GLOBAL MARKETING INSIGHT

CEO対談
2017.8.10

海訪日客はどんどん増えています。
インバウンドに遅すぎることはありません!

対談者

株式会社フリープラス
取締役 観光立国推進本部 本部長
三田 浩騎 様

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ランドオペレーターならではの視点で切り込む、国内インバウンド事情

世界29カ国で取引する“ランドオペレーター”

山岸 - 今回は、旅行業をメインにリサーチやマーケティングなどのサービスも提供されている「株式会社フリープラス」さんにお話を伺っていきます。まずは、御社の事業の概要についてお聞かせいただけますか。

三田 - 弊社は2007年に創業しまして、当初はエンジニアの派遣業務を中心に行っていましたが、2010年からインバウンド関連の業務を始めました。現在は旅行業の中でもランドオペレーターの業務を中心に、訪日旅行客対象のリサーチやマーケティングといったサービスも提供しています。

山岸 - ランドオペレーターというのは、いわゆる発券業務や旅行の企画といった内容を行っているんですか?

三田 - 一般的にはあまり馴染みがないと思いますが、旅行業者は2つの種類に分かれておりまして、1つは旅行代理店で、HISさんやJTBさんといったB to Cのショップですね。もう1つは弊社のようなランドオペレーターという業種で、現地のホテルやタクシー、ガイドなどの予約を手配しています。

HISさんやJTBさんで予約をして、例えばハワイに行ったとき、「山岸ロハンさん」という看板を掲げて待っている人は、HISさんやJTBさんの社員ではなくて、ランドオペレーターが手配したなん人ですよ。

山岸 - では御社のお客さんは、一般の消費者ではなく、HISさんやJTBさんといった旅行代理店さんなんですね。

三田 - はい。ですから世界各国のHISさんやJTBさんはもちろん、各地の大手旅行会社さんがクライアントになります。

そのメイン業務にプラスして、弊社「株式会社フリープラス」として最終的にお届けしたいと考えているのが、訪日されるお客様に対して“人生に残る日本旅行の思い出をプレゼントする”こと。その考え方に基づいてすべての事業を展開しています。

山岸 - マーケティングは、訪日中の旅行者が対象ですか?

三田 - 旅中・旅前どちらも対象ですが、訪日中の旅行者がメインですね。

弊社では、お買い物や宿泊といった訪日中の旅行体験をより豊かにするためには、日本のサービスがより豊かに最適化されていく必要があるだろうと考えています。具体的には、訪日旅行者にとって分かりやすいパッケージにするのはもちろん、よりフレンドリーなコミュニケーションがなされている状態がベストだと思っておりまして、そのお手伝いをしているのが僕の部署です。

山岸 - なるほど。ちなみにランドオペレーターをしている会社は、日本にどれくらいあるんですか。

三田 - 観光庁の調査では日本に864社あると言われておりますが、当社が把握している中で、東アジア地域でアクティブに活動している企業数は約200社ほどと考えています。

山岸 - そんなにあるんですね!

三田 - ただし、当社は29カ国と取引していますが、1~2カ国だけという会社がほとんどだと思います。

訪日中に特化したマーケティングを展開

山岸 - 御社では、旅行業とあわせて訪日外国人客を対象にしたマーケティングをされているということですが、サービス内容を教えていただけますか?

三田 - 2015年に始めた新規事業で、リサーチとプロモーションという2つの軸があります。リサーチは、具体的にはアンケートとインタビューで、訪日外国人旅行者をメインにしています。またプロモーションとして、化粧品のサンプリングも行っています。

山岸 - そうなんですか。実は弊社が新しく立ち上げた会社でも、海外に化粧品のサンプルを配布して、口コミしてもらうということをやっているんですよ。サンプルを実際に使った人がどんな印象を持ったかというのは、メーカーにとって大事ですよね。

三田 - そうですね。弊社の場合、買い物直前のバスの中や、ホテルのチェックインの時、また飛行機やフェリー、クルーズ船の中などでサンプリングしています。それらは貴重な旅の時間の中でも、空白の時間なんですよね。特に何もすることがなくて。

山岸 - 添乗員さんなどが「使ってください」と言って配るんですか?

三田 - そうです。

山岸 - 紙か何かに、コメントを書いてもらったりするんですか?

三田 - はい、ほかにもiPadを配ったり、色んなやり方がありますが。

山岸 - なるほど。訪日中に特化するというのはやはり、旅行業をやっているからこそできることですよね。

三田 - そうですね、訪日中の調整力は当社の強みの1つだと思います。もちろん旅前・旅後にもアプローチは展開してはいますが。

山岸 - サンプリング以外には、どんな展開を?

