GLOBAL MARKETING INSIGHT

CEO対談
2018.3.6

PRの連鎖が起こせれば、どんなに小さな会社でも
世界中で認知してもらうことが可能です!

対談者

株式会社カーツメディアワークス
代表取締役・CEO
村上 崇 様

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“テレビPR”の発案者に聞く、マーケティングで勝つための実践的なPR法とは?

フリーのテレビマンがPRの世界に入るまで

山岸 - 今回は、「伝えよう、世界へ(Spread your story)」という理念の元、海外向けプレスリリース配信および海外向け広報事業を提供している「株式会社カーツメディアワークス」(以降、カーツメディアワークス)の代表取締役・CEO、村上さんにお話をお聞きしていきます。まず起業にいたるまでの経緯を簡単にお聞かせいただけますか。

村上 - 創業自体は2002年、25歳の時に「有限会社カーツ」という会社を立ち上げたのが最初で、「株式会社カーツメディアワークス」としては2010年に事業を開始しました。

山岸 - 弊社から最初にプレスリリース配信の相談をしたのは、「有限会社カーツ」の頃でしたね。

村上 - はい。その頃、私はテレビ局やテレビ番組の制作会社の社員ではなく、局に出向するいわゆるフリーのテレビマンで、情報番組や報道番組のディレクターをしていました。そんな中で、広報の人やPR会社の人たちがたくさんやってきて「これを特集してください」とか「あれを取り上げてください」とかネタを色々と持ち込んでくるのを見ていて、それがPRとの出合いでした。

山岸 - 当時は「情報プレゼンター とくダネ!」という番組でディレクターをされていたんですよね。

村上 - ええ。起業してからもテレビマンは続けていました。最初はPRにはまったく興味がなかったのですが、段々と「PRでどうやってお金が動くのだろう」と興味がわいてきて、局にたくさんやってくるPR会社の人たちに聞いていくと、「基本的にはお客さんからお金をいただいて、PR会社としてはオンエアにのせたりメディアに掲載したりしなければならないんですよ」と。それで「そんな仕事があるんだ」と思って調べてみると、「PR会社って自分が今までやってきたメディアの仕事を生かせる業界だな」と思うようになって。

山岸 - 現場で見ているうちにPRというサービスに興味を持たれたんですね。

村上 - はい。番組の制作業務ってどうしても、局からいただく予算の中でどれだけ節約して利益を残すかという発想になってしまいますし、自分1人でできることにも限りがあるんです。それで、「せっかく法人格があるなら、思い切ってPR会社にしよう」と。それでまずPRのやり方をイチから勉強して、テレビマンを辞めずに会社を設立し、同時にwebでプレスリリース配信のプラットフォームも作りました。それが「PRエンジン」です。

テレビマンを続けながら、かつてない“テレビPR”で起業!

山岸 - 村上さんと最初にお会いしたのは、弊社の前身である「Info Cubic LLC日本支社」でプレスリリースをお願いしたのがきっかけでしたよね。オフィスはまだマンションの1室で、1階の共用スペースで打ち合わせをしたりして……懐かしい!

村上 - はい、リリースは2、3本配信させてもらいました。当時はテレビマンを辞めた直後で、これから「PRエンジン」を売りまくるぞというタイミングだったんですよ。

山岸 - そうでしたか。じゃあ、ちょうど良かったですね。

村上 - そうなんですよ。ほかのPR配信サービスでプレスリリースを出すのはすごく高額だったので、1万円台で配信できるサービスにしようと思って始めたプラットフォームで。でもその売上だけでは食べていけないので、もう1つ、「日本で初めての“テレビPR”に特化したPR会社です」とうたったホームページを立ち上げたところ、立ち上げて1カ月もしないうちに大手広告代理店さんや大手リサイクルショップさんなどがホームページから「テレビに出せるんですか」と問い合わせをくれました。それでテレビPR事業をけっこう早く軌道に乗せることができたんです。

山岸 - “テレビPR”という、まだ聞きなれない言葉に魅力を感じたのでしょうね。

村上 - はい、“テレビCM”という言葉はありましたが、“テレビPR”という言葉はまだありませんでしたから。けれどテレビでオンエアされた実績に対する成功報酬なので、数字は安定しなくて。

山岸 - SEOの成果報酬モデルで「20位以下だったら報酬ゼロ」みたいな感じですね。

村上 - はい、「オンエアされなければ報酬ゼロ」という形で。僕がプロモートしてお客さんの企画書を作り、テレビ局に自分の友人のルートを辿って行くということをしていました。

山岸 - 自ら売り込みに行って。

村上 - そうです。マックスで1カ月の売上が600万円くらいいったことも。でもオンエアされやすいネタとされにくいネタがあって、売上が1万円という月もあったりして。それで「これでは会社として大きくすることはできないな」と思っていたら、たまたま「PRエンジン」を数百万円で売ることができたんです。それを結婚資金にしたという。

山岸 - あれっ、今の話の流れだと「それを資本金にして事業を拡大して……」みたいなことになったのかと(笑)。でも結婚式をちゃんと挙げないと、奥さんから色々言われちゃいますからね!

