「世界の広告ブロックについての知るべき統計データ」
マーケティング施策の中で、最も一般的な施策の1つが「デジタル広告」です。
近年、米国をはじめとするデジタル先進国では、毎日の生活の中で1日4,000~10,000個の広告にさらされていると言われています。そして、広告と共に生活している現代社会において、(マーケターにとって皮肉にも…)インターネット上で最も人気のあるツールの1つが「広告ブロック」です。
現在、世界中のインターネットユーザーの37%以上(16歳から64歳)が広告ブロックしており、最新のブラウザには最初から広告ブロックがインストールされているものも多くあります。
今回は、マーケターが知っておきたい「広告ブロックに関する統計データ」や「広告ブロックに対処するためのヒント」などをご紹介していきます。
目次
広告ブロックを利用する理由
1.広告ブロックを利用する主な理由は、「広告が多すぎる」
広告ブロックを利用している16歳から64歳までのインターネットユーザーを対象にしたHootsuiteの2022年最新の調査によると、「広告ブロックを使用する理由」は以下の通りです。
- 「広告が多すぎる」‐ 62.1%
- 「広告が邪魔をする」‐ 55.3%
- 「維持分のプライバシーを守りたい」‐ 41.2%
- 「自分に関係のない広告」‐ 40.8%
- 「不適切なページが表示されるのを避けたい」‐ 40.8%
- 「端末のパフォーマンスを維持したい(ページ速度など)」‐ 34.6%
これらの理由に基づくと、インターネットを利用している際に、自分が関心事とは関連性のないものが広告として表示されることに対して敏感なユーザーほど広告ブロックを利用する傾向があります。また、広告によって自分が特定されるような個人情報が収集されるのではないかと不安に思うユーザーも広告ブロックを利用する傾向があります。
2.アメリカにおける広告ブロックを利用する主な理由は「ウェブサイトが操作しやすくなること」
調査機関AudienceProjectが米国のインターネットユーザーを対象にアンケートを取ったところ、広告ブロックを利用する主な理由は以下の通りです。
- 「ウェブサイト閲覧が操作しやすい」‐ 71%
- 「興味のない画像やメッセージを避けたい」‐ 46%
- 「トラッキングされたくない」‐ 44%
- 「ウェブサイトの読み込みが早くなる」‐ 41%
- 「データ消費量を抑えられる」‐ 19%
上述と同様に、ウェブサイト閲覧を快適にしたい、個人情報を収集され追跡されなくない、という声がある点では、アメリカに限らず世界のインターネットユーザーが共通に持つ傾向であることが分かります。
広告ブロックユーザーを理解する「統計データ」
1.インターネットユーザーの4人に1人は広告ブロックを使用!
冒頭でもお伝えしたように、2022年最新のHootsuiteの調査によると、世界中の37%以上が広告ブロックを使用しています。
2.「男性」の広告ブロック利用率が高い
16-64歳を対象にした調査の中でも「25~34歳の男性ユーザー」が、最も利用率が高く43.2%となっています。平均で男性の38.6%が利用しています。
3.女性の利用率の平均は「33.4%」
最も低い年齢層は55-64歳の女性で利用率は28.1%です。
全ての年齢層で女性よりも男性の方が高い利用率を示しているということは注目すべきポイントです。なお、女性の中で最も高い利用率は、25~34歳まで、約38.5%となっており、男女問わず広告ブロックの利用率が最も高い年齢層です。若い年齢層ほどネット環境における広告体験に敏感であることがこの統計からうかがえます。
4.広告ブロックが最も利用されている国は、「ベトナム」
- ベトナム ‐ 44.7%
- 中国 ‐ 43.4%
- インドネシア ‐ 41.7%
- 南アフリカ ‐ 40.4%
- 台湾 ‐ 39.8%
- 香港 ‐ 39.7%
- トルコ ‐ 39.6%
- オーストリア ‐ 39.5%
そして、日本は調査対象48か国中、47番目の19.9%でした。最下位はチェコの9.3%です。
東南アジア地域では広告ブロックの利用率が高い傾向があります。中でもベトナム・中国・インドネシアは他国と比較すると利用率が高い傾向にあるのがわかります。一方、日本は、比較インターネットの普及が進んでいるにもかかわらず、上位10か国と比較すると大きく後退していることが分かります。
5.一番迷惑な広告は「音声自動再生される動画広告」
アメリカのインターネットユーザーの66%は、ウェブサイト閲覧時に「サウンドありで自動的に再生されるビデオ広告が最も邪魔な広告である」と回答しています。サウンドなしで自動的に再生されるビデオ広告であっても55%のユーザーが広告を「邪魔である」と回答しています。
自動再生するビデオ広告に対して強いアレルギーを持っていると言えそうです。逆にデジタル広告は邪魔にならないと回答しているユーザーは10%に留まっており、殆どのユーザーはデジタル広告に対して少なからず「嫌悪感」を持っていると言えるでしょう。
6.アメリカの広告ブロックユーザーは、約7,300万人以上!
パーセンテージではなく、数字で表すと、その多さに驚きです。
Statistaの統計によると、アメリカでの広告ブロックユーザーは年々増加しており、その数は7300万人を超えていると言われています。これらは、広告ブロックのソフトウェアやプラグイン、またはアプリをインストールした数です。
7.スマホよりもデスクトップの広告ブロック利用率が圧倒的に「高い」
アメリカにおける広告ブロック利用率を「端末ベース」で見ると、全ての年齢層においてスマートフォンよりもデスクトップの方が広告ブロックの利用率が高いくなっています。
中でも18歳から24歳までの年齢層では、デスクトップの広告ブロック利用率は60%、スマートフォンは18%となっており、42%もの大きな開きがあります。
<eMarketer : Use of Ad Blockers by US Adults, by Device and Age, March 2021>
アメリカのユーザーを対象にデジタル広告を配信する際は、スマートフォンよりもパソコンへの配信の方が広告ブロックされる確率が高いという事実は、頭に入れておくとよいかもしれません。
広告ブロックを攻略する3つのヒント
BAS(Betters Ads Standards:優良広告基準)を実装して最適化
現在、殆どのSSP(Supply-Side Platform)は、CBA(Coalition for Better Ads)のような業界団体が設ける一定の基準に従っています。例えば、GoogleやCriteoのような広告プラットフォーマーは、CBAのメンバーとしてBASを提唱しています。
※BASとはインターネットユーザーのネット体験を向上、維持するための標準を意味します。
BASのウェブサイトでは、デスクトップ、モバイル、ビデオ広告、モバイルAPPのカテゴリ毎に、非推奨の広告フォーマットの具体例について詳細に紹介されていますので、一読することをお勧めします。