三田 - プロモーションですね。内容は本当に様々で、日本にあるインバウンドの商材をかき集めて、何でも提案するという形です。また、マスプロモーションやソーシャルほか、後々のリサーチをセットでやったりもしています。

山岸 - サンプリングやプロモーションを展開したことでどんな反応があったか、ということですね。

三田 - そうです。ホテル内で視聴されているテレビのCMを出稿されているお客さんがいたとしたら、ホテル内での視聴率調査をするなどですね。

山岸 - なるほど。

インバウンド対策の壁は「言葉」

山岸 - 相談に来られる企業に、特徴はありますか?

三田 - ご相談いただいている企業は様々な規模ですが、実施につながるのは国内最大級とか、インターナショナルでも有名な企業さんですね。

山岸 - 予算はどれくらいから?

三田 - リサーチ自体は50万~100万円くらいからになります。

山岸 - 中堅の企業でも手は出る感じですね。

三田 - そう思います。ただ、インバウンドに特化しているというところで予算を取ってらっしゃらない企業が多いんです。

山岸 - 確かに弊社でも、インバウンド向けのマーケティングとなると「ちょっと予算が」となることは多いですね。

ちなみに、旅行業とマーケティングを両方されている立場から、日本企業は訪日外国人旅行者の受け入れ体制が準備できていると感じますか?

三田 - それはまだ改善の余地があると感じています。

山岸 - やはり「言葉」が問題でしょうか?

三田 - そうですね。弊社では「INBOUND RESEARCH .jp」という独自の調査サイトを運営していまして、社員と一緒に僕も街頭で調査しているんですが、英語をはじめ様々な言語で調査している中で、「メニューが読めない」とか「英語が通じない」とか、やっぱり言語の問題で困っている外国人旅行者が一番多いですね。

山岸 - やっぱり言葉の問題は大きいんですね。弊社も海外向けのwebサイト制作やwebマーケティングをしていて、一番ツライのが「海外からお問い合わせが来たらどうすればいいですか」という質問なんですよ。

三田 - それは……(笑)

山岸 - お客さんにしてみれば真実なんでしょうけども、なかなか対応は難しいですね。

海外向けのコンテンツは、よりディープに!

山岸 - 年々、訪日外国人旅行者は増えていると思います。そうした中で、数年前と比べてもよりディープな情報を伝えていかないとダメだなという感触があるのですけど、三田さんは何か変化を感じられていますか?

三田 - まったく同感ですね。

また2016年はいわゆる中国人旅行者の“爆買い”で最も盛り上がった年でしたが、中国に限って言うと、買い物をするという行動がちょっと恥ずかしいという状態になっているらしいんですよ。「今さら買い物?」みたいな感じがするらしくて。SNSでも、「買い物してきました」なんて書くのは恥ずかしいですよ、隠したほうが良いですよ、という流れになっているそうです。特に北京や上海のような都市部では。情報が回るのが早くなってきていて、悪徳免税店の情報などもすごく出回っているみたいですね。

山岸 - こうなってくると、海外向けのコンテンツも日本人向けのイメージでコアな情報を伝えるのが良いかもしれないですね。そうしないと、「今、この情報?」なんて笑われてしまうかも!

三田 - 本当にそうだと思います。

タイやインドネシアが伸びてきている

山岸 -  先ほど、御社では29カ国もの国々と取引があると言われていましたが、例えば台湾の方のサンプリングをしたいという要望にも応えられるんですか?

三田 - アジア全般は問題なくサンプリングできますよ。

山岸 - それは頼もしいですね!

三田 - 特に最近、サンプリングやマーケティングの要望が多いのは、タイとインドネシアですね。

山岸 - タイやインドネシアが伸びてきている感じがしますか?

三田 - はい。インドネシアから来られる方々は一部の富裕層ですので、一気に旅行商品が普及するのは少し先のタイミングだと思いますが、タイに関しては日本旅行が普及してきています。
ちなみに、台湾は4、5回以上来日している人も多いですし、中国とアジアはリピーター化が凄く早いです。ベトナムも、お聞きすれば2回以上来られている方もいらっしゃいますが、JNTO(日本政府観光局)のデータでも訪日客の76%は1回目の訪日となっており、これからという感じです。

自治体向けに提供する3つのサービス

山岸 - 都市部と地方で企業のインバウンドに対する熱感の違いは感じると思うのですが、自治体はどうでしょうか?

三田 - 自治体の場合は、すでに訪日客が来られているかどうかで熱感が違いますね。

山岸 - 実績として人が来ているところほど、もっとお金を使って集客していきたいと?

