GLOBAL MARKETING INSIGHT

CEO対談
2017.3.10

最低限のコミットは、現地に行くこと。
目標を持ち、半年くらいは試行錯誤を

対談者

百度(バイドゥ)株式会社 日本法人
国際事業本部 本部長
髙橋 大介 様

  • SHARE
  • facebook
  • twitter

中国検索シェアNo.1「百度」(バイドゥ)に 中国での成功のヒントを探る

中国の検索シェア圧倒的No.1!「百度」(バイドゥ)

山岸 - 今回は、中国で高い検索シェアを誇る「百度」の国際事業本部 本部長・高橋さんに、これから中国進出を考える企業の皆さんに役立つ話をお聞きしていきたいと思っています。最初に、「百度」についてお聞かせいただけますか。

高橋 - 「百度」は2000年に中国で設立し、中国企業としてグローバル化を進めてきました。2006年にできた日本法人は中国以外にできた最初の支店で、現在はほかにもタイやインドネシアといったBRICSを中心に海外展開しています。

山岸 - 日本が最初だったんですか、それは知らない人も多いでしょうね。

高橋 - というより、「百度」の支店が中国以外にあるということ自体が知られていないかもしれないです。日本は中国と距離が近いだけでなく、観光や経済、貿易も盛んですし、また日本国内での中国人居住者も60万人ほどいますので、そうした人の流れに関連付けてビジネスを展開しています。中国人が日本に観光に来る際の受け入れや、日本から中国に対するアプローチとしては工業系の貿易などですね。
またここ1年くらいは、越境ECで日本にいながら海外もしくは中国を中心に物を売っていこうという流れも出てきていますので、そうしたビジネスをしている企業をはじめとしたユーザーに対して、中国の検索をベースにしたサービスを展開しています。

中国国内のオンライン旅行予約の5~6割を発券

山岸 - 「百度」と言えば、リスティング広告を出稿している企業も多いと思いますが、それ以外のサービスはどのようなものがありますか。

高橋 - 「百度」では現在、検索のほかに、特にトラベルとO2O(オンライン・ツー・オフライン)に力を入れています。まず「百度旅行」という、「Yahoo!トラベル」のような旅行ポータルサイトの運営を展開しています。これは自社プロダクトですね。それ以外にも、2005年に「Ctrip」(Cトリップ)という中国最大のOTA(オンライントラベルエージェンシー)の筆頭株主になりまして、オンライントラベルでの予約事業もグループでやっています。こちらは「楽天トラベル」や「じゃらん」のようなものですね。ほかにも、旅行のメタサーチ「Qunar.com」(チューナール)というのがありまして、これは「価格.com」の旅行比較サイト版。「Ctrip」と「Qunar.com」の2社で、中国国内の旅行関係のオンライン予約の5~6割を発券しています。
また自社でwebサイトも作っていまして、日本旅行のサイトであるとか、コンテンツを作っていろんなパートナーさんと連携していたりします。
今後は、AIや自動車の無人運転、ディープラーニング(深層学習)などに力を入れる予定です。

「爆買い終了」は、メディアが言っているだけ

山岸 - 日本からのインバウンド関連の出稿はやはり、増えていますか?

高橋 - 年度の予算の関係などもあるかもしれませんが、自治体や官公庁などの広告が増えています。あとは、引き続きドラッグストアとか、メーカーさんなどですね。
メディアでは「爆買い」は終わったことになっていますけれど、2016年の買い物の額は2400億くらいだと思うので、2015年とあまり変わっていないんです。為替が悪くなって単価は下がりましたが、2015年は499万人で、2016年は630万~640万人くらい。130万人くらい純増している分、いわゆる「爆買い」だった頃とほぼ落としている金額は変わっていないかと。

山岸 - 「爆買い」というキーワードって、メディアが勝手に言って、勝手にしぼませている気がしますよね。実情は今年も確か訪日外国人の数は2400万人くらいですから、4人に1人は中国人なわけじゃないですか。

高橋 - 以前は為替が良かったので、代行業者やビジネスしている人が同じ商品をたくさん買って転売していた。その現象を日本の一部のメディアの人が見て、「中国人が爆買いした」と伝えていたのでしょう。

