GLOBAL MARKETING INSIGHT

連載対談
2018.2.4

今後はアジアへの進出も優先事項。
動画で“セカイにコドモゴコロを”!

対談者

UUUM株式会社
代表取締役/CEO
鎌田 和樹 様

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日本の上位ユーチューバーの多くが所属する「UUUM」(ウーム)とは?

“ユーチューバーの事務所”にとどまらない事業内容

山岸 - 今回はMCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)事業者の日本におけるパイオニア、「UUUM株式会社」(ウーム、以降「UUUM」)の鎌田和樹社長に、事業にかける思いや今後の展望などについてお聞きしていきます。MCN事業者とは、ユーチューバー(YouTuber)の活動をサポートする事務所のような存在ですよね。最近では人気があるユーチューバーも多くなってきたように思いますが、上位のユーチューバーたちの多くが御社を選んでいるように思います。現在(2018年1月)、御社に所属するユーチューバーはどれくらいいるのでしょうか?

鎌田 - 所属チャンネル総数5,000を超えています。そのうち、HIKAKIN(国内チャンネル総登録者数No.1のユーチューバーであり、「UUUM」社のファウンダー/最高顧問)、はじめしゃちょー、SEIKIN、Fischer’s-フィッシャーズ-といった日本トップクラスのユーチューバーが専属契約しています。また弊社では、クリエイターのマネジメントにとどまらず、YouTubeで培った知見を元に企業のブランドに合った映像を制作して動画マーケティングコンサルティングを提供したり、インフルエンサーマーケティングを提供したりしています。また昨年からは、中国、韓国、台湾、香港などアジア圏のインフルエンサーを活用したインバウンドプロモーションサービスの提供も始めました。

起業の陰に孫 泰蔵 氏、HIKAKINとの出会いがあった

山岸 - 起業にあたっては、ソフトバンクグループの創始者として知られる孫 正義さんの弟で、投資家としてベンチャー支援を積極的に行っている孫 泰蔵さんとの出会いがとても衝撃的だったそうですが、その経緯をお聞かせください。

鎌田 - 僕は19歳から10年くらい光通信に在籍していたのですが、ソフトバンクがボーダフォン(Vodafone)を買収した時に「携帯ショップを出して行こう」という話になって、後半は携帯電話の販売をしていました。その過程で孫 泰蔵さんと知り合うことができました。

山岸 - なるほど。孫 泰蔵さんと会ったことで、起業にどんな影響を受けられたのでしょうか?

鎌田 - 僕自身は起業することはイメージしてなかったのですが、若い経営者がどんどん起業していく中で孫 泰蔵さんからも「起業したら」と言われて、状況的に促されたというのはありました。それまでは取り立ててやりたいこともなかったのですが、「起業してみてもいいかな」と思って、どんな会社がいいか考えてみることにしたんです。

山岸 - 実際に起業されたのは何年ですか?

鎌田 - 2013年です。

山岸 - まだ5年ほどですよね。HIKAKINさんとはYouTubeのビジネスの仕事仲間みたいな感じでしょうか。

鎌田 - HIKAKINとは光通信で1,000人くらい部下を抱えて携帯ショップをやっていた時に、イベントに呼んだのが出会ったきっかけですね。まだHIKAKINが売れる前でしたが、ヒューマン・ビート・ボックスをやってもらったんです。
その後、2013年の3月に久々にHIKAKINと仕事で会って、「今は何しているの」と聞いたら「ユーチューバーをやっている」と。当時はユーチューバーなんて何をしているのかよく知られていませんでしたから、僕も「怪しいね」って(笑)。でもちゃんと話を聞いてみたら「面白いかも」と思って。それで6月にはユーチューバーにレビューしてもらった商品を販売する、今でいうインフルエンサーマーケティングのような事業を行う「オンセール」という会社を作ったんです。これが「UUUM」に称号変更する前の会社です。

「困っているクリエイターを助けたい」

山岸 - 最初に立ち上げた会社での事業は、うまく回っていたのでしょうか。

鎌田 - ユーチューバーが紹介した商品は売れると聞いて、「ジャパネットたかた」のYouTube版のような会社を目指して3カ月やってみたのですが、実際には売れるものも売れないものもあって、いまいち手応えを感じることができませんでした。彼らにしてみれば再生回数を取りたいわけで、そこで物が売れても売れなくても仕事として色んな企業から話が来ていて、あまり関係がなかったんですね。

山岸 - 再生回数が大事というのはよく聞く話ですね。そこからマネジメント事業を始めるまでのいきさつはどのような?

