモットーの一児の母です。趣味はランニング・ヨガ・料理・読書。