村上 - 妻の両親から、「彼はテレビマンか何か分からないけど、1人でやっていて大丈夫なの」と言われてしまって。それでもう半分のお金は、私が“テレビPR”を始めた当初からお客さんとして発注してくれていたPR会社に出資して、その会社で役員になり、代表の人と2人で本格的に“テレビPR”をやり始めたんです。

“テレビPR”と報道の連鎖が行列を生む

山岸 - webでの広告なら「○万円で○クリック」というような分かりやすいケースが多いですよね。でもPRってちょっと漠然としていて、企業によってはその価値を分かってもらうのが難しかったりしませんか。営業トークではどんな説明をされるんですか。

村上 - 例えば「PRしませんか」と営業しても、「広告ですか」と言われてしまったりして、なかなか理解してもらえないことが多いんです。

山岸 - 「やってみてもいいけど、どんな成果があるんですか」という質問も多そうですね。

村上 - 多いです。例えば某飲食店チェーンを展開している会社では、チラシやweb広告を出す場合のコンバージョンは「実際にお客さんが店舗に来て飲食すること」だと。営業の電話をかけて「“テレビPR”をしてみませんか」と話してみたところ、以前に何度かメディアに取材された体験があり、取材後はお客さんの来店数が伸びたという記憶があったために、「話を聞きますよ」ということでアポが取れて、発注してもらうことができたんです。

山岸 - うんうん。

村上 - その企業では、それまでにもチラシを配布したりweb広告をやってみたりしたものの、効果があまりなかったそうなんです。でも当社がテレビとwebでPRを実施したところ、かなり大きな成果を得ることができました。
例えば、飲食店の場合だと、国内外の面白ネタを取り上げるバズ系ニュースサイトの記者や番組ディレクターなどメディアの方を招いて試食会を実施し、リアルな感想を記事にしてもらうといったことを定期的に開催しました。記者が実際に体験したことを記事に書くことで信憑性が高まり、深い記事になります。しかもそのweb記事や新聞記事、雑誌記事を読んでくれたテレビ局の人たちが番組で取り上げてくれ、その放送された内容を見た別番組のディレクターから「うちでも放送したい」と新たな取材獲得が来たりと、報道って連鎖していくんですね。

山岸 - PRって、バズるととてつもなく大きな拡がりになりますよね。それは広告にはなかなかない現象ですね。

村上 - はい。月額で安くはない金額をいただいていますから、1カ月、2カ月とあまり反応がないと申し訳なく思うこともあるのですが、PRをしてから数カ月後に報道の連鎖が起き始めて、過去に体験したことがないような集客が出て来ることも珍しくないので、PRは飲食業界や店舗を持っているお客様には非常にマッチしていると思います。特に、テレビ映えする・メディア映えするといったところで、非常に分かりやすいマーケティング手法なんです。

4年の地道な配信網の構築を経て「Global PR Wire」始動!

山岸 - 日本企業を国内外にPRするサービスを展開してきた御社が、昨年(2017年)、海外メディア向けのプレスリリース配信サービス「Global PR Wire」(グローバルPRワイヤー)を立ち上げた経緯をお聞かせください。

村上 - 海外向けのプレスリリース配信って、やっぱり他社のサービスだとかなり高額なんですよね。そこで「あまりコストをかけずに配信できるサービスを自分たちで立ち上げよう」というのが立ち上げの大きな理由でしたね。私がサービスを作るきっかけはいつも、ベンチャー企業である私たちにも利用しやすいサービスというのが基準なんです。だから配信しやすい価格にしなければと思って、マイページ上でユーザーが自ら配信の設定をすることで価格を抑えた「Global PR Wire」を立ち上げました。

山岸 - 配信ネットワークはどのようにして用意したのですか?

