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2022年05月10日

伝わる・高品質な多言語翻訳の作り方
~心を動かすために日本人でも出来ること~

伝わる翻訳の作り方

企業の海外進出にあたり必要不可欠な多言語翻訳の品質管理。「良い翻訳」とはどのようなものなのでしょうか?

仕事で外国語/多言語に接することがある、もしくは、日本語⇔外国語の翻訳に携わっているなら、一度は思ったことがあるのではないでしょうか。企業の海外進出にあたり、どの企業でも直面する、言語の壁。ネイティブでない限り、企業担当者の「母国語ではない“コトバ”の品質」に対する不安は大きいと思います。

そこで今回は、実際の多言語サイト制作に特化するインフォキュービック・ジャパンが、長年培った経験をもとに、「高品質な多言語翻訳とは?」から、日本人でもできる「多言語翻訳の品質を確かめる具体的な方法」などをご紹介したいと思います。

目次

 

多言語翻訳における“品質”とは?

日本人でもできる!伝わる翻訳の作り方

翻訳の目的は、元の言語をターゲットとなる国の言語が理解できる言葉に変換することです。現在、世界中に無数の翻訳会社があり数多くの翻訳者が活躍しています。また、近年では最先端技術を使ったニューラル機械翻訳サービス(NMT)も登場しビジネスに活用され始めてきています。

しかし、「翻訳」という言語を扱う職業が誕生してから数百年もたった今でも、残念ながら「翻訳の品質」に関して、定義されたものは何もありません。

そのため、一定の品質を保つために、自社での多言語翻訳の品質に対する深い理解、整理された品質管理プロセス、プロフェッショナルな翻訳者、頼りになる適切なツールなどが非常に重要になってくるのです。

2009年、HSBC銀行のキャッチフレーズの翻訳ミスにより、大損害(再構築キャンペーンにかかった金額は1000万ドル以上!)を被ったことを考えると、海外マーケティングにおいて、多言語翻訳の品質を一定以上に保つことがいかに重要であるかをご理解いただけるのではないでしょうか。

 

高品質な多言語翻訳とは?

米国・英国で調査サービス提供しているCSAResearch社の調査によると、海外顧客の75%は「自分の言語で行われているサービスの場合、同じブランドを再購入する可能性が高く、自国語でのカスタマーケアを望む」と回答。また、90%の人は「理解できないウェブサイトはすぐに離脱する」とも回答しています。

同社が実施した世界29か国を対象にした調査「Can’t Read, Won’t Buy(読めない買わない)」では、「65%のユーザーは母国語でのコンテンツを好み、73%は母国語での製品レビューを望んでいるとの調査レポートを報告しています。

この調査結果からわかるように、高品質の多言語翻訳とは「単に翻訳されていれば良い」のではなく、現地で日常的に使用されている「母国語での翻訳」が非常に重要になってくることがわかります。

高品質な多言語翻訳とは、原文の語調やメッセージを可能な限り、その国や地域の言葉で忠実伝えるものでなくてはなりません。また、翻訳された文章を読んだお客様の安心・安全が守られなければなりません。そのためにも地域の文化や宗教的要素も考慮する必要があるとインフォキュービック・ジャパンは考えています。

 

品質を評価するためのチェックポイント

伝わる翻訳の作り方

多言語ウェブサイトの翻訳には、人間が提供する翻訳と機械翻訳の2つの主要な方法で取り組むことができます。年々、精度の高くなってきた機械翻訳と人間が行う翻訳、どちらにもメリットとデメリットが存在します。一概にどちらだけが良いということはありません。

人間が翻訳した場合も機械翻訳の場合どちらにしても「多言語翻訳の品質」を評価する必要があります。その際に考慮すべき重要なチェックポイントをご紹介します。

  • スペルミス・文法ミスはありませんか?
  • 正しい専門用語を一貫して使用していますか?
  • 原文の意味を正確に反映していますか?
  • 原文に”忠実”な文体で表現されていますか?
  • ターゲットとなる国・地域の文化的特質が正しく表現されていますか?
  • ターゲットとなる国・地域の日付や記号が正しく使われていますか?
  • ガイドラインや要件に違反していませんか?