山岸 - でもそれって一般の消費者ではないですよね。

高橋 - そうですね。今は個人で来日する人が増えて、個人でしっかりと物を買っている。それはメーカーさんもちゃんと理解していて、だから1万円以下くらいの化粧品や日用品関係のメーカーさん、製薬会社などからの出稿は減るどころか増えています。

山岸 - 買い物が日常化してきたということですね。全体を見ない人は「爆買いは終わりだから、中国はもうないな」などと思うけれど、逆にそう思われている時ほど投資する価値があるのでしょうね。

高橋 - 百貨店などで買う人は間違いなく減ったけれど、別のどこかで買っている。恩恵を受ける企業が変わってきたということでしょうか。

レスポンシブでないと、ユーザーがついて来ない

山岸 - 「百度」のユーザーはどれくらいですか?

高橋 - 調査方法にもよりますが、検索のシェア的には70数%です。クエリベースだと68%、売り上げベースのサーチやアドネットワークのシェアは8割くらいになります。

山岸 - 検索総数は?

高橋 - 1日60億回くらい。でも何年も前からそう言っていますね。MAU(月間アクティブユーザー)が6億くらいおり、そのユーザーがモバイルの方にどんどん移行しています。

山岸 - 中国もいわゆるモバイル検索が主流になっていますか?

高橋 - はい。「百度」の社内でも、少し前まではモバイル6対PC4の割合でしたけど、今はモバイルが上回ってきています。

山岸 - PCとモバイルで、検索結果の表示に順番の違いはありますか?

高橋 - ありますね。簡単に言うとレスポンシブであるかないかはPCではあまり関係ないですけど、モバイルだとやっぱり重みが違ってくるので、できていない企業はできている企業と比較して、重みが軽くなる可能性はあります。

山岸 - googleもモバイルとPCを分けていますよね。基本的にはレスポンシブでサイトを作っていかないと、もう検索エンジンでは勝てませんね。

高橋 - それは本当にそう思います。PC用のサイトをモバイルで見ると表示が小さくて、「このサイトでできれば予約したくない」と思いますからね。

山岸 - モバイルでPCサイトのフォームに打ち込みするとか、本当にきついですよね。

高橋 - それは間違いなく(笑)。中国では昨年、OTAに対してMTA「モバイルトラベルエージェンシー」という言葉までできています。アプリだけでしかビジネスしていない旅行企業などが出てきましたし、既存の企業もモバイル主体になってきていて、そうした流れについていけないと中国のユーザーはもうついて来ないですね。

まずは自社名をしっかり検索しよう

山岸 - 日本企業が「百度」に広告を出稿する場合、首都部に集中したほうがニーズは高いでしょうか。

高橋 - そうなりますね。「百度指数」などで検索のクエリなどを見ると、ニーズが特に高いのは直轄市です。北京・天津・上海・重慶と、あとは河北省、上海なら江蘇省・浙江省とか、南の深センと広東とか、そういうところがランキングとしては高くなっています。その辺りを中心にターゲティングしながらやっていくケースも多いですね。

山岸 - 「百度指数」という分析ツールがあると思うのですが、これはアカウントを持っていなくても使えますか?

高橋 - アカウントがないと使えません。「百度指数」は、「百度」で一番、一般の人の役に立ちそうなツールですが、アカウントを作るには中国の電話番号が必要なのでちょっと手間がかかります。それより、もし「百度」の検索結果を見たことがないなら、まずは自社名を「百度」で検索して何が出てくるのか見てほしいんです。英語でも漢字でも良いので。

山岸 - Googleさんも、海外の状況を調べるために自分で自社のキーワードをGoogle翻訳にかけて、まず検索してみるべきだと言っていました。同じなんですね。

高橋 - 検索すると、けっこう打ちのめされることが多いと思いますよ。偽物企業があったり、自分たちはこれからだと思っていたら知らない誰かがすでに稼いでいたり……ということもありますから。商標の対策も兼ねて、検索はぜひ事前にしっかりとやっていただきたいですね。