三田 - そうですね。例えば京都などは、圧倒的な人数の訪日中国人が来ています。そうした自治体ですと、すでに何周もPDCAサイクルを回されているために知識が豊富で、様々な検証の中で今があるという状態になっています。

しかし地方の自治体は、多くの場合、何をして良いかわからないという状態からのお問い合わせが多いですね。

山岸 - なるほど。ところで自治体だと、御社のどういったサービスを使われるのでしょうか。御社の運営するメディアに地域の紹介記事を掲載などですか?

三田 - 様々な施策がありますが、大きく3つで分けると、まずはリサーチですね。実際に訪日外国人旅行者が来ているかどうか、そして観光資源をどうPRしていくかという時には、例えば「うどん」がいいのか別のものが良いのかなど。2つ目は、ブロガーさんを呼んで実際に体験していただく。それがリサーチにもつながりますし、そのままブログ記事として発信してもらったりもしています。

山岸 - それは良いですね。

三田 - 3つ目は、弊社で「JAPAN TIMELINE」(ジャパン タイムライン)という日本情報メディアを8言語で展開しておりまして。これは海外の旅行会社の日本担当者向けに情報発信しているもので、B to B向けです。

山岸 - 海外の旅行会社の人が日本を良いと思ってくれれば、当然、訪日旅行者も増えていきますもんね。

三田 - はい、旅行会社から「今までにない場所を教えてほしい」というニーズはもちろん、「誰も行ったことのない秘境を手配してほしい」といった要望も寄せられるんですよ。となると、自治体さんとしてもそういったディープな情報発信をしていきたいという点で、需給が合致する場所が作れるのではないかと感じています。

山岸 - そうですよね!

「昇竜道」に見る、自治体PRの成功例

山岸 - これまで自治体向けにたくさんの支援をされてきたと思いますが、これはという成功例があれば教えていただけますか?

三田 - 熊本県の阿蘇市で「Youtuber招請事業」というものがありまして、Youtuberを阿蘇市に呼んでPRしてもらったという事例があるんです。

山岸 - 地震の前ですか?

三田 - 後ですね。なので、Youtuberと旅行会社さんに同時に阿蘇市に来てもらって、「実は安全で、楽しめる観光資源がたくさんあるんだよ」という動画を作って配信してもらったり、招請した旅行会社が作った九州パッケージ商品の広告素材として使ってもらうことを想定して、阿蘇市のPR動画を作りました。

山岸 - Youtuberはどこの国の人だったんですか。

三田 - マレーシアの華僑の方です。

もう1例、これまでは訪日外国人向けの日本の旅行ルートというと、東京から大阪に行くという一般的な団体旅行のパッケージが人気だったのですが、最近は立山を中心に名古屋やセントレアを結ぶ「昇竜道」(ドラゴンルート)が、非常に人気が出ています。その地域全体の自治体と観光関連事業者が、ひとつのビジョンに向かって足並みをそろえてPRしていくことで成功したのですが、こうした事例は他では見たことがないですね。

山岸 - よく、例えばどこかの旅館協会とかで、ある人は「良いね」と言っているけど、他の人は「うーん」と言ってなかなか進まない……ということがありますが、「昇竜道」の事例ではそれがうまくいったんですね。

三田 - そうですね。

「施策から入る」「短期で効果を出そうとする」は失敗のもと

山岸 - 先ほどは成功例とは逆に、「頑張ったけれど上手くいかなかった」という例があれば。

三田 - 具体的にはお話できませんが、基本的には上手くいかない事例のほうが多い気がしています。

山岸 - それって傾向はあるのでしょうか? もちろんプロモーションのやり方だけではなく、企業さんの思い入れなどによっても結果は左右されると思うのですが。

三田 -  失敗例のパターンをあえて言うならば、“施策から入ってしまう”ということかもしれません。「面白そうだから」という感じでスタートしてしまうと、最終的なグランドデザインがないので手詰まりになっちゃうんですよね。

山岸 - いくつも施策の失敗を重ねてしまって、お金ばっかり使ってしまうという。

特に海外向けとなると、余計に直観的なものにすがりたくなってしまって、結果的にうまくいかなかったりしますよね。やっぱり物を売るためには、その前に「知ってもらう」という基本原則があるじゃないですか。

三田 - ありますね。

山岸 - 例えば「社名を何度も見たことがあるから安心できる」というところを飛ばしてしまうと、いくら早く結果を出したいと言っても無理がありのますよね。特にインバウンドであれば、海外から来るということ自体が高価な買い物ですから、旅前に買い物の計画をしているケースが多い。ですからまずは順番として、日本の良いところを知ってもらったり、社名や商品の知名度を上げたりしていくことが先ですよね。

