韓国NAVERリスティング広告を始める入門書
スタートダッシュのための基礎知識とTips
これから韓国市場に進出したい日本企業のマーケターにとって、知っておくべき!と言っても過言ではない NAVER のリスティング広告は、韓国の主要な検索エンジンである NAVER が提供する検索連動型広告で、Google や Yahoo! のリスティング広告とは異なる特徴を持っています。
本日は、韓国向けデジタルマーケティングにおいてNAVERリスティング広告の活用を検討している方へ、その必要性・特徴と運用に役立つヒントをお伝えします。
目次
NAVERリスティング広告とは?
NAVERリスティング広告(正式名称は「パワーリンク」)は、韓国で最も使用されている検索エンジンである「NAVER」に出稿できる有料広告の一つです。
リスティング広告は、ユーザーが検索エンジン上で特定のキーワードを入力した際に検索結果の上部や下部に表示されるテキスト広告です。サイトへの訪問や商品購入、問い合わせにつなげることを目的として活用されています。
NAVERには、検索広告(リスティング広告)からディスプレイ広告、ネイティブコンテンツまで、カスタマージャーニーのあらゆる段階のユーザーにアプローチできる様々な広告が用意されています。
特にリスティング広告は、ユーザーが入力したキーワードに基づいて表示されるため、既に商品やサービスに関心を持ち、購入を検討している顕在顧客に対して有効な広告施策です。
韓国市場向けNAVERリスティング広告の重要性
NAVER広告は韓国のデジタル業界で重要な役割を果たしています。特にリスティング広告は、以下の理由から韓国市場でのデジタルマーケティングにおいて重要な施策となっています。
① 高い検索エンジン利用率
NAVERの検索エンジンは、韓国で大きなシェアを占めており、2024年10月現在、韓国の検索エンジン市場の約43%のシェアを占めています。また、リスティング広告は韓国のプラットフォーム別広告商品の流入率調査で、1位(34.6%)を記録しています。
年々、Google 広告(31.4%)との差は縮まってきましたが、依然として多くのトラフィックがNAVERリスティング広告を通じて発生しています。
※韓国の検索エンジン事情を知りたいかたには、以下の記事より詳しく解説しております。
韓国で人気の検索エンジン 2024
韓国向け検索エンジンマーケティング
② 検索結果ページの優位性
NAVERで検索を行うと1ページ目の検索結果に、最大15件のリスティング広告が最上位に表示されます。ブログやウェブサイトの結果よりもリスティング広告が上位表示されるため、韓国のデジタルマーケティングではSEO対策よりもリスティング広告でトラフィックを得ることが主流となっています。
さらに、リスティング広告は色付けされているため、視認性が高いのも特徴の一つです。
検索結果の例
「日本旅行(일본여행)」を検索すると、① NAVERリスティング広告、② 日本の天気や為替レート、③ 日本の専門家コンテンツ、④ 日本の都市ごとの見どころなどの順で表示されます。
③ 韓国ユーザーの検索習慣
韓国では、情報収集から比較検討、購入までのプロセスを、NAVER検索で完結する習慣があります。具体的には以下の流れになります。
① NAVER検索で商品・サービスの情報を
② NAVERブログ(≒ 日本のAmebaブログ)や知識iN(≒ Yahoo! Japanの知恵袋)を参考にして
③ 具体的な商品名やサービス名をキーワードとして検索
④ リスティング広告を通じてWebサイトにアクセスする傾向
このような特徴から、韓国市場向けにNAVERリスティング広告を活用することは、短期間に多くの韓国ユーザーにリーチできる有効な施策と言えるでしょう。
NAVERとGoogle リスティング広告の違い
日本で馴染みのあるGoogleリスティング広告とは異なり、NAVERリスティング広告には表示方式や機能にいくつか重要な違いがあります。以下は、両広告の主要な特徴と違いをまとめた表です。
ユーザーの検索意図に応じて表示が変わるGoogleとは異なり、NAVERリスティング広告は常に最上位に多数の広告が掲載されるため、広告競争は非常に激しいのが特徴です。