村上 - 4年ほどかけて、地道にデータベースを作っていきました。世界中の有名なメディアのリスト化をアウトソーシングしたり、実際にメディアのデータベースを数百万円かけて買ったりもしましたね。また海外のインフルエンサーのデータベースにアクセスしたり、テック系の署名記事に記載されたライターのメールアドレスを集めたりもしました。

山岸 - 地道な努力を続けてデータベース化していったわけですね。

村上 - はい。そうして昨年の4月にまずβ版、同年8月から正式に稼働を始めて、すでに160社ほど登録していただいています。

山岸 - 海外進出をする際に、やっぱりプレスリリース配信やPRで企業やサービスを知ってもらうのって重要ですよね。中小企業も活用していますか。

村上 - 「Global PR Wire」はサイト上で原稿を入れたら言語を選ぶだけで配信できて、決済まですべてネットで完了しますので、地方の中小企業さんにも利用していただいていますね。

山岸 - どんな国や言語に対応しているのでしょうか。

村上 - 配信ネットワークは英語圏・中国語圏を中心に、フランス語圏やスペイン語圏にもあります。言語は翻訳料をいただければ英語と中国語以外にも、フランス語・スペイン語・ドイツ語などに対応しています。

山岸 - 多言語に翻訳してもらえるのは助かりますね。

メディアが食いつく情報に、企業規模は関係ない

山岸 - 日本企業が海外に向けて情報を出すとき、メディアに注目されやすい内容ってあるのでしょうか。

村上 - 職種などによっても変わるんですけど、日本らしいものに興味を持ってもらえるようです。例えば、ある企業が外国人を対象とした「寿司大学」をオープンしたというネタを「Global PR Wire」で配信したら、多くの海外メディアから反響がありました。逆に日本では誰も知っているような企業が「ニュース性のないただの企業の宣伝」のような配信をしたこともありますがまったく掲載はされませんでした。

山岸 - 要するに、メディアが食いつくかどうかは企業規模ではなく、ネタの内容次第なんですね。逆に言うと、中小企業でもPRを活用すれば海外メディアに大きな影響を与えられるということでしょうか。

村上 - そうですね。ゲームをPRするという依頼も多くて、プレスリリースを出せばゲーム関連のメディアがある程度は反応してくれたりするのですけど、これまでに最もたくさん世界中でメディア掲載を獲得できたのは、「ドリープス」というスマホゲームだったんです。これは実は2人だけで立ち上げた小さな会社が初めて作ったゲームで、コンセプトは「寝ていてもレベルアップしていくRPG」というものでした。

山岸 - そんなゲームが(笑)。

村上 - ちょうど「Global PR Wire」のローンチの時期だったこともあって、アメリカだけでなく世界中に配信したところ、アメリカや中国だけでなくポルトガルやドイツなど色んな国のメディアがレビューを書いてくれたんです。世界的な「ギズモード」「Kotaku」など、大きなメディアにも掲載されました。

山岸 - 2人で作った会社でも世界的に認知してもらうことができるという、PRならではの好例ですね。

村上 - これをインストール型の広告でCPIを見てやっていこうとすると、なかなか難しいでしょうね。大きなメディアに取り上げられることの影響力が感じられたケースでした。

海外イベントの開催成功は文化を考慮したコンタクトが必須

山岸 - ところで御社では、海外でのPRイベントなどの相談もできるんですか?

村上 - もちろんです。世界中に向けたプレスリリース配信以外にも、海外におけるPRイベントをセッティングする、海外メディアに電話で連絡を取って訪問するなど、日本からコンタクトできるものならできる限り引き受けさせてもらっています。
ただし海外では、イベントのセッティングをする際に独特の文化がある場合も多々あります。例えば東南アジアでは、PRの相談をするとまず記者会見の提案から入ってくるんですね。「記者会見をしないとメディアに掲載されないよ」と。

山岸 - そうなんですか。

村上 - これはベトナムやマレーシア、タイなどでも言われることなんです。アメリカでは、イベント実施のような重たい施策ではなく、メールやTwitterのDM、ビジネス向けチャット「スラック」(Slack)などオンラインで「こんなサービスがあるんだけど」「この企業の新しいサービスが出たんだけど興味ない?」みたいなライトなやりとりをしてアプローチします。

山岸 - そうなんですね。でも日本企業からすると、海外企業にコンタクトをしてもらえるのは助かりますね。なかなか自社内ではノウハウがなくてできないですし、アウトソーシングでやってもらうにしても、ある程度PRのことを分かっていないと何をどう話していくかが分からないですしね。