鎌田 - ユーチューバーたちと仕事をしていく中で、彼らが個人で活動しているがゆえの色んな問題に直面していることが分かってきたんです。例えば、企業との商談の進め方が分からないとか、代理店などから「法人じゃないと契約できない」と言われてしまったというような。

山岸 - 個人だとそうした問題が出てきがちですよね。

鎌田 - そこで、僕なら光通信時代に総務も営業も経験してきましたし、困っているクリエイターたちに寄り添ってサポートしていくことができると考えたんです。でも「オンセール」という社名だとクリエイターを売っているような印象を与えてしまうので、社名を変えようと。それで何か良い社名がないか「うーむ」と考えていた時、「うーむっていいね」となってそれを会社名にしました。「UUUM」でUが3つなのは、「.com」のドメインが取れる社名にしたかったのですが、Uが1つではドメインが取れず、足していって3つ目でようやく取れたと(笑)。それで2013年10月に、社名を変えてユーチューバーのマネジメントを始めました。

山岸 - 社名にはそんな意味があったんですね(笑)!

企業理念は「セカイにコドモゴコロを」

山岸 - 御社の企業理念は「セカイにコドモゴコロを」というものですが、これはどのようにイメージされたのですか。

鎌田 - 社員が一定数を超えてくると社内の構成が社長を頂点にしたピラミッドのようになりますが、社長が1段飛ばし・2段飛ばしで部下と話をし始めてしまうと、間で飛ばされた中間層がダメになったりするわけです。でもベンチャーだと結局、社長がすべてで、言うことを聞かないといけない……という中で、経営理念をちゃんと掲げておけば企業全体の文化や方向性が定まってきます。とは言え、僕たちもそうですが世の中の会社って、「お金を稼ぎます」なんて経営理念はないじゃないですか。

山岸 - そうですね(笑)

鎌田 - それで「世の中に対して僕らが貢献できるところは何だろう」というところで、映像を作ったり、クリエイターが何かアウトプットしたりすることによって誰かに影響力を与えたいなと。もちろん子供向けに動画を作っているという意味ではなくて、大人が見ても“あの当時はワクワクしたよね”という、そういったことを思い出して欲しいという意味を込めた“コドモゴコロ”に、“セカイ(世界)”という言葉を加えてワールドワイドな表現をさせてもらっています。

山岸 - そうだったんですね。弊社も鎌田さんが話されたように、会社を作った時は理念などは定めていなかったのですが、人が増えて行く中で「そもそも何のために会社をやるか」と考えるようになり、「インターネット・マーケティングを通じて世界を繋げ、100年続くグローバルインターネット企業を創る」というミッションステートメントを掲げるようになりました。やっぱり企業理念って大切ですよね。

強みはユーチューバーをマネジメントしていること

山岸 - 御社の一番の強みはやはり、クリエイターをマネージするところにあるのでしょうか。クリエイターの数は業界トップだと思うのですが。

鎌田 - 強みが何に対してのものかというのはありますが、会社として秀でている部分で言うと、おっしゃる通り、プロでもアマチュアでもない“ユーチューバー”という人たちをマネジメントしているというところが最大の強みだと思います。

山岸 - プロでも一般の方というわけでもない、この市場が伸びると感じられたポイントはあるんですか?

鎌田 - 僕の場合、ビジネスの中で「これは市場がこうだからイケる」というようなことはあまり考えていないですね。どちらかと言うと「やってみて良かったら続けるし、ダメだったらピボットしていこう」みたいな考えなので。結局、2000年くらいにヤフーが出てきた時もそうですけれど、先行者メリットというのがあって、僕らも同じだと思うんです。例えば今「UUUM」を作れと言われても、すでに他の会社がやっているはずで……。僕らは何が良かったかと言うと、“最初にやった”ということがすべてだと思うんですよね。しかも全然違う事業内容で起業して、ダメだったからピボットしたわけで。ダメでもやり続ける人もいるんですよ。

山岸 - はいはい。

鎌田 - でも経営者なら、ある事業がダメだったからと言って会社を辞めるわけではなく、事業を変えればいいわけで。

山岸 - そうですよね。

鎌田 - 僕の場合は、会社を立ち上げた当初に動画に目を付けたという方向性は合っていたので、そこから延びしろがあったということだと思いますけどね。

上場は企業としてのスタートライン

山岸 - 半年ほど前に東証マザーズに新規上場されましたよね。おめでとうございます!

