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2019年07月31日

B2B購買「6つのプロセス」
~複雑化するB2Bマーケをバイヤーイネーブルメントで整理しよう~

バイヤーイネーブルメントが導く新しいB2Bマーケティング?

最近では、日本においてもマーケティングの重要性が説かれることが増えてきましたが、世界では最新のマーケティング戦略により多くの企業が成功を収め、経営者にとって、無視することができない重要項目となっています。マーケティングは、時代の流れによって大きく変化し、進化していくもので、常に新しい情報に目を光らせておく必要があります。本稿では、世界をリードするリサーチ&アドバイザリ企業のGartnerが2018年に報告した『Win More B2B Sales Deals』を元に、今後世界で注目されるであろう、バイヤーイネーブルメントが導く新しいB2Bマーケティングについて紹介します。

世界における「B2Bマーケティング」の今

多くの企業がB2Bマーケティングを開始し、B2Bに特化した企業も出現するなど、現代の主流ともいえるB2Bマーケティングですが、最近多くのバイヤーたちから「B2Bは効果的だが非常に複雑である」という声が聞かれます。

Gartmerが行った調査では、企業のB2Bバイヤーは購買活動にかける時間のうち、45%もの時間(27%:オンライン、18%:オフライン)を個人での調査活動に使用し、売り手企業とのコミュニケーションに使っている時間は17%のみに過ぎないとの結果が明らかになりました。さらにバイヤーが複数の仕入先を比較している場合、各サプライヤーとの間で費やされる時間は5~6%に過ぎません。現在のデジタル化社会においては、バイヤーはオンライン上で多くの商品情報を独自に検索し、サプライヤーによって提供される商品と常に比較検討しています。以前は、安価な商品購入に加え、付加サービスを受けられるB2Bマーケティングに注目が集まりましたが、その構図は崩れ始めています。ではなぜこのような現象が起きているのでしょうか。これには、上述したB2Bマーケティングの複雑さが関係しているようです。


https://www.gartner.com/en/sales/insights/win-more-b2b-sales-deals

B2B購買プロセスの複雑さ

B2Bマーケティングの「複雑さ問題」は、サプライヤー側からは全く聞かれません。そこでGartmerは、バイヤーを対象にB2Bの複雑さの原因を調査したところ、一番の理由は、多くのステークホルダーが関係するようになったことによって発生した、購買プロセスの過程にあることがわかりました。商品購入を決定するまでの購買プロセスにおいて、現在は6人から10人のステークホルダーが関係しており、それぞれが独自の情報を保持しその情報を元に検討するため、ステークホルダー同士のすり合わせが非常に複雑になっているというのです。実際、77%のバイヤーが、B2Bでの商品購入が非常に複雑で難しいものとなったと感じているとのこと。その一方で、まとまった売上が期待でき、長期的な関係が築けるB2Bマーケティングは、サプライヤーにとっては今後も継続したいマーケティング戦略です。Gartmerは、複雑化しているB2B購買プロセスをより詳細に調査するため、主要バイヤーたちにインタビューを実施したところ、B2B購買プロセスにおいて、6つのプロセスが存在することが明らかとなりました。

・課題の特定(Problem identification)
・ソリューションの調査(Solution exploration)
・要件の構築(Requirements building)
・仕入先の選択(Supplier selection)
・検証(Validation)
・合意形成(Consensus creation)


https://www.gartner.com/en/sales/insights/win-more-b2b-sales-deals

上記の図は、バイヤーのB2B購買プロセスをシンプルに示したものです。バイヤーたちによると、B2B購買プロセスを特に複雑化させているものは、図中に青色で示された「検証」「合意形成」の2つであるとのことです。

実際には、B2B購買プロセスは、上記の図のようにシンプルにはいかず、多くのステークホルダーや意思決定者によって何度もの討議が行われ、下記の図のようになります。商品購入までに、非常に多くのプロセスが存在していることがわかります。バイヤーがB2B購買プロセスが複雑と言うのも納得できます。


https://www.gartner.com/en/sales/insights/win-more-b2b-sales-deals

 