広告ブロックユーザーに広告を見てもらうためにプログラムに参加する



「AdBlock」という広告ブロックツールを提供する企業は、AA基準(Acceptable Ads:認可広告)を設けています。AA基準とは、快適なネット体験を提供するために設けられた、広告フォーマットに関する基準です。
AA programに参加するとAdBlockが自社ウェブサイトをホワイトリストとして登録し、AdBlockをインストールしているユーザーにも自社サイトに表示される広告を配信することが可能になります。しかし、ホワイトリスト化してもらうには、AA基準に準拠したフォーマットで広告を表示する必要があります。自社のウェブサイトがホワイトリストに登録できると、AA programに参画した広告の表示を許可している一部のAdBlockユーザーに対しては広告を表示することができるようになります。事例として、SetupadというSSPはBASに準拠した広告を表示することで、広告収益を10%から20%伸ばすことができました。




マネタイズプラットフォームと連携する



SetupadのようなSSP(広告配信プラットフォーム)と連携することによって、UXを失うことなく広告の配信率を増やすことが可能です。
SetupadはGoogle AdXやAdform、Magnite、 OpenXが定める広告配信基準に従い適切な広告フォーマットに基づいた広告のみを配信するようにしています。Setupadは質が低く好ましくない広告を表示しないようブロックリストを保持しており、自動的に更新されるようになっています。これによってブランドイメージを損なうことなく広告配信によって収益を上げることができます。
さいごに
デジタル広告への投資が増える一方で、広告ブロックの導入が浸透することで、広告インプレッションが減るという新たな問題が発生しています。広告ブロック以外にも、近年Apple社やGoogle社が進めているサード・パーティー・クッキーの廃止等、広告媒体側からの新たな規制も進行しています。
広告配信は、これまでよりも一層UXを損なうことなく適切な広告フォーマットで広告を配信する取り組みや、新しい規制の中で広告インプレッションの維持に注力する必要性に迫られています。グローバル市場におけるデジタル広告配信に関してお困りのことがありましたら、是非私たちにお声がけください。


吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。