鎌田 - はい、去年(2017年)の8月末です。

山岸 - 会社を作ってから、いずれは上場したいという考えがありましたか?

鎌田 - うちも初期にはVC(ベンチャーキャピタル)が入っていましたから、上場する目的として「社会的信頼が欲しい」とか「資金調達したい」とかいった側面はありましたが、もうちょっと概念的なところで言うと、「ソフトバンクもトヨタも、ほかの色んな会社も、結局は上場しているよね」と。上場することがネガティブとかポジティブとかではなくて、世の中で会社をやっているのであれば上場は当たり前のスタートラインだと僕は思っているので、そういう意味ではそこにたどり着いたというだけなんです。

山岸 - 会社を作ってから5年と経たないうちに上場されたということで、大変なことも多かったと思いますが。

鎌田 - 審査はもちろん大変かもしれませんが、すごく大変だったかと言われると、皆上場している中で一定のルールの中で戦っているわけですから、それほどは。そこに行かずして勝ちたいとは思いませんし、だから「上場する気があったんですか」と言われれば、「会社が大きくなってくれば上場したと思います」と、そういう感じですね。

山岸 - ちょっと分かります、流れの中でこうなったという。

鎌田 - そう、「運転免許を取りますか」というようなものですよ。「よほど何かない限り、普通は取るでしょ」という。

山岸 - なるほどですね。では実際に上場してから変化を感じたことは何かありますか?

鎌田 - あまりないですね。会社を作ることと上場準備と事業成長が全部一緒に来ちゃっているので、その過程で楽ができているというか、結局やらなきゃいけないことを、「上場する準備をしているから一緒にやっちゃおう」みたいな。でも逆に、上場を遅らせたとして何か良いことがあったかというと、なかったと思います。そういう意味で上場は「会社を作ったらやらなければいけないこと」で、人事制度や就業規則を作るのと似ている気がします。でももし“上場させる”ということと“会社が成長していく”ということが別だと捉えると、大変かもしれません。

山岸 - 弊社も、将来的には上場を考えていかなければというのはあります。この考え方だとハードですかね?

鎌田 - 正直、上場するためにやろうとするとハードだと思います。毎回取材されるたびに言うのですが、では上場しなくてもいいかというと、やっぱりやらなきゃいけないんです。

山岸 - どっちみち(笑)。

鎌田 - ええ、やはり世の中的には。審査書類を作ったりするのは確かに面倒くさいかもしれないですけどね(笑)。

これまでに培ったノウハウの逆輸入が今後の課題

山岸 - このたび弊社で「UUUM」さんの海外向けサイトを作らせてもらいましたが、御社では今後、海外展開を積極的に進めていこうと考えているのでしょうか。

鎌田 - そもそも「UUUM」のビジネスは欧米から来ているので、MCNの権利を保有している会社はグローバル的にたくさんあって、色んな会社に買収されたりしています。また僕たちのような会社が映画を作ろうとしたり、「UGC」(User Generated Contents。ユーザーにより制作されたコンテンツ)から「PGC」(Professionally Generated Contents。プロにより制作されたコンテンツ)に変わってきたりしています。この「UGC」から「PGC」の動きは僕たちにもできるかもしれないし、動きが遅れているアジアへの進出を優先的に考えてもいます。日本は和食が無形文化遺産に登録されたりして、世界からはカルチャー的にもプラスに捉えられているので、嬉しいことに日本の動画の再生回数は多いんです。ですから「UUUM」がこれまでに得たノウハウを今後、どのように欧米に逆輸入していくかというのが次の課題だと思っています。映像にしても、ハリウッドでは興業100億円規模なのに、日本では10億、20億みたいな、そうしたひとつひとつの規模が違うので、単純に同じことをすれば良いというのではなく、僕たちだから得たノウハウで戦わなければならないと思うんです。例えば日本は事務所という独特な文化を持っていますが、海外では事務所は少なくて、エージェンシーとか代理人が多かったりする。

山岸 - 確かにそうですね。

鎌田 - 「YouTubeは個人でやれますよね」って言われることも多いですけど、何かあった時って個人では限界があって、法律的な事故があった時とか、炎上したりとかすると、個人ではやっぱり限界があるんです。

