GLOBAL MARKETING INSIGHT

CEO対談
2018.12.06

日本の「広報」の手法は、世界では特殊なケースになることも。
その国に合った効果的なコミュニケーションを活かして、
日系企業の世界進出を強力に支援します!

対談者

株式会社ベクトル(ベクトルグループ)
海外事業本部 事業本部長
羽生 茂佳 様

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PR×マーケティングを通じたグローバルコミュニケーションを通じて良好な関係性を築き、日系企業を応援したい

中国で知り合った「ベクトル」の取締役に誘われ、2015年に入社

山岸 - 今回は、「株式会社ベクトル」の海外事業本部で活躍されている、羽生さんにお話を伺っていきます。ベクトルに入社する前は何をされていたのですか?

羽生 - はい。大学院を卒業した後、日本を代表するPR会社である某社にイレギュラーな形で入社しまして。そこで5年ほど国内のPRを担当してから、中国に渡ってPRの仕事をして、2015年に帰国しました。

山岸 - ベクトルさんにはいつから?

羽生 - 2015年にジョインさせていただきました。弊社はアジアに特化しているわけですが、最初は中華圏を担当させていただいて、それからASEANを見ることに。

山岸 - 入社する前から中国を担当することが決まっていたのですか?

羽生 - 入社するにあたって職種は決まっていなかったのですが、現副社長の長谷川と中国で知り合いになり、「中国から帰ります」と申し上げたところ、「いつうちに来るの?」という話になりまして。ですから、選択肢があるようでなかったと言いますか(笑)。

山岸 - そんな経緯があったのですね(笑)。それで現在は、海外向けのPR活動を専門にされているのですね。

羽生 - はい。

本来のPRは、広報よりも双方向性が強いもの

山岸 - PRというと、一般的には分かっているようで分からないという印象があるのですが、具体的にはどういったものなのでしょうか。

羽生 - 本来のPRは、厳密には「パブリック・リレーションズ」(Public Relations)の頭文字で、端的に説明すると、海外事業であれば「その国の人たちとの関係性を作りましょう」というのが元々の意味合いです。

山岸 - はい。

羽生 - PRの日本語訳としての「広報」の意味は広辞苑で引くと「広く知らせること」となります。よく国や官庁、自治体でも使われますが、これはどちらかというと一方的なコミュニケーション活動とも受け取れます。ところがPRというと、「組織と社会あるいは公衆(パブリック)とのよい関係性を作ること」、つまり双方向的なイメージになります。ちなみに「広報」という言葉は中国では使われず、「公共関係」という中国語が当てられます。

山岸 - 中国も日本と同じ漢字文化ですが、「広報」という言葉は使わないんですね。

羽生 - はい。日本では「PR=広報」と思われがちですが、中国ではちょっと違う概念になります。

山岸 - なるほど。

羽生 - 本当のPRが意味するところは、弊社は企業がクライアントなので企業を例にしますと、企業には各方面にステークホルダーがいらっしゃいます。その方たちとコミュニケーションを取っていくのが仕事になってきます。ですから弊社の事業としますと、IRもコミュニケーション事業の1つとしてやっておりますし、もちろんメディア対応ですとか、マーケティングやインフルエンサーとのリレーションを作るということもやっています。

日本で「広報」の重要性が正しく広まらない事情

山岸 - 弊社「インフォキュービック・ジャパン」はデジタルマーケティングが主体ですので、「お問い合わせ数○件を目標にしましょう」といった形で数字を成果の目安にすることができますが、PRの場合は最終的な目標が「良好な関係性づくり」となると、その重要性を説明することはとても難しそうですよね。

羽生 - そうですね。「パブリック・リレーションズ」はもともと欧米で発達していったものです。ですから今も市場規の1番はアメリカ。そのアメリカでは、国内にたくさんの人種がいて言語も文化もそれぞれ異なる中で、「どうやって自分たち・自社のプレゼンスを高めて伝えていくか」というところでPRが発達してきたわけです。それが日本では、地方によって方言などの差はあるとはいえ言語は1つで、似たような文化を持つ人たちが暮らしています。ですからいざ「PRをやりましょう」となった時も、マスメディアを使えばおおむね何とかなります。例えばテレビに1局出せば、日本中に広く情報を伝えることができますし、もちろん言語も日本語だけで大丈夫。そうしたことがあって、PRの重要性がなかなか正しく広まっていないのだと思います。

山岸 - それはあるでしょうね。

海外向けPRを考えている日系企業は、着実に増えている

山岸 - 海外に進出している日系企業は増えていますが、海外向けのPRを考えなければいけないと感じている企業も増えてきている感触はありますか?