三田 - そうですね。

山岸 - 100万円の広告費をかけたから5000人来るというような、結論を焦ってしまうあまりにゴールの前のプロセスが抜け落ちるのは、けっこう怖いですよね。

三田 - 僕は失敗するパターンとしてもう1つ、感じているところがあります。短期で効果を出そうとしている会社さんは、何も得られずに終わってしまうというケースが多い気がします。長期で考えているお客さんはリサーチから入るお客さんが多くて、どの国にしようとか、デジタルなのかリアルなのか、紙なのか、どんなカスタマージャーニーなのか、といったことを調べた上で施策を決めていきます。そうなると、例え失敗したとしても「これが原因だったんだ」というのが分かりやすいんですよね。

山岸 - 弊社でも今、海外向け日本向け双方のマーケティング支援をしていますが、海外企業が弊社を認知してくれるまでは数年かかりました。数年前に、スイスから「日本でマーケティングしたい」と問い合わせがあって、「何でスイスから?」と思ったら、イギリスで展示会に出た時に話した人がスイスで新しい会社に入って、そこで「日本にインフォキュービックという会社があったな」と思い出してくれたんですね。そういう例ってけっこうあると思うんです。やっぱり継続は強いですよね。日本は人口が少しずつ減って見通しが悪くなっていく中で、海外を諦めたら次がないというシンプルな問題がある。

三田 - まったく同感ですね。

地道な継続が成功につながる

山岸 - これからインバウンド向けに事業を展開していきたいと考えている人に向けて、コメントをお願いします。

三田 - 最初はやはり、情報収集から始めるのが良いと思います。そして「始めるのに遅過ぎるということはまったくない」と伝えたいですね。

2017年1月は訪日客全体で前年比109%という伸びでした。東南アジアは120%で明らかに今後伸びていく市場だと思います。だから始めるのに遅すぎることは絶対にない。

山岸 - 今なら、ちょっと頑張ればGoogle翻訳を使ってだって情報収集できますしね。

三田 - 街に出て、訪日客の実態を観察するというのもとても良い方法だと思います。

山岸 - 弊社のオフィスは東新宿ですが、近くに「寿司ざんまい」があるんですよ。東新宿って歌舞伎町の裏でちょっとマニアックな場所だと思うんですが、夜になるとお客さんの9割くらいが外国人なんです。「こんな場所までどうしてわざわざ来るの」と尋ねたら、「トリップアドバイザーで載っていたから」と。日本人は寿司と言えば夜に食べるものだけど、海外の人はそうした固定概念はなくて、朝8時でも食べる。寿司ざんまいは24時間営業なので、普通ならお客さんが少ない時間帯に外国人のお客さんがたくさん来てくれて、回転率はかなり上がっているはず。これもひとつのチャンスですよね。

三田 - ドン・キホーテさんも、何年も前から旅行博に出たりされていて、インバウンド向けのクーポンを長い期間配ったりしてきたからこそ今の成功があると思うんです。地道に継続していることが成功につながっていますよね。

「訪日旅行産業自体を垂直統合していきたい」

山岸 - 最後に、弊社の今後のビジョンを教えてください。

三田 - 今後は、全社として、訪日旅行産業自体を垂直統合していきたいと考えています。その足がかりの1つとして、今年4月に第1号となる自社のホテル(FP HOTELS)を作りました。訪日にかかわるチャネルやパーツはいくつかありますが、そうしたものを統合していきたいのです。

旅行予約をすると、自社で契約している質の高いガイドが対応し、レストランは「JAPARES」という予約サービスでネット予約でき、ホテルは FP HOTELS ブランドのお部屋で、ラグジュアリーな体験をコストを抑えて体験していただく。最終的に、人生に残る訪日旅行の思い出をプレゼントすること。そうした旅行をする上で発生する各局面に対して、高品質なサービスを安価で提供していくというのが理想形です。

インバウンドマーケティングという観点では、「訪日中のリサーチとプロモーションと言えば株式会社フリープラス」と言われる会社になるのが目標です。

山岸 - 今後、訪日客はますます増えると思うので、非常に楽しみですね。いろんなチャレンジができる。

三田 - そして地方創生の舞台では、観光立国を盛り上げていくために地方自治体との取り組みを加速させています。

山岸 - 弊社はインバウンドもアウトバウンドも対応していますので、今後はインバウンドでぜひ御社と一緒にやっていきたいです!

三田 - ぜひご一緒させてください。ちなみに弊社が運営しているサイト「INBOUND RESEARCH .jp」は、かなりコアな情報を発信していて面白いですよ(笑)。

山岸 - そうなんですね、見るのが楽しみです(笑)。
三田さん、本日はありがとうございました!