キーワードのマッチタイプは、2024年10月10日、「部分一致機能」が正式にローンチされましたが、現時点では「完全一致」が主流となっているため、韓国ユーザーがどのようにキーワードを掛け合わせて検索を行うのかを理解し、より効果的なキーワードを選定する必要があります。
また、コンバージョントラッキングはNAVERが独自に提供するツールを使用するため、Googleリスティング広告に慣れた経験者であっても広告設定に課題を感じる場合があります。
NAVERリスティング広告の運用Tips
NAVER広告の基本的な運用方法は、Googleリスティング広告に似ていますが、NAVERリスティング広告を少しでも効果的に活用するためのいくつかのヒントを紹介します。
目的とターゲットを明確にする
広告運用における基本中の基本ではありますが、具体的な目的・目標・ターゲットを設定し、自社ビジネスのターゲットの特性を再確認しましょう。
これは、実際の広告キャンペーンの予算配分、キーワード設定、効果分析に必要な情報です。自社運用のみならず、パートナー企業にも事前にこの内容を伝えることでスムーズかつ論理的に広告施策を進めることができます。
最低限、以下4つの項目は明確しておきましょう。
目的:認知拡大、問合せ、オンライン購入、トラフィック増大など
ターゲット:年代・性別・地域・企業規模・業界・職種・役職・興味など
目標:コンバージョン単価○○○○円など
予算:○○期間中、○○○万円など
派生キーワードを網羅する
NAVERリスティング広告では、完全一致方式が主流であるため追加のトラフィックやキーワードの精度向上のために、メインキーワードを選定した後、派生キーワードを登録していくことがポイントです。
派生キーワードは、メインキーワードの「単語の順変更キーワード」や「類似キーワード」、「ロングテールキーワード」「誤字キーワード(意外とあります)」などが代表的です。特に日本語や英語でのブランド名キーワードは、ハングル表記がユーザーによって異なるケースがありるためしっかりと調査を行いましょう。
これらのキーワードは、競合他社の広告入札が比較的少なく、クリック単価が安い傾向があります。そのため、できればキーワードを網羅して登録し、クリック率・クリック単価などのパフォーマンスをモニタリングしながらPDCAを繰り返すことをお勧めまします。
※NAVER広告の管理画面からアクセスできる「キーワード管理」ツールを利用することで、簡単に類似キーワードを調べることができます。
拡張素材を積極的に活用する
NAVERリスティング広告では、広告の視認性を高めたり、追加情報を伝えるために、10種類の拡張素材を提供しています。これにより、ユーザーに自社商品やサービスのメリットや、競合他社との差別化ポイントをアピールすることができます。
最大15件に及ぶ広告の中からクリックしてもらえるためには、可能な限りの拡張素材を活用することをお勧めします。
利用可能な拡張素材:計算機能、追加タイトル、プロモーション文言、サブリンク、価格リンク、画像、画像型サブリンク、位置情報、動画、ブログレビュー
配信媒体を精密にコントロールする
NAVERリスティング広告は、NAVERの検索結果画面以外にも、NAVERが提供するプラットフォームやパートナーのWebサイトに広告を配信できるという特徴があります。韓国のユーザーが情報収集に利用するNAVERブログ、ウェブコミュニティ、ニュースサイトなど、ターゲットに適した配信媒体を選定し、クリック単価を調整することで、さらなるパフォーマンス改善を試みることができます。
以下は、広告配信媒体の区分となります(2024年10月現在)
広告運用における共通課題ではありますが、最初の設定で満足のいく効果を得るのは難しいものです。競合他社の分析、地域ターゲティング、季節性や時事性を考慮した広告戦略の修正など、継続的で迅速なPDCAサイクルを回すことで、費用対効果を高めることが重要です。自社での運用が難しい場合は、専門家のアドバイスを求めるのもおすすめします。
NAVERリスティング広告のよくある課題
韓国市場に進出する企業にとって、NAVERリスティング広告は非常に有効なマーケティング手段ですが、運用にあたってはさまざまな課題が存在します