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2025年01月09日

中国越境EC「攻略ガイド」2025
市場動向とビジネスモデル別「メリット・デメリット」

中国越境EC「攻略ガイド」2025br市場動向とビジネスモデル別メリットデメリット

コロナパンデミックを契機にデジタル化が世界的に加速し、中国におけるeコマース市場や越境EC市場も急速に成長を遂げています。

特に注目すべきは、急成長を遂げている中国eコマースアプリ「Temu」の事例です。2024年のスーパーボウルで広告枠を6回分購入し、世界的な話題となりました。(その額は少なくとも2,100万米ドル以上と見積もられています。)この背景には、中国市場の購買力と越境ECの急成長が存在します。

中国市場は、多くの企業にとって新たなビジネスチャンスを提供していますが、成功には、特有の戦略が不可欠です。

本記事では、最新の中国EC市場の特徴や越境EC市場のビジネスモデル別のメリット・デメリット、さらに成功のポイントをご紹介します。中国市場の特性を理解し、効果的にアプローチするための戦略を見ていきましょう。

目次

 

中国EC市場の成長の歴史

ここでは中国EC市場がどのように形成されたのかを見ていきます。

「黎明期」:1990年代の基盤構築

EC市場が形成される初期段階であった1993年、中国政府は「国家経済情報化合同会議」を発足し、経済情報通信ネットワークの建設を政府主導で建設する「Golden Project」を打ち出しました。このプロジェクトは、経済情報ネットワークの連携、クレジットカードネットワークの構築、金融・決済のデジタル化、国際貿易の現金取引排除、ペーパーレス取引への移行、徴税システムのコンピューター化などを目的とするプロジェクトで、中国におけるEC市場に協力な基盤を築くものでした。

1995年には中国電信が中国初の一般向けインターネット接続サービスを開始し、中国最初のビジネス向けインターネット企業「China Yellow Page」が誕生。(このChina Yellow Page の創始者は、アリババの創始者でもあるジャック・マー氏です。)

1997年、中国政府はインターネット環境を国家インフラ構築を重要な目標と位置づけ、公共ネットワーク「CHINANET/中国網 」の開設や、中国商品注文システム(CGOS)や初のオンライン広告が導入されました。1998年には中国初のオンライン取引やBtoCサイトの正式な立ち上げが実現。この時期、eコマース市場の環境整備が急速に進展しました。

「成長期」:2000年代の躍進

2003年ジャック・マー氏率いるアリババグループが「淘宝網(タオバオ)」を立ち上げ、同時期にJD.com(京東)が誕生するなど、中国でeコマース企業が続々と設立しました。この年、中国で発生した SARS ウィルスの影響もあり、人々の生活にオンラインショッピングが急速に浸透。eコマースブームを後押しする結果となりました。

中国の電子商取引は、1990年代の電子データの交換から始まり、1998年の初のオンライン小売取引、淘宝網など大手プラットフォームの出現を経て、政府主導のデジタル化政策によって大きく進化してきました。

「進化期」:現代の最先端技術の活用

2020年のコロナパンデミックにおいても、中国政府は外出禁止を実施する一方で、中国国内の消費を支える方法の一つとして、eコマースのインフラ整備を積極的に支援しました。その結果、オンライン取引を利用したことのなかった層にもeコマースが浸透しました。

近年では、人工知能(AI)やブロックチェーン、フィンテックなどの最先端技術を積極的に活用して、物流の効率化やサプライチェーンの透明性向上が図られています。また、政府主導でプラットフォームの統合が進み、中国のeコマース市場はさらに成長を続けています。

 

中国EC市場の最新動向

世界における中国EC市場シェア

中国は世界最大の電子取引市場として圧倒的な存在感を示しています。

経済産業省が発表した「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書 」によると、2023 年の国別 BtoC-EC 市場規模の推計値は、以下の通りです。

中国:51.3%、米国:19.5%、英国:3.6%、日本: 3.4%、韓国:2.1% と続くきます。

中国の市場規模の大きさは他国を大きく引き離し、 一国で世界のEC市場の半分以上を占めています。さらに米国を加えると上位 2 ヵ国で世界市場の 70%のシェアを獲得しています。このデータは、中国が世界のEC市場における中心的存在であることを示しています。