羽生 - はい。やはりグローバル企業を筆頭に、お問い合わせをいただく企業は着実に増えてきていますね。以前ですと中華圏向けのPRが多かったのですが、近年では年間契約でクライアントのさまざまなPRの要望にお応えする「リテナーPR契約」で、ASEAN各国をまたいでPRするお仕事もたくさんいただいています。

山岸 - やっぱり、PRを重要だと考える企業は増えてきているのですね。

羽生 - はい。PRが発達した欧米の企業であれば、海外に進出する時、弁護士事務所を見つけるのと同時にグローバルな契約を結ぶことができる「PRコンサルティングファーム」を見つけるそうです。

山岸 - そうなのですか。

羽生 - それで海外進出をした時にも、自国で使っているのと同じPR会社に頼めるというわけです。

山岸 - なるほど。弊社が手掛けている「デジタルマーケティング」って、「デジタル」も「マーケティング」もなんとなく聞きなれた言葉なので意外ととっつきやすくて、モノを売ろうと考えた時にPRよりも先に「デジタルマーケティングをやろう」という人は多いような気がします。でも、本当は順序が逆かなとも考えるときがあります。そもそもその商品を知らなければ買えませんから、販促する前にPRすることはとても大事だと思うのです。

羽生 - それは山岸さんがおっしゃる通りだと思います。

山岸 - 実際にはPRというか、認知ですよね。知ってもらってから刈り取るというところが結構大事。本来はそれこそが、あるべき姿かなと。

羽生 - そうですね。そしてしっかりと現地との関係性を作るためには、やっぱり現地に行って、実際に現地の事情を知ることが大切。そのために私達は、お客様の代わりとなって日々、海外で情報収集に努めています。

日本の「広報」の手法や考え方は、かなり特殊なもの

山岸 - 日本と比較して、海外ではPRの手法や考え方に違うところはありますか?

羽生 - 日本と海外が違うというより、日本はかなり特殊だと感じています。

山岸 - 例えばどんなところが特殊なのですか?

羽生 - そもそもPRは、どの分野まで取り込むかで市場規模が異なるため正確な比較はできないのですが1番がアメリカ、日本はそのずっと後。中国はおそらく日本の3倍以上はあると考えられます。つまり、市場規模からいっても、日本のやり方がスタンダードではないわけです。

山岸 - なるほど。

羽生 - 海外に出ると、その国のジャーナリズムの発達度合いにともなってPRの発達度合いも異なってくる、と感じます。中国やベトナムなどの共産圏では、ジャーナリズムはなかなか発達しづらいですよね。日本は共産圏とは違って記者がきちんと取材をして記事を書いています。そういう意味では、ジャーナリズムが浸透しているとは思います。

山岸 - はい。

羽生 - アジアの国によっては、文章を“コピペ”するだけで記事として成立するようなプレスリリースが喜ばれたりします。つまりリリース1つをとっても、国や地域ごとに作り方が違うのです。

山岸 - そうなると、「デジタルマーケティング」もそうですが、PRもやっぱりその国の事情を分かっていないとサービスを提供するのは難しいですね。

羽生 - はい。それにその国の言葉が話せるからといって、翻訳すればいいというものでもありませんよね。

山岸 - それはすごく分かります。弊社でもよく、お客様から「広告文って翻訳でしょ?」と言われるのですが、実はそうではない。

羽生 - そう思います。

B2Cはマーケティング寄り、B2Bはプロモーション寄りのPRが多い

山岸 - 御社に相談に来るのはどんな業種の企業様が多いのでしょうか。またPRにもB2BやB2Cなどあると思いますが、どちらが多いですか?

羽生 - ご相談は多種多様な企業様からいただきますが、やっぱり今、海外でモノを売りたい企業様はB2Cが多いですね。それともう1つ、インバウンドという流れがあります。PRはマーケティングのひとつと捉えられますので、もちろんパブリシティもそうですが、特に訪日中国人客に大きな効果を発揮するKOL(Key Opinion Leader)マーケティングなどのお仕事をいただくことが多いです。

山岸 - なるほど。

羽生 - また、本当の意味でのリスクやクライシス対応を含めた広報という意味合いになると、どちらかと言えばB2Bの企業様が多くなっています。

山岸 - それではB2Cだとプロモーション寄り、B2Bだと広報寄りということでしょうか。

羽生 - そうなりますね。

山岸 - 実際に企業様から広報の相談をいただくときって、海外での広報について分かっている方はどの程度いらっしゃるのでしょうか。

羽生 - そこは、まだまだこれからというところですね。ご相談も「これからPRしたい」というタイミングが多いですし。以前から世界で戦っている自動車メーカーさんなどは、しっかりと海外向けPRをされていますが、欧米企業とくらべ日系企業様が海外向けに積極的にPRしているという例はあまり聞きません。

山岸 - お客様の層も、今の段階では比較的、企業規模が大きいのでしょうか。

羽生 - そうですね。ただプロモーションという意味では、色んな規模のお客様からご相談をいただいています。

海外マーケティング・プロモーションに近いPRの依頼が多い

山岸 - それでは、プロモーションと広報とでは、海外事業本部全体としてはどちらの方が割合としては多いのでしょうか。

羽生 - 広報と比較すると、インバウンドも含めたプロモーション的な話のほうが圧倒的に多いですね。

山岸 - ちなみにプロモーションというと、御社では具体的にどんなサービスを提供されているのでしょうか。

羽生 - プロモーションに関しては「現地でいいモノを広めたい」というもともとの発想がありますので、その国の現地メディアを呼んだり、KOLを活用したプロモーションをしたり。またインバウンドなら、例えば日本の自治体がアジアのある国で情報を広めたいというケースであれば、その国で広めるのに適したメディアを探して現地で広めていきます。

