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理論的に学ぶ
2019年12月24日

日本企業が今直面する「グローバルガバナンス問題」とは?

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日本企業が今直面する「グローバルガバナンス問題」とは?

日本は今後、急激な人口減少が予想されており、将来的に海外を相手にビジネスをしていく必要があることはこれまでの記事でも述べてきたとおりです。

しかし、海外デジタルマーケティングを効率的に進めることは一筋縄ではいきません。例えば、海外に立ち上げた海外子会社との連携がうまく取れず、海外デジタルマーケティングを軌道に乗せることができなかったり、ひどい場合には裁判沙汰になったりと、様々な事例が発生しています。

そこで本記事では、日本企業が今直面する「グローバルガバナンス問題」について紹介するとともに、今求められる「グローバルガバナンス」について説明します。

1.「グローバルガバナンス」とは

マーケティングに携わる人であれば、「ガバナンス」という言葉は聞いたことがあると思います。英語の「governance」は、統治、管理という意味を持ちますが、マーケティング分野においてガバナンスという場合、「組織などをまとめるための方針やルールの策定およびその浸透化」を意味します。つまり、企業全体が同じ基準や倫理観のもとで一丸となって会社運営を行うためのルールを設け、その徹底化を図ることです。経営者がガバナンスを強化することで、企業は不正行為や従業員同士の対立などを防ぎつつ、また、一貫したブランディング戦略のもとでマーケティングを進めることができるのです。

その一方「グローバルガバナンス」という言葉は聞きなれないという方も多いのではないでしょうか。グローバルガバナンスは『グローバルマーケティングを進める際に海外子会社におけるルールを定め、それを従業員に浸透化させること』をいいます。海外デジタルマーケティングの分野では一般的に使用されるようになってきましたが「グローバルグループガバナンス」「グローバル経営管理」またはシンプルに「海外子会社管理」などと別の言葉が使われることもあります。これらは基本的に同じ内容と捉えてよいでしょう。このグローバルガバナンスが機能していない場合、裁判沙汰の事件が発生することも十分考えられるのです。

2.実際に日本企業が直面したグローバルガバナンス問題とは

KPMGが2018年6月末の時点で行った、過去3年間の企業の不正状況についてまとめた「日本企業の不正に関する実態調査」のデータをいくつか見ていきたいと思います。当調査では、対象となった429社の内135社において何らかの不正が発生していたとのことです。その内訳をみてみると、親会社では不正が発生していないものの、国内または海外子会社で不正が発生したと回答した企業は61社(約45%)で、半数近くにも上るとのこと。また、以下は不正発生時の損害賠償金額を示したものですが、10億円以上の大きな賠償は、主に海外子会社にて発生しています。


<KPMG:「不正発生による企業の損害賠償金額」>※無回答の企業数を除外したため、合計が100%にならない

これらからもわかるように、親会社は順調に運営を行っていても、海外マーケティングの拠点として創設した海外子会社が大きな問題を起こし、親会社に大きな影響を与える事例が相次いでいるのです。

不正が発生したと回答した企業に対し、不正が発生した根本理由を質問したところ、「行動規範等の倫理基準の未整備または不徹底」および「親会社のコントロール不足」などといった回答が多く寄せられました。


<KPMG:「不正発生の根本理由」> ※複数回答のため、合計が100%にならない

この結果を見てもわかるように、事前にグローバルガバナンスの強化を行っておけば、防げた不正問題が多くあるのです。そのため、海外デジタルマーケティングに携わる人々にとって、グローバルガバナンス問題への事前対応は急務となっています。

しかし、グローバルガバナンスの強化は、国内子会社のガバナンス強化と比べて非常に複雑です。なぜなら、言語、宗教、慣習、価値観など、様々な面で違う考えを持った外国人たちを対象とし、ガバナンス強化を進めなければならないからです。しかしながら、海外子会社に合わせすぎて、企業のブランディング戦略がズレてしまうのも望ましくありません。では一体、どうすればいいのでしょうか。

3.今求められているグローバルガバナンスとは

上記のような問題を踏まえつつ、今後必要となるであろうグローバルガバナンスのポイントについて紹介します。

(1) 統一のガバナンスを適用するが、宗教的問題については配慮する

多くの日本企業が犯した失敗は、海外子会社の独自性を尊重するあまり、グローバルガバナンスを設定しなかったことです。これにより、海外子会社はある程度自由な方針のもとで働くことができますが、それはまた、多くの不正問題を生み出すきっかけともなりました。そのため、基本的には親会社のガバナンスを海外子会社にも同様に適用するのが望ましいでしょう。しかしながら、海外では宗教による制約が非常に大きいため、宗教上難しいと考えられる内容については、独自のルール制定が必要になります。

(2) 現地リーダーの教育に力を注ぐ

海外子会社を親会社が常にリモートで監督することは難しいため、現地リーダーへの教育を重点的に行うことが重要です。その際、基本的な内容をただ伝えるだけでなく、なぜガバナンスを制定する必要があるのかを理論的に説明することが必要です。そうすることで、現地リーダーはグローバルガバナンスを社員に周知しやすくなります。

(3) 現地リーダーの協力の下で、社員への周知徹底を図る

ガバナンスの周知徹底に関しては、多くの時間を割いてでも行うことが重要です。社員のこのくらいは大丈夫だろう、という認識の甘さが会社にとって大きな損失に繋がる可能性もあります。国によっては、ルールの遵守にそれほど重きを置かない国もありますが、日本人がルールを守るのと同じレベルまで、海外子会社の社員の意識を高めることが大切です。

(4) グローバルガバナンスを日常の活動に落とし込み、身近なものとする

ガバナンスは、どうしても普段の仕事から離れた場所にあるものだと認識されがちですが、普段の仕事と非常に関連があるものです。そのため、身近に存在するガバナンス問題を積極的に取り上げ具体例を常に示すことで、社員のガバナンスに対する意識を改善し、ガバナンスを維持することができます。

(5) グループ全体で確認する機会を定期的に設ける

親会社は、海外子会社がガバナンスの維持をできているかどうかを定期的に確認する必要があります。コーポレートガバナンスでは、株主総会がこの役割を果たしていますが、海外子会社のグローバルガバナンス遵守に関しては、親会社が意図的に確認する期日を設けない限りはスルーされてしまうのが常です。ガバナンスはどうしても、徐々に弱まってしまうものなので、ガバナンス強化を図る機会を定期的に設けることが重要です。

終わりに

今回は、海外デジタルマーケティングを安全に進めるために必要となるグローバルガバナンスについて紹介しました。たとえ企業の売れ行きが順調だったとしても、グローバルガバナンスが強化されていないことが原因で、企業の危機に陥ることは十分に考えられるのです。

しかし、安易にグローバルガバナンスを制定するだけでは、従業員の理解を得られないこともあるのが海外デジタルマーケティングの難しさ。弊社では、海外デジタルマーケティングに取り組む企業に向けてのサービスを充実させておりますので、不安ごとがございましたら、ぜひ気軽にお問い合わせください。


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執筆者プロフィール


Kaita

宇佐美 海太 マーケティング部マネージャー

弊社の「デジタル x アナログマーケティング、コーポレートブランディング」を統括しています。東京生まれ、南欧育ち。ヨーロッパの生活は1年だけですが、人生が劇的に変わりました。自分を育ててくれた"日本と世界"への感謝を胸に、「日本と世界をつなげること」が生涯のテーマです。趣味はプロレス鑑賞・料理です。