今後も拡大すると予測されている中国EC市場

中国のEC市場は、2023年においても引き続き拡大を続けています。eMarketerの推計によると、2023年の中国EC市場規模は2兆9,875億米ドルに達し、前年から11.4%増加しました。この成長は、オンラインショッピングの普及やデジタル技術の進化によるものとされています。さらに注目すべきは、今後の予測です。

2027年頃には、中国EC市場規模は 3兆 9,708 億米ドルに達すると想定されています。

EC market size in china2020-2027

このような成長が続く背景には、中国国内の購買力の向上、物流インフラの整備、そしてモバイルコマースの発展が挙げられます。2024年以降の数値は予測値であり、市場動向による変動の可能性も視野に入れる必要がありますが、中国のEC市場は、企業にとって引き続き注目すべき成長分野と言えるでしょう。

 

中国EC市場の成長要因

1.増加するインターネットユーザー

中国は世界最大のインターネットユーザーを誇り、他国と比較して圧倒的な規模を持っています。2024年3月に公表された中国インターネット情報センター(CNNIC)が公表した報告によると、中国のインターネットユーザーは 10億 9,200万人を超え、2022年12月からわずか一年半ほどで2,480万人もインターネットユーザーが増加しました。

ただし、インターネット利用者の70%ほどは都市部に集中しており、農村地域のインターネット利用率は30%程度に留まっています。

2.中国消費者の購買力の向上

中国の中産階級は急速に拡大しており、都市部では中産階級から高所得層へ移行が顕著です。

この経済成長に伴い、消費者は品質の高い海外製品への需要を高めており、越境ECはこれらの高品質な商品を届ける主要なチャネルとなっています。高まる購買力が市場全体を拡大させる重要な原動力となっています。

3.オンラインショッピング習慣とモバイル決済の普及

中国のインターネットユーザーはオンラインショッピングを日常的に利用しており、特にモバイル決済の普及がその成長を支えています。WeChat Pay やAlipayなど、中国で生活うえでモバイル決済は欠かせないインフラとして定着しています。

これらの便利な決済手段は、消費者が時間や場所を問わず簡単に買い物を楽しむことを可能にしており、利便性の向上が、中国越境EC市場の拡大に大きく寄与しています。

4.中国の越境EC推進政策

中国政府は越境ECを国家経済の重要な柱と位置付け、積極的な支援策を展開しています。具体的には以下の取り組みが進められています、

  • 越境EC企業に対して税制優遇措置:関税や消費税の一部免除
  • ポジティブリストの拡大:越境ECで取り扱える商品カテゴリの拡大
  • 物流インフラの整備:保税倉庫や配送ネットワークの拡充

これらの政策により、越境EC事業者にとって魅力的な市場環境が整備されています。

 

中国越境ECビジネスモデル別「メリット・デメリット」

中国越境ECビジネスモデル別メリットデメリット

国境を越えて中国で商品を販売するには、いくつかの選択肢があります。自社の体制や訴求力に応じて、ビジネスモデルを選択しましょう。ここでは、基本的なビジネスモデルのメリット・デメリットを比較してご紹介します。

1.中国国内にウェブサイトを構築する

メリット

中国国内向けにショッピングサイトを構築することで、ブランドイメージや顧客体験を直接コントロールでき、商品販売プロセスを包括的にコントロールすることが出来ます。また、出店料や販売手数料が不要なため、長期的には運用コスト削減の可能性があります。

デメリット

中国国内に自社のウェブサイトを構築するには、現地法人の設立やECサイト運営許可の取得が必要です。また、支払システムや規制準拠など、初期段階で多額の投資が必要となります。

海外サーバーを利用する場合、インターネット規制の影響によって、読み込み速度が遅くなったり、アクセス自体を遮断されてしまうリスクがあります。さらに、中国の個人向け郵送には行郵税が課せられ、物流費用や税制対策の負担が増える可能性もあるため、外資が中国でウェブサイトを構築して販売を行う場合、メリットよりデメリットの方が大きくなること多く、中国のECサイトへ参入する場合がほとんどです。