 

ネイティブでなくてもできる!
翻訳の品質を確かめる具体的な方法

では、自社でできる品質を確かめる具体的な方法をご紹介します。

「外国語が得意でない日本人でも、多言語翻訳の品質を確かめる方法」の1つとして、おすすめするのは「文章を分解すること」です。分解することで現れる細かい要素を、定めた基準によって、ひとつひとつ正誤を判定すると分かりやすくなっていきます。(英語を例にとってみます)

言語の分解方法として「品詞」で分解する、「単語の構造的な構成要素で仕分ける方法」があります。これは、「主語・動詞・目的語」さらには「前置詞・関係詞・副詞・形容詞」などで言葉を分解します。一方で、異なる言語の分解方法として、文章を品詞ではなく「機能で分ける方法」が存在します。

具体的には以下の3つです。

  1. ロジック(論理)
  2. グラマー(文法)
  3. レトリック(修辞技法

この分け方を元に、次のように少しだけ変形させます。

  1. テクニカル要素(論理・文法・ルール)
  2. レトリック要素(修辞技法)

なぜ、3つの分類を2つに変形させるかというと、「1.テクニカル要素(論理・文法・ルール)」は外国語が分からない日本人でも「基準に従って」品質を確認することが可能なものになります。「2.レトリック要素(修辞技法)」は、母国語ないしネイティブレベルの能力を持っていないと品質を確認できないものを分けました。これで外国語がネイティブでなくても確認できる要素がはっきりします。

外国語ができない日本人でも、翻訳の品質を確かめるために今日から出来ることは、この「機能で分ける方法」の外国語の「1.テクニカル要素(論理・文法・ルール)」の正誤判定です

では、具体的にどのような要素かというと、以下の4つです。

・ 固有名詞、商標
・ 専門用語表記
・ 数値表記
・日時表記

といった表現が固定されている項目、もしくは、数値や表記が定まっているので文章の中で見つけるのが簡単な項目です。例えば、「東京」という単語を見てみましょう。

英語=「Tokyo」
中国語簡体字=「东京」
ポルトガル語=「Tóquio」

アラビア語やロシア語といった特殊な文字を使うケースを除いて、探しやすい点が特徴的です。数値や固有名詞といった「テクニカル要素」を外国語文章・翻訳から探し出し、その正誤を確かめるのは比較的簡単です。外国語が分からなくてもその正誤を確かめるためのヒントの一部をご紹介します。

皆様にとっても使用頻度が多いであろう英語のケースです。

 

言葉の“正誤”を確かめるために確認すべきポイント

伝わる翻訳の作り方

check 固有名詞

” The “
非常に初歩的ですが、固有名詞に定冠詞 ”the” はつけないこと。当たり前過ぎて笑われてしまうかもしれませんが、数万文字を越える翻訳作業や修正やリライトが度重なるケースでは、知らない間に ”the” が紛れ込むことがよくあります。

” 商標表記 “
商標や特許を企業が取得し、表記方法を明確にしている単語については要注意です。気付かずに他社商標を誤って表示してしまうことを未然防止するために、特許庁の特許情報プラットフォームJ-PlatPatを使って正しい表記を確認しましょう。

” 交通関連表記 “
都営浅草線の英語は” Toei Asakusa Line ”?それとも” Toei Asakusa-line ”?
オンライン・オフライン問わずアクセス/交通関連表示が増えるなかで、国内でも様々な表記ゆれが生じています。そのため、国として表記統一を図る試みとして観光庁が用語集を作成しています。こちらで表記を確認しましょう。『観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のガイドライン

正式な表記に迷った場合は、鉄道会社や施設の公式HP、さらにHPが多言語化されていない場合は電話で正しい表記を確認しましょう。ちなみに都営浅草線の正式表記は、”Toei Asakusa Line”です。

” 国名 “
アメリカ合衆国の対訳は、USA, The U.S.、The United States…等複数みかけることがあると思いますが、同じ文章の中で異なる表記が出てくると、海外の方は訳文の品質に疑問を感じるのだそうです。正しい表記に悩む場合はISO(国際標準化機構)によって発行されている国名コード標準:ISO 3166-1に準拠すれば統一する事が出来るでしょう。

check 数値表記

国によって数値や通過の区切りに用いる「, 」コンマや「. 」ピリオドの作法が異なることをご存知ですか?