山岸 - 確かに。著作権とか難しそうですし、専門家でもないかぎり対処に困りますよね。

鎌田 - そうしたことも含めて日本の独特の文化の中で事務所として成立しているので、クリエイターとしては事務所は心地よい環境だと思っているんですけど、これを逆輸入した方が良いのか、向こうは向こうのやり方でやったほうが良いのか考えているところです。
結局、ネット上の動画はそもそも海外のものを勝手に見ることができるので、海外進出するからと言ってオフィスを現地に作る必要もないんですよね。日本の動画だって勝手に海外で再生されていますし、はじめしゃちょーの動画がイギリスのメディアで取り上げられこともありましたし。そういう意味では海外にも行きやすいだろうなというのはあります。

クリエイターの海外進出は「本人次第」

山岸 - 弊社の事業のメインは検索エンジンマーケティングなんですけど、その中で海外のクライアントから「日本のインフルエンサーを使って日本語で商品を紹介してほしい」というニーズもけっこうあるんです。そこでお聞きしたいのですが、例えば日本のクリエイターの人たちを海外に出すことについてはどのように思われますか?

鎌田 - それは「本人が行きたければ」というところじゃないですか。例えば日本で有名な芸能人が海外公演をしても、現地の人には知られていなくて……ということは多いと思いますが、それで良いなら行けば良いのだと思います。でも結局、「それなら日本で一番になる方が良い」と考えるクリエイターは多いと思いますが。

山岸 - なるほど。

鎌田 - ですから、「何のために海外に行くか」というのがありますよね。例えば「テレビに出たい」というユーチューバーもたくさんいますが、「出てみてどうだった?」と聞くと、「2回目・3回目は別にいいや」と言うわけです。費用対効果が見合わないし、そもそも個人がメディアになる時代、彼ら自身がすでにメディアだったりするので、テレビを含めて編集権すらない別のメディアに出るのはあまり……という感じなので。

山岸 - 自分で配信できますもんね。

鎌田 - そうです。だから1回経験してみて、その次にどうするかなんですよ、結局は。

クリエイターの研修を第一に!

山岸 - クリエイターさんに対する教育やガイドラインはどれくらい整備されているのでしょうか。

鎌田 - 最大級に力を入れています! 専属のユーチューバーについては1年に2回は全体研修をしますし、どんなに会わなくても月イチでマネジャーが細かい打ち合わせをしています。一番力を入れているのはリーガルリスクの回避についてで、やはり著作権まわりや原盤権については必ず研修しています。またレピュテーションリスク(風評リスク)についてもSNSの使い方などをしっかり研修で学んでもらっていますし、いつでも相談してもらえるような環境をしっかりと整えておくことが重要だと思っています。

山岸 - それならユーチューバーの皆さんも安心ですね。ちなみに所属するユーチューバーの皆さんから日々、たくさんの動画がYouTubeにアップさせていると思うんですけど、それらはすべてチェックしているんですか?

鎌田 - はい、毎月約3万本の動画が生まれていますが、アップされたら全部チェックしています。

動画というフォーマットの可能性をテストしていきたい

山岸 - YouTubeに関わっている方からすると、テレビというメディアはどんな位置づけなのでしょうか。将来的にはネット上の動画共有サービス、例えばYouTubeなどにとって代わっていくと思われますか。

鎌田 - テレビはテレビですから、弊社としては特にとって代わりたいということはありません。けれどネットで動画を見るユーザーは確実に増え続けていくでしょうね。

山岸 - なるほど。最後に、去年上場された「UUUM」さんですが、今後の展望やビジョンについて教えていただけますか。

鎌田 - 僕らのビジネス領域は動画、つまり映像なんですね。今は主に個人のユーチューバーが作った動画がほとんどですが、これから僕らがもっと企業として関われば、ドラマも映画も作れるでしょう。つまり動画というフォーマットはまだまだ変われるんです。と言っても今の時点でそれらを作りたいわけではないのですが、色んな可能性をテストしていきたいとは考えています。
また今後は新しいサービスも作っていかなければならないと思っていますが、あくまで基盤はクリエイターの皆さんです。動画は彼らの人生ですから、彼らからの要望を受け止めつつ、そこに寄り添ってサポートを強化していきたいですね。

山岸 - 今日の対談を通して、多くのユーチューバーの皆さんから「UUUM」が選ばれている理由がよく分かりました。弊社としても御社の今後の展開に注目していきたいと思います。本日はありがとうございました!