GLOBAL MARKETING INSIGHT

CEO対談
2017.3.10

海外戦略は「ボタンひとつ」の時代。
一歩踏み出せば、海外への道が開けます!

対談者

アライドアーキテクツ株式会社
事業企画室 副室長
番匠 達也 様

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“海外向けSNSマーケティングのプロ”に聞く、 海外ソーシャルメディアマーケティングのヒント

ソーシャルメディアを活用して国内・海外向けに総合的にビジネス支援を行う会社~海外向けには特に「中国」に強み

山岸 - 今回は、2005年の創業以来、一貫してソーシャルメディアマーケティングを手掛けてきたアライドアーキテクツさんに、ソーシャルメディアを活用した海外webマーケティングの実際や、今後のインバウンドの展望などについてお聞きしていきます。
最初に、御社の事業内容についてお聞かせいただけますか。

番匠 - 弊社は、まだFacebookもないSNS(Social Networking Service)の黎明期から、一貫してソーシャルメディアを使ったマーケティング支援を行ってきました。現在は具体的には、SNSユーザーを企業/ブランドの「ファン会員」として集め、マーケティング課題に合わせて多様な施策を展開できる国内最大級のSNSマーケティングプラットフォーム「モニプラ」や、ブロガーなどのユーザーに向けて商品モニターや座談会などの「イベント」を実施し、クチコミを活用した販売促進・集客に繋げることができるプラットフォーム「モニプラ ファンブログ」などの自社サービスを軸に、企業の公式SNSページの運営代行、InstagramやFacebook等のSNS広告配信などのサービスを展開しています。
海外事業は約4年前にスタートし、同じくソーシャルメディアを活用したマーケティング支援を行っています。「モニプラ」海外版である「モニプラGlobal」の展開や、企業の海外向けSNSの公式ページ作成・運用、広告配信をはじめ、最近ではSNSや動画サービスで数万~数百万人規模のファンを持つ「インフルエンサー」の影響力を活用したプロモーション支援に力を入れております。

山岸 - 海外ですと、例えばFacebookであれば世界中の主だった国にユーザーがいますが、御社ではどのあたりの国に対応されているんですか?

番匠 -  主にアジアですね。東南アジアなどでSNSを活用したキャンペーンが実施できるサービスとして「モニプラGlobal」の提供を開始したことに始まり、現在は、ベトナム及びタイに現地のパートナー企業がいますし、また2016年からは中国最大のSNS「Weibo」のグループ企業であるIMS社との提携を機に、中国向けのプロモーション支援も行っており、現在は「中国」に最も注力しています。

海外企業のSNS公式ページは「友達の延長線上」にある

山岸 - 近年、アジアではソーシャルメディアが特に重要と言われていますが、ソーシャルメディアを活用したプロモーション支援を提供する側からのアドバイスとして、「海外戦略のために今すぐやっておくべきこと」はありますか?

番匠 - そうですね……アジア全域では日本よりもさらに活発にソーシャルメディアが活用されているという印象がありますが、実際にマーケティング支援を行ってみて思うのは、同じSNSでも、国によって使われ方が違うということです。
例えば日本の企業がSNS上で公式ページを作る場合、ホームページの延長のような感じの内容で、まだまだ企業側からの発信ばかりしているケースが多いと思うんです。

山岸 - 企業側からユーザーに向けて、一方的に情報を発信しているということですね。

番匠 - はい。しかし海外の企業が作ったSNS公式ページの場合、友達同士の会話の延長線上のような情報を発信することが多く、コメント欄に気軽にコメントが書き込まれてとても賑わっています。
「この商品はどこで買えるんですか」、「どういったことができるんですか」、「私も使ったことがありますよ!」という感じで、コメント欄がそのまま問い合わせフォームのような感じになっていて、そこで企業と消費者とのコミュニケーションが活発に発生しています。

山岸 - ソーシャルメディアのいわゆるインターラクションとかエンケージメントが、海外は日本と比較して高く、ユーザーの反応も全然違うんですね。

番匠 - はい、明らかに違いますね。海外展開を考えるなら、まずそうした海外企業のSNSの運用方法を参考にするのも良いと思います。

山岸 - 確かに東南アジアやインドネシアでは、ホームページはないけれどFacebookの企業ページは持っていて、そこでいろいろやっているという話を聞きますね。

番匠 - はい。海外では多くの場合、SNSの公式ページが企業の公式サイトを進化させたものというか、ユーザーとコンタクトが取れる場所として存在していることが多いのかなと思っています。

SNSはロイヤリティを高める場として捉える

山岸 - 中国のWeiboやWeChat、またFacebookなどのSNSを海外向けに運用されている企業さんは、どんな業種が多いのでしょうか。また運用目的はインバウンドが多いですか、それともアウトバウンド?