村上 - そうですね。ちなみに弊社では海外メディアとコミュニケーションする際、メールや電話でコンタクトしますが、コンタクトしてから半年後くらいに「メディアに掲載する準備ができました」と連絡が来ることもありました。ですからやはり、1件ずつ地道にコンタクトをしておくことは重要なんですね。

「グロマ!」は、海外デジタルマーケティング×海外広報・PRの情報満載

山岸 - そんな、世界に向けたPRサービスを展開している「カーツメディアワークス」さんと弊社とで、今年(2018年)1月から一緒に「グロマ!」というグローバルマーケティングに特化した情報サイトを立ち上げたんですよね。
海外向けのデジタルマーケティングやPRについて知ることができる情報サイトって、実は日本国内にはほとんどないんです。そのため、日本企業の海外展開を成功させる手段の1つとして重要なweb広告とPRについて学べるサイトという位置付けです。

村上 - 「コンテンツマーケティングは大切だよね」という話から始まって、「どこかに寄稿していこうか」、「それなら、2社で一緒に作っていこう」という感じで、トントン拍子でローンチまで進みましたよね。

山岸 - 私から見ると広告とPRはまったく別のモノで、「PRって効果が数字で測れないし、絶大な効果が出ることもあれば出ないこともある」と感じています。でも事業を成功させるためには、その両方をうまくやっていく必要がある。だからこそ、「グロマ!」という1つのメディアの中で広告とPRの情報を一緒に発信していこうと。また「グロマ!」によって、業界を教育していくことも大切だと思っていまます。

村上 - すでにサイトには、マーケティングやPRに役立つ記事が多数投稿されてきていますよね。

山岸 - そうですね。これからも実践的で役立つ記事が定期的に投稿されていく予定ですし、ぜひ期待していただきたいです。

村上 - やはり海外に出るのに一番のネックは「分からない」ということで、それが踏み出すための障害になっていますから、海外進出をしたい企業の方やマーケターの皆さんには「グロマ!」の良質な記事を読むことで不安を解消して、ぜひ一歩を踏み出してほしいですね。

山岸 - 不安が大きいのは仕方がないですが、案外、一歩踏み出すことが一番の解決法だったりするんですよね。

村上 - その通りだと思います。

山岸 - 「グロマ!」は、きっとそうした不安を取り除くための起爆剤的なものになるはずです。私も今から、サイトの成長が楽しみです!

メディアがほしいのは「面白い」「役に立つ」情報

山岸 - 最後に、まだ海外向けにPRをしたことがない企業のために、効果的なプレスリリースの書き方をぜひ教えてください!

村上 - プレスリリースで一番大切なのは、メディアで働く人たちに面白いと感じてもらえる文章を書くことなんです。内容はタイトルとリード文と本文で書けば大枠はOKですが、自分たちが言いたいことだけを書いてもメディアはあまり興味を持ってくれません。その内容を読むことで「たくさんの人の役に立つか」、「たくさんの人が笑ったり驚いたりするか」という観点で書くことが重要ですね。
今は翻訳のコストもあまりかかりませんし、配信も昔のように数10万円かかるというようなことはなくなりましたから、海外に進出する前や何かコストをかけてやっていこうとする前に、まずプレスリリース配信を検討してみてください。それでメディアが反応してくれたら、そこにニーズがあるということですので。

山岸 - プレスリリースを配信することで、コストをかけずにマーケットリサーチをすることができるわけですね。

村上 - 反応を見てから実際に動くことで、コストも労力も抑えることができるはずです。これはアマゾンも昔、やっていた手法です。

山岸 - リリースマーケティングですよね。

村上 - はい。プレスリリースを出してみて、メディアに掲載されなかったらローンチしない、されたらローンチするというフェーズがあったそうです。

山岸 - そう考えると、どんな会社でもネタはあるんですよね。「うちは外にPRできることなんかないよ」という人がいますが、そもそもサービスや商品は外に向けて売っているわけなので、工夫すれば必ず出せるものがある。それに、「自分の会社は社会的にどんな意味があるのか」と考えたとき、訴えるものが何もない会社って、存在価値がないなって思うので。そのあたりは村上さんのところのようにPRを専門にしている会社にコンサルしてもらって、訴求点を一緒に探してもらうのもいいですよね。

村上 - そうですね!

山岸 - 従来ならばプレスリリースも、配信会社の担当者と会って書類を書いてという過程が必要でしたけど、今はこうしてネット上でできます。それに、海外事業展開が加速する中、現在ではプレスリリースは重要なファクターとなっているので、どんどん活用して行くべきだと思います。村上さん、本日はありがとうございました!