「公式」が付けば、商品は格段に売れるようになる

山岸 - 「百度」では公式企業を認定するサービスがあるそうですね。

高橋 -  はい。リスティング広告でも「公式」と入れたりするんですよね。
中国ではよく作り込まれた偽物サイトがたくさんあるので、後から申請を出してもらって、営業証明書を出すなどかなり厳しいチェックを経て、ようやく「公式」のマークがもらえるんです。このように中国でオフィシャルを名乗るのは本当に大変なのですが、「公式」が付けばユーザーの安心感も格段に増してコンバージョン率も非常に良くなり、商品をTモールやタオバオなどに出しても売れるようになります。
ユーザーもそれを理解していて、騙されないために必ず公式サイトで商品を確認してから購入します。特に初回の購入時には必ず確認しますから、その時にもし公式サイトが見つからなければ「ひょっとしたら偽物かも」という話になって、「買うのをやめよう」とか「別の商品にしよう」となってしまうかもしれません。

山岸 - そう考えると、中国のユーザーにはブランドサイトや自社サイトがあることをきちんと伝えていかなければいけませんね。

プロモーションの前に必ずブランド名の検索を!

山岸 - プロモーションを始める前に、自社サイトを用意し、ブランド名の検索はしておいたほうが良いことがよく分かりました。ヘタをするとサイトの売り上げが全部、偽物サイトに持っていかれる可能性もなくはないという。

高橋 - また商品の流れにも色々あって、例えばちゃんと現地に卸しているものもあれば、並行輸入してドラッグストアや量販店で売られているケースも多い。そうした売り上げの比率が高くなってしまうと、日本の担当者は何もしなくても売り上げが上がって、中国の担当者は売り上げにならないとか、ひずみが出てきますよね。だから事前にしっかりと準備しておくのがポイントですね。
それから、日本では自然検索で上位表示されていると、サーチの広告を買わない企業は多いじゃないですか。

山岸 - そうですね。

高橋 - でも日本国内の検索では上位表示されても、中国では上位表示にならないケースも多い。「百度」のアルゴリズムでは商品を扱っている企業よりもモールなどのほうが上に出てくることが多く、大手だからといって必ずしも1位になるということはないので、リスティングの戦略も日本と中国とは分ける必要があります。
基本的に、日本の企業は中国では知られていない前提でやっていくべきだし、そうすることで効果が上がりやすくなるはずです。

ソーシャルで存在を知り、検索サイトで詳細を調べる

山岸 - 中国で、キーワード検索の変化などはありますか。

高橋 - 最近ではキーワード自体が細分化され、商品の型番や正式名称が出るようになってきているのですが、これはソーシャルを利用する人が増えたためと考えられます。具体的に言うと、投稿文の前後がよく分からなくて投稿文をコピペして検索する人が増えたため、打ち込みするのが面倒そうな単語での検索が増えたのではないかと。例えば、観光スポットであれば美術館や博物館の検索が増えていて、「根津美術館(東京青山)」や「东京国立博物馆(東京上野)」、夏の音楽イベント「SUMMER SONIC」(サマーソニック)などもその例だと思います。

山岸 - そうなると、企業側もちゃんとしたコンテンツを出していかないといけないですね。

高橋 - ソーシャルでの伝播性は高いものの、それだけではやはり不正確な部分が多いので、検索サイトを使って内容を調べているんですね。両方重要だと思いますが、より綿密なシミュレーションとか予算配分を意識したマーケティングが求められているのかなと思っています。

山岸 - ポートフォリオ、いわゆる検索エンジンの対策だけではなくて、ですか。

高橋 - 色んなコンテンツにKPIなどの数字を乗せてやればやるほど、成果を上げられるマーケットになったのではないでしょうか。

オンラインでは“マーケティング勝負”!

山岸 - 海外向け広告は比較的大きな企業が出稿するイメージがあるようですが、中小企業の出稿は増えていますか?

高橋 - 増えていますね。地方の中小企業さんで、越境でも単品通販をしていますというところが、中国も視野に入れて出稿するケースが増えています。
オンラインでの進出ができなかった頃は、中国に進出すると言うと法律上の問題もありましたが、越境ECならほとんど関係なくなって“マーケティング勝負”という形になってきています。
どうやって売り上げを上げるかというと、マーケティングの比重が一番で、あとは仕入れが必要なら仕入れ価格を抑えることと、配送をいかに効率的にするかですね。