2.マーケットプレイスを活用する

AlibabaのTmall、JD、Pinduoduoといった中国の大手ECプラットフォームや、Amazonグローバル、楽天市場、eBayといった中国国外のECプラットフォームをを活用することで、中国に商品を販売することが可能です。このビジネスモデルは、既存の流通インフラや顧客基盤を利用できるため、スムーズに参入するための有力な選択肢です。

メリット

マーケットプレイスは、既に構築された流通ネットワークや広範な顧客基盤が構築されており、高いビジネスリスクを負うことなくスムーズに市場に参入できます。さらに、サイトの運営、決済システム、データ分析、カスタマーサポートなど、プラットフォームが提要する多様なサポートを活用することで、運営側の負担を軽減することができます。

Tmall Global、JD Global Salesなど、中国現地法人が不要な点は大きなメリットの一つと言えるでしょう。

デメリット

プラットフォームを利用には、企業規模の審査、複雑な申請プロセスに加え、保証金、年会費、販売手数料などのコストが発生するため、利益率が低くなる傾向があります。

加えて、プラットフォーム内に多くのブランドが競合しているため競争が激しく、品質やブランド戦略の差別化が不可欠とです。

3.ソーシャルメディア・メッセージアプリを活用するmobile lgoo

WeChatやソーシャルメディアを活用した販売方法は、近年人気の高いビジネスモデルです。これらのプラットフォームは、商品のプロモーションから販売、顧客とのコミュニケーションまで、多彩な活用が可能です。

メリット

ソーシャルメディアやメッセージアプリを活用する大きな理由は広範なユーザーベースにアプローチできる点です。現在、WeChatのユーザー数は13億人、DouyinはMAU 6億人、REDもMAU 3億人を超えています。

また、WeChatやDouyin(TikTok)、RED、Bilibiliなどは、商品のプロモーションから販売まで一つのプラットフォームで完結できるため、効率的にブランド認知を高め、売り上げにつなげることができます。特にDouyinやREDは、商品レビューやライブコマースなどに強みを持っており、消費者とのエンゲージメントを高める販売戦略を構築することが可能です。

メッセージングアプリやソーシャルメディアは、顧客とリアルタイムでコミュニケーションを取ることができるため、高いコンバージョン率を誇り、顧客との関係構築に優れています。

デメリット

各プラットフォームでのユーザー属性や利用方法が異なるため、効果的に活用するためには専門的な知識やスキルが求められます。また、アルゴリズムの変更や政府の規制によって、突然アクセスが制限されるリスクもあるため、分散型の戦略を検討する必要がああります。

リアルタイムで顧客対応を行うためには、専用のスタッフや運営体制が必要となり、大きなリソース負担となる可能性があります。

ソーシャルメディアやメッセージングアプリは、幅広い消費者層へのリーチと高いコンバージョン率を実現する有力な手段ですが、競争激化や運営コスト、プラットフォーム依存のリスクを伴います。成功の鍵は、適切なプラットフォーム選びと、戦略的なマーケティング施策の展開です。

 

中国越境ECで人気の商品2025

中国に越境ECで商品を販売する場合、「ポジティブリスト(販売可能な商品カテゴリ)」が明確に定められており、全ての商品が自由に販売できるわけではありません。リストに含まれない製品は、通常の輸入手続きが必要となります。2022年に実施された政策調整では、新たに29の製品カテゴリが追加されました。

近年、越境ECに対する信頼性が高まり、越境ECを利用する中国人ユーザーが大幅に増加しています。NielsenIQ と JD Worldwideの2024年のレポートによると、過去一年間で消費者の35%が輸入品を購入しています。その中でも成長が顕著な商品カテゴリは以下の通りです。

1.美容・パーソナルケア

美容やパーソナルケア分野は、特に原料の安全性や環境への配慮が求められる中国の消費者から高い人気を誇ります。

2.ベビー用品

国内ブランドに対する安全性の懸念から、海外のベビー用品や粉ミルク、紙おむつ、マタニティ用品の需要が増加しています。特に品質が保証された商品は、子供の健康を重視する親たちから信頼されています。

3.栄養補助食品

健康意識が高まる中国では、汎用のサプリメントに限らず、特定の健康ニーズに応える栄養補助食品の人気が急速に高まっています。高品質な原料や最先端の技術を活用した商品は特に人気が高いようです。