例えば、インドネシアでは「千の位」は「. 」ピリオドで区切り、「小数点以下」は「, 」コンマで区切ります。日本と逆ですね。インドネシア向けの通販サイトをつくるときに、日本の慣習そのままに価格を表記してしまうと思わぬトラブルに繋がるかもしれないのでご注意を。

各国の表記は下記をご参照ください。

地域 数値 通貨
日本 123,456,789.00 ¥123,456,789
アメリカ 123,456,789.00 $123,456,789.00
イギリス 123,456,789.00 £123,456,789.00
ドイツ 123.456.789,00 123 456 789,00 €
フランス 123 456 789,00 123 456 789,00 €
韓国 123,456,789.00 ₩123,456,789
中国 123,456,789.00 HK$123,456,789.00
アルゼンチン 123.456.789,00 $ 123.456.789,00
イタリア 123.456.789,00 € 123.456.789,00
インドネシア 123.456.789,00 Rp123.456.789
オランダ 123.456.789,00 € 123.456.789,00
オーストラリア 123,456,789.00 $123,456,789.00
オーストリア 123.456.789,00 € 123.456.789,00
ギリシャ 123.456.789,00 123.456.789,00 €
スイス 123’456’789.00 SFr. 123’456’789.00
スウェーデン 123 456 789,00 123.456.789,00 kr
スペイン 123.456.789,00 123.456.789,00 €
デンマーク 123.456.789,00 kr 123.456.789,00
トルコ 123.456.789,00 123.456.789,00 TL
ブラジル 123.456.789,00 R$ 123.456.789,00
ボスニア

ヘルツェゴビナ

123.456.789,00 123.456.789,00 КМ
メキシコ 123,456,789.00 $123,456,789.00
ロシア 123 456 789,00 123 456 789,00р.

 

また、日にちや時間を表示する際も、さきほどの国名表示と同様に、”July 13”なのか”13th July”なのか等、同じ文章の中で表記を統一することで、文章の美しさが決まります。

check 地域によって異なる言葉

「プログラム」を意味する”Program”、”Programme”。どちらも英語としては正解ですが、前者はアメリカ英語(米語)、後者はイギリス英語の表記になります。他にも”Fall ⇔Autumn”、”Organization ⇔ Organisation”など、同じ英語でも地域英語により微妙な差異があります。

ネイティブにとって、これも同一文章の中に両者が混在していると「え?」となりますので、その翻訳・外国語が「誰向けか = ターゲット」を明確にしたうえで使い分けるのが良いでしょう。

日本語で考えると、このブログの文中に、「(関西弁で)同じ文章の中に、関西弁と東北弁が混在していたらちょっと変やろ?」…という感じでしょうか。やはり、変ですね。

 

役割分担を決めて、素敵な「伝わる多言語翻訳」へ

グローバル企業ブランディング!~ 素敵な翻訳をつくるために、日本人でもできること ~

では、「2. レトリック要素(修辞技法)」のチェックはどうするの?こうしたご質問があるかもしれません。残念ながら、この点は外国語を母国語・ネイティブレベルの能力をもったチェッカーに確認してもらうことをお勧めします。

大事な点は外国語文章・翻訳の品質を確かめる際には「役割分担」と「プロセス」そして「基準」を踏まえて細かな部分から地道にみていく事です。遠回りのようですが、一番確実で最短の確認方法だと思います。もちろん、こうした作業を一人で行うのはとても大変な作業となります。

海外デジタルマーケティングに特化したインフォキュービック・ジャパンでは、今回ご紹介した具体的な基準例を盛り込んだ独自の翻訳マニュアルを作成します。さらに、社員の半数が異なる言語の多国籍スタッフで構成されていますので、外国語の「1. テクニカル要素」「2. レトリック要素」の確かな管理が可能です。

 

さいごに

企業の海外進出に必要不可欠な翻訳の品質管理は、グローバルにおける企業ブランディングを進めるうえで「企業の印象」を決めるとても重要なものです。伝わる翻訳にするためには「役割分担」「プロセス」「基準」を取り決め、確実に漏れなく進める事が重要になってきます。

良い翻訳文作成やグローバルブランディングに向けて多言語Webサイト制作などでお悩みでしたら、ぜひお気軽に私達にお申し付けください!

英語サイト制作バナー

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。