山岸 - 同じことが中国以外でも言えると思いますから、そうなるともう海外で戦うことに関して、企業の規模は関係ないですね。

高橋 - 日本で10億以上のビジネスをやっている企業であれば、どこでも行けるのではないでしょうか。

山岸 - 今のうちに海外展開を考えていかないと、日本は人口も減っていくし、大変なことになってしまいそうですね。

高橋 - そうですね。中国であれば、台湾を中心に展開してそれから大陸に店舗を作っていくとか、いろいろ考えられそうです。

山岸 - そういう企業も多いみたいですね、親日家の台湾で実績を作ってから本土へ展開していく。

高橋 - 化粧品会社なんですが、台湾で製造して、中国に展開している例を実際に知っています。それは戦略ですよね。日本のものを台湾で売っていくのもありですし、台湾でビジネスをしながら中国本土を横で見ていくという形も良いと思います。

最低限、1度は現地に行くことが大切

山岸 - これから海外展開をしようと思っている人に、アドバイスをお願いします。

高橋 - しっかりとサイトを作り込んでも、中国には約14億もの人がいるのですべての人に情報をいきわたらせるのは難しい。ですから、1度商品を買ってくれた人がどんな経路で商品にたどり着いたかを調べて、タッチポイントを抑えて行くことができれば、ボリュームゾーンに近づけると思います。こちらからターゲットのもとへ探していくよりも、たどりついた人から逆にたどっていくことができればベストです。

山岸 - どこかに必ず、その商品を探している人がいますよね。そして、こちらから情報を押し付けるのではなく、相手の気持ちになることが大切。でもそれを実現するために、社内に必ずしも中国の人がいる必要はなくて、アウトソーシングしたり、マーケティングの専門業者に頼ったりするのも手ですし、今は検索エンジンでもかなりのことができますよね。

高橋 - “社内にいる李さんの標準”が、いつの間にか中国全体の標準にならないように注意することも重要です。日本人からすると、中国人というだけで中国のことを全部知っている気がするかもしれませんが、それは違いますから。
そして最低限のコミットとして、現地に行くこと。ぜひ1度、北京に行っていろいろ見てほしいですね。上海は日本との類似点が多いので避けて、1級都市・2級都市に1週間くらい滞在して、関連する人に直接インタビューなどしてほしいです。

山岸 - 現地の空気にふれて、その土地を好きになるのは重要ですよね。「百聞は一見に如かず」ということでしょう。

高橋 - 自分で現地のモバイルを操作して、どういう風に検索結果が出ているか見る。日本に居る時は検索結果にあまり競合が無くても、現地に行くとたくさん結果が出てくる場合も多いです。
また、商品を買ってくれた人に謝礼を払ってでも、どんな風にサイトをたどって商品にたどり着いたか、目の前で操作してもらうのも良いと思います。

世界を相手にするなら、覚悟が必要

高橋 - 大切なのは、中国の似たような企業が何をしているかを見て、どんなサービスでどういう風に売り上げているかを知ることです。

山岸 - 海外進出は、“隣の日本企業”と戦っているわけではなく、世界が相手ですからね。

高橋 - 旅行関係のインバウンドであれば、弊社の「百度旅行」の旅行記のブログなどを見ればかなり参考になります。どんな交通手段でやって来て、どんなところに行って、良かった・悪かったというのが細かく書いてある。写真もたくさん載っているので、言葉が分からなくてもだいたい内容は分かります。写真を撮っているものは興味があるということ。ただし、ソーシャルは基本的にテキスト中心なので、言葉が分からないとまったく読めないかも知れません。

山岸 - どの国でも、まずは売る側がその国のことを好きになって、そこにノウハウやテクニックがからんで成功していくのではないでしょうか。

高橋 - そうですね。それから、スタートしてから半年くらいは試行錯誤が必要です。

山岸 - 「自分も全然知らない国に、現地の人たちの事も知らずにモノを売って、すぐに売れるのか?」という話ですよね。

高橋 - 最初は数字以外の指標をいくつか用意して、最終的に、1年後・2年後にROIを合わせていく。最初であればサイト訪問数や実際の来客数、カートに入れた数でもいい。
当たり前のことですが目標をきちんと作ったほうが良いですね、日本での売り上げの半分を海外で作るとか。もし目標が売上10億ということなら、日本で頑張れば良いだけかもしれませんし。

山岸 - 仮の目標でも、あれば戦略が外れた時に軌道修正ができますからね。覚悟を決めれば、あとは成功するためにやれることをきちんとやっていくことですよね。今日は本当にありがとうございました!