B2B購買プロセスの複雑さを解消する「バイヤーイネーブルメント」

Gartnerは、この状況を打破するために、B2Bマーケティングの主役を「人」から「情報」に移すべきだと提案しています。

B2Bマーケティングの特徴として、商品情報を営業担当者、つまり人が所有していることがあげられます。B2Bマーケティングにおいては、担当者間の関係性が成功の鍵の1つとされていましたが、現在そして今後、企業のバイヤーから求められるのは、営業担当者の人間性ではなく、普遍的価値のある「情報」であるということに着目すべきだとGartnerは言います。「情報」は、バイヤーがそれぞれのプロセスを完了させるのに間違いなく役立ちます。なぜなら情報は、時間と場所を選ばず利用可能で一貫性があります。B2B購買プロセスの複雑さを克服するためには、「情報」の充実を図ることが必要であるとGartnerは主張します。

そこでGartnerは、バイヤーがB2B購買プロセスをより容易に完了できるように、「バイヤーイネーブルメント(buyer enablement)」という独自の用語を作りました。バイヤーがB2B購買プロセスの過程において、次のプロセスに進むことをサポートするための役に立つ知識や手段を集約した情報のプロビジョニングです。「バイヤーイネーブルメント」は、次の2つのカテゴリに分類されます。

・Prescriptive Advice

「Prescriptive Advice」は主に、購買プロセスの6つの過程を、バイヤーが少しでも容易にクリアしていくのをサポートする情報を集約したものです。

・Practical Support

「Practical Support」は、バイヤーが「Prescriptive Advice」に従う際に実際に使用するツールです。

では実際には、どのような類の情報が必要となるのでしょうか。Gartnerは、バイヤーイネーブルメントにおいて提供するべき情報の内容についても解説しています。

①顧客へのデータ分析機能提供
②各購買活動に対する顧客のコーチング
③現状のパフォーマンスの評価と、顧客にとって必要なオプションの選定・特定
④顧客社内のステークホルダーと共有できる土台の提供
⑤顧客が知り得ることの困難な情報を駆使した他社比較
⑥顧客環境下でのソリューションの模擬実験の実施、機能性の証明、または導入事例など
⑦顧客の入力内容に応じた具体的な購買タスクの選択肢の提供

これらを事前に準備しておくことで、バイヤーの購買プロセスの完了が容易になります。

あるマーケティング・テクノロジー企業は、顧客が自社製品の情報を容易に構築およびカスタマイズできるよう「バイヤーイネーブルメント」を準備しました。これにより、バイヤー側からは、「合意形成」のステップにおいて大きな進歩がみられたとの報告があったそうです。


https://www.gartner.com/en/sales/insights/win-more-b2b-sales-deals

これまでの人が主体となっていたB2Bマーケティングでは、バイヤーおよびサプライヤー個人の能力が大きく関係していましたが、「バイヤーイネーブルメント」を効果的に活用することで、個人の能力に左右されることなく、しかも揺るぎのない、普遍的な情報を得ることが可能になります。その結果、複雑な購買プロセスの進み具合が改善されます。

Gartnerは、経験豊富で様々な情報を所有した「優秀な情報権威者」と、経験も専門知識も豊富ではないが適切な「バイヤーイネーブルメント」を所有した「情報コネクタ」では、どちらの価値が高いのかを調査を行いました。その結果、「情報権威者」では購入の容易さはわずか10%の増加に留まりましたが、「情報コネクタ」では40%も増加したというデータが出ています。

Gartnerは、今後のB2Bマーケティングの鍵は、情報だと強く主張します。これまでの人主体であったB2Bマーケティングを情報主体にし、「バイヤーイネーブルメント」の活用をサポートする情報コネクタの存在が重要になっていくでしょう。

まとめ

いかがでしたか。今後のB2Bマーケティングの鍵となるであろう「バイヤーイネーブルメント」の考えは、日本ではまだあまり知られていませんが、今後世界において注目されるであろう考え方の1つです。とくにB2Bマーケティングに関わる企業にとっては、押さえておくべき内容となります。顧客の購買活動をいかにシンプルに、そしてスムーズに進められるように支援するかどうかが、これからのB2Bマーケティングの大きなキーとなっていきそうです

B2Bビジネスを展開する企業が、WEB上での顧客の購買プロセスを円滑に進めてもらうためのウェブサイトは必須ともいえます。とりわけ海外ビジネスを推進する企業にとって、物理的に顧客と接触できない分ウェブサイトは大きな役割を果たします。「24時間、365日海外営業活動をしてくれる」ような英語ウェブサイトの制作は是非インフォキュービック・ジャパンにお任せください。

英語サイト制作バナー

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。