4.高級アパレル・ジュエリー

高級品を好む裕福なミレニアル世代を中心に高級ブランドのアパレルやジュエリーが注目されています。特にブランドの価値観やファッション性に「共感」する層からの支持が強く原材料の品質や原産地への関心の高まりは顕著で、本物で安全な製品を求める傾向が高まっています。

 

中国越境EC構築・運用のポイント

中国越境EC「攻略ガイド」2025br市場動向とビジネスモデル別メリットデメリット1

中国市場で越境ECを成功させるには、戦略の構築から運用に至るまで、重要なポイントを押さえる必要があります。

check 中国市場に特化した戦略を構築する

中国越境ECで海外企業が成功を収めるためには、市場調査を徹底し、中国消費者の購買動向や嗜好、ニーズを深く理解することが重要です。

中国大手商取引企業である「JD.com」が発表したレポートによると、輸入品を購入する主な消費者は26~35歳が45%を占めており、45~55歳の消費者層が最も急速に伸びている層であると伝えています。

年齢層や所得層、居住地域などターゲットセグメントを明確にし、ターゲットの嗜好に合わせた商品ラインナップやマーケティングキャンペーンを展開し、効果的に顧客を引き付けることがとても重要となってきます。

check 最適なプラットフォームを効果的に活用する

中国市場への参入には、既存の越境ECプラットフォームを活用することは非常に有効です。大手プラットフォームには、既に広範囲なインフラが整備されており、外国企業が効率的に市場に参入できる環境が整っています。

代表的なプラットフォーム

  • Tmall Global:中国の代表的な越境ECプラットフォーム。品質と信頼性を保証する厳格な製品審査があるため、中国でも人気の越境ECプラットフォーム
  • JD Worldwide:電子機器に特化した販売サイトだったこともあり、B2Bなどにも対応。幅広い製品を提供しています
  • WeChat:圧倒的なユーザー数を誇り、WeChatストアやミニプログラムを通じて、仮想店舗を開発することが可能
  • RED(小紅書):商品レビューやライフスタイルを象徴するプラットフォームで、美容や健康商品に特化。ライフスタイルを重視した商品レビューが人気
  • Douyin/Kuaishou:短編動画に強みのあるプラットフォームで、ライブコマースが強み。短編動画で効果的なプロモーションが可能。

競争が激化する昨今では、適切なプラットフォーム選びの他にインフルエンサーとの連携や差別化されたブランド戦略が不可欠です。

check 信頼できるパートナーと連携する

中国市場の規制や制限に対応するには、現地に精通した信頼できるパートナーと連携が成功の鍵となります。

物流業者、通関手続き、カスターマーサポートなど、各分野で中国市場とマーケティング戦略に関する深い知識を持つ経験豊富なパートナーを協力することで、リスクを軽減し、円滑な事業運営が可能となります。

 

中国越境EC成功事例

急激に拡大する中国越境EC参入のポイント解説

ShopCNを活用することで、中国越境ECに成功した事例が多数あります。そのうち2つの事例をご紹介します。

check Douyinで越境ECに取り組む「カネボウ」

花王株式会社の化粧品ブランドであるカネボウは、中国の消費者で高い人気を誇っています。中国の有名KOLと提携し、ライブストリーミングやコンテンツ発信などを行いブランド認知と製品認知の向上を高めています。

check アニメグッズ販売事例

ある店舗は、WeChatのShopCNでアニメのキャラクターグッズを販売。WeChat公式広告及び、毎週の記事投稿により、WeChatにおけるフォロワー獲得とShopCNへの誘導に成功し、毎月100万円以上の安定的な売上を保っています。

 

さいごに

中国の越境EC市場は大きな成長が見込まれる一方で、規制・制限が多く、競争が激化しているのも事実です。越境ECの構築・運用においては、消費者ニーズに特化した戦略と最適なプラットフォームの活用、十分な知識と中国市場を熟知したデジタル戦略が不可欠です。

「自社に中国人スタッフはいないけど、中国市場を狙いたい」とお考えでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。貴社のブランドを世界に届けるグローバルマーケティングパートナーとして全力を尽くします。

中国バナー

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。