山岸 - うーん、広報とプロモーション、まだ違いがよく理解できていないかも知れません。

羽生 - どちらもやっている仕事の内容的にはそれほど違いはないのですが、ニーズとして「きちんとしたメディアリレーションを作り、定期的に情報配信をしていきましょう」という、いわゆる「リテナーPR契約」になると、けっこう広報寄りの活動になってきます。ですので「リテナーPR契約」の中で「KOLを活用して色んな事をやりましょう」ということはほとんどなく、KOLを活用するなら「春節の前に色々と仕掛けたい」とか、そんなスポット的な活動が多いですね。

現地のニーズを汲み上げずにPRを展開することによる「コンフリクト」の危険性

山岸 - 実際、色んな国でPRをご支援されていると思いますが、「こんなことを仕掛けたらこの国で刺さった」といった成功例についてお話しいただければ。

羽生 - 成功例もそうですが、実は失敗例も同じ要因が共通して関係していると考えてまして……。

山岸 - もちろん、失敗例でも結構です。私は海外進出の成功の秘訣って、失敗例をいかにつぶし、継続的に成功していくかということだと思っていますので。「日本では成功することが多いけれど、海外ではなかなかうまくいかない」というものもぜひ知りたいです。

羽生 - 「上手くいきにくい」という例ですと、「日本でこれをやっているから、同じことを海外でもやりたい」という場合は、成功しにくいです。また「これを海外でやって」と、現地のニーズなどを汲み上げずにそのまま展開してしまうと、コンフリクトするといいますか、やれることはやれますけれど、現地の人たちにそれが刺さるかどうかは難しいですね。

山岸 - ああ、マーケティング施策でもよくあります。

羽生 - 業務として対応はさせて頂きますが、うまくいくかというと別の話になりますね。よく遭遇するのですが。

山岸 - そこは割り切って、その国の文化を知っているプロに任せたほうがいいですよね。色んなアイデアも出してもらえるでしょうし。

羽生 - 方向性とKPIだけいただいて、その間のプロセスややり方、アウトプットに関しては現地目線を入れて改めて協議させてください、というところですね。

山岸 - それがお互いにベストな気がします。

「海外PR」と「海外デジタルマーケティング」がタッグを組めば、日系企業の海外デジタル施策は盤石に

山岸 - 前回お会いした時はベクトルさんとインフォキュービック・ジャパンとでセミナーを共催させていただき、誠にありがとうございました。今後も末永くお付き合いさせていただきたいと思っているのですが、御社が弊社と協業することによるメリットや、意気込みのようなところを少しお伺いできますか?

羽生 - まず大前提として、ベクトルグループの事業の主軸は御存じの通りPRですので、デジタルマーケティングを中心に手掛ける御社との棲み分けはできていると思っております。またPRにウェブ広告は必須の分野であり、依頼があれば引き受けはしますが、やはり専門ではありませんので、インフォキュービック・ジャパンさんにご協力をお願いすることがあると思います。また海外で動画の撮影が必要なときや、海外でのテストマーケティングなどについても、お客様のご要望を伺う中で「広告を出したい」ということがあれば、ぜひインフォキュービック・ジャパンさんのお力をお借りできればと考えております。

山岸 - それはありがたいです。

羽生 - また逆に、御社のクライアントが広告を出す前後で現地のイベントが必要になれば、弊社も対応させていただきます。そこにインフルエンサーを呼ぶといったお手伝いもできますよ。

山岸 - そうしたケースも、これからたくさんありそうですね。私は常々、「海外展開は一社だけではできない」と思っておりますので、まずは弊社と御社が協業・コラボレーションという形で日系企業様の海外進出をご支援していきたいと思っています。

羽生 - そうですね。

山岸 - 「海外PR」と「海外デジタルマーケティング」がタッグを組んだら、盤石というか最強になるんではないかと思っています。これから2社間で、事業を補完し合っていければ嬉しい限りです。

アジアNo.1を目指して――日系企業への貢献が、日本経済への貢献に

山岸 - 最後になりますが、御社では今後どのような展開を考えているのか、教えていただけますか。

羽生 - ベクトルグループとしては、「いいモノを世の中に広め、人々を幸せに」をコーポレートメッセージとして、アジアNo.1を目指し、PR事業の質・量をより一層拡充させていくことで更に成長していきたいと思っております。具体的には、アジアの各拠点に日本人が駐在し、現地での広報からプロモーションまでを網羅した「日本のコミュニケーションインフラ」としての責務を自覚し、海外でモノを売っていかなければならないこの時代に日系企業様を力強くサポートしていきたいというのが、代表をはじめ、社員皆の願いです。またこうした日系企業への貢献が、ひいては日本経済への貢献につながっていると考えております。

山岸 - 私も会社を経営していく中で、「私たちがやらなければ、誰が日系企業を海外に出すんだ」という気概を常に持っています。海外で戦う日系企業を支援する企業同士、これからもぜひ良いお付き合いをお願いします。
羽生さん、本日はありがとうございました。