番匠 - 弊社ではもともと「モニプラ」のサービスを通じて消費者向けのキャンペーンプロモーションなど数多く手掛けてきた関係で、顧客にメーカーさんが多いため、海外事業でもそうした国内メーカーさんのインバウンドやアウトバウンドに関する案件、また越境ECや現地法人の展開についてご支援するケースが非常に多いですね。ただ、弊社としては「インバウンド」にせよ「アウトバウンド」にせよ、海外向けに情報を発信する、海外のファンとコミュニケーションするという意味では変わりがないためです。

山岸 - そうなんですね。では国内企業が海外向けのSNSのページを作る際は、どんな目的があるんでしょうか。例えばFacebookには広告も出稿できますが、ページの運営はそれ自体が売り上げに直結はしませんよね。やっぱり消費者とのコミュニケーションが目的なんでしょうか。

番匠 -  個人的な印象なのですが、日本の企業さんは「SNSを使って新規のお客さんを獲得していく」というイメージが強すぎるように思います。やはりインバウンドにしても越境ECにしても、海外の方に商品を購入してもらうきっかけとして、クチコミがとても大事と言えます。しかしクチコミは「体験した」とか「購入した」という体験の後に発生するものです。
そう考えるとSNSは、新規のお客さんを集めるのはもちろんですが、1度は購入したことがある人とまた接点を持つ場であったり、何度も購入してくれている人(いわゆる“ファン”)のロイヤリティを高めたりという視点で捉えることが、これから特に重要になっていくのではないでしょうか。

SNS公式ページには見込み客育成の要素がある

山岸 - 企業のSNSページであれば当然、ページを作った企業がお金をかけて運用しているじゃないですか。それで、例えばリスティング広告なら問い合わせ数何件とか、CPA(顧客獲得単価)がいくらとか、何らかの数字を指標として出して分析しながら運用していくのですけれども、企業さんがSNSページを運用する際はどこにKPI(重要業績評価指標)を設定されていることが多いのでしょうか。

番匠 - まずはファン数を指標としていくケースが多いですね。でも時間の経過とともに、日々のコメント数や、リンクで紹介した記事からどのくらい流入があったのかといったところに落ち着いてきます。
これは、ファンが興味を持ちそうなコンテンツを流してみてどれくらい見てもらえたのかということですが、イメージとしてはメルマガの開封率と似ているかもしれませんね。既存のお客様に何%リーチして、その人がどのくらい開封して、どのくらい流入があったのかというような。ソーシャルメディアの場合は、そこからさらに情報が「シェア」されたことにより、どれだけの人に「リーチ」したか、という拡散性も重要なポイントになります。

山岸 - なるほど。つまりリードナーチャリング(見込み客育成)と、そこから発生する他者への「推薦」の要素があるということですね。

番匠 - そうですね。ちなみに弊社では、国内については定期的に企業ページのファンに対してアンケートを取っています。内容は、商品を購入したかどうか、購入したならその商品をどれくらい友達にすすめたいか……というようなもので、どれくらいの割合で新規客が既存客になって、また既存客のロイヤリティを高めることができたかを分析しています。

SNSはそもそも「友達と友達のためのサービス」

山岸 - 弊社の関連会社が運営する東南アジア向け化粧品口コミサイト「COSMERIA」(http://www.cosmeria.me/)はシンガポールでカスタマーサポートをしているのですが、emailでのお問合せを全部廃止してFacebookのメッセンジャーに切り替えたんです。それで、「お問い合わせありがとうございます」という文章さえ書かずに絵文字とかで返すようにしたら、これが非常にラクで(笑)。
東南アジアの女性は絵文字だけでもぜんぜん気にしなくて、むしろ「この問題につきましては - 」なんて改まった文章で返信すると、逆に白けてしまうみたいで。

番匠 - そうなんですか、それはスゴイ(笑)。友達同士の会話みたいなのが良いんですね。

山岸 - ソーシャルメディアってサポートコストがけっこうかかるじゃないですか。先ほど話した東南アジア向け化粧品口コミサイトのFacebookページには10万人くらいファンがいるのですが、ファンの傾向にうまく合わせてこちらも軽い感じで運営しているので、コミュニケーションが取れた気がします。

番匠 - 私はSNSってそもそも「友達と友達のためのサービス」だと思っているんです。ですからそこで企業が発信する情報は「友達同士の会話の中に入り込む」イメージなので、その場の雰囲気を壊さないようなものにすることが重要だと思っています。

山岸 - そうですよね。そもそもSNSって友達のネットワークなので、「我が社のソーシャルメディア戦略は~」なんて堅苦しく考えるよりも、お客さんを友達とおもって対応することも大事だと思いますね。

重要なのは、商品をどうやって海外に広めるか

山岸 - 最近はメーカーさんも、インバウンド対策の一環として海外のお客さんとコミュニケーションを取るためにSNSを利用しているところが増えていますか?

番匠 - はい、そうですね。ただ、これからはよりグローバル化が進み、「日本国内でしか販売しない」という会社もどんどん減っていくと考えています。大手さんだけではなく、中小企業さんも含めて、どれだけアジアや世界各国に広めるかということに目を向けている企業が多くなっていますね。

山岸 - 中小も含めたメーカーさんも、そもそも自分たちの事業をどうやって海外の人に伝えていくかが重要だと考えるようになってきたんですね。

番匠 - そうですね。「中国人が日本で爆買いしている」と言われている商品だって、日本でしか売っていない商品が爆買いされているだけでなく、海外でも売られているものを訪日した際についでに買うとか、中国でもよく買うけれど日本の免税店のほうが安いから旅行途中に買っただけ……など、様々な理由で変われているのが実情です。ですからインバウンド対策に特別に注力するよりも、商品をどうやって海外に広めていくかが重要なのだと思います。

「インフルエンサー」の2つの影響力とは?

山岸 - 御社では現在、「インフルエンサー」を活用した中国向けのマーケティング事業に力を入れているそうですね。

番匠 - はい。中国のSNSで多数のフォロワーを抱える「インフルエンサー」を日本の企業様に紹介しています。また日本国内のインフルエンサーなどを、中国をはじめとした海外向けに育成していく活動もしています。

山岸 - 両方向で取り組まれているんですね。彼らはどんな影響力を持っているのでしょうか?

番匠 - 「インフルエンサー」による影響力には2つの種類があり、1つは「この人が紹介しているから信頼できる」という、ファンに訴えかけるところ。日本の企業の商品のほとんどは中国ではまったく知名度がないので、「この人が使っているから使ってみたい」と感じてもらえるのは強いですね。
もう1つはバイラル効果で、「インフルエンサー」が特定の商品を「使ってみたい」、「試してみたい」、「買ったよ」といった内容の記事を書くと、それに対してファンがシェアやリツイートをし、その先の友達にまで情報が伝わっていきます。この“その先の友達にまで大きく影響範囲が広がっていく”というところに、大きな価値があると思っています。

山岸 - ファンは、やっぱりその人が書いた記事を信頼しているのでしょうか?

番匠 - そう思います。一例ですが、中国向けにマタニティウェアの販売をしている会社様の商品を、実際にお子さんがいらっしゃる「動画インフルエンサー」に使ってもらい、ママ友達との座談会形式であれこれ話してもらっている様子を動画にして投稿したんです。すると、そのプロモーションをきっかけに動画は2百万回再生され、中国の「天猫国際」で販売していたその商品の売り上げも上がりました。

山岸 - それはスゴイですね! 「インフルエンサー」を使えばどんな商品も結果が出ますか?

番匠 - そうとも限りません。日本の企業さんは日本での成功体験を持っているので、中国でも同じようにしようとしがちなのですが、それでは海外では通用しないことが多いんです。今回の例も、日本での成功体験を一度取り払って、現地の「インフルエンサー」に企画を委ね、インフルエンサーがよいと思う方法で商品を紹介したことによって、中国の消費者に受け入れられ、コメント欄が活性化しました。またそれにより、記事や動画がたくさん拡散して、結果として売り上げに結び付きました。

山岸 -  海外ではやはり、こちらの固定概念を押し付けるのではなく現地目線で考えることが大事なんですね。

現地に即した方法で運用することが成功のカギ

山岸 - ソーシャルメディアを活用したマーケティングをする上で、成功の法則や、逆に「こんなやり方はよくない」といったことはありますか?

番匠 - 一番は、やはり現地に即した活用方法をすることですね。日本語をただ中国語に翻訳すれば中国で受けるかと言うとそうではなくて、特に現地の考え方に即してやっていくことが重要です。日本人が見て面白くなくても、現地の人に受け入れられれば良いわけですから。そうした作業は日本人だけでは難しいので、海外の人の意見をたくさん聞いて、「こう紹介した方が良い」と言われたら柔軟に変えていく必要がありますね。

山岸 - 最後に、これから東南アジアや中国に進出したいと考えている日本の企業さんに向けて、メッセージをお願いします。

番匠 - 今は海外向けのランディングページ1つでも、そこから海外の方に商品を買ってもらえたり、反応してもらったりすることができる……つまり、限りなくコストもリスクも少ないスモールスタートができる状態にあると言えます。それでもリスクを感じるなら、日本にも海外の方は大勢いらっしゃいますから、その人たちに商品を紹介してもらうとか、店舗があるならそこに外国語のチラシを置いてみるとか、それも立派な海外に対する販促・プロモーションです。何しろ、まずは怖がらずに一歩踏み出して欲しいですね。

山岸 - 今は本当に、少ない予算で明日からでも、インターネットを通して海外の人と交流できる。これは10年前にはなかったことですし、ここまでインターネットが簡単にしてくれていますから、そこに昔のようなリスクはほとんどありませんよね。

番匠 - そう、海外展開はもう「ボタンひとつ」の時代なんですよ。Facebookの広告だって、対象国を台湾にすれば即座に台湾に向けて配信できますし。

山岸 -  ここまでハードルは低いのに、何でチャレンジしないのという話ですよね。
より詳しい話は、3月2日に開催するセミナーにアライドアーキテクツさんをお迎えして語っていただきますので、ぜひ聞きに来ていただきたいですね。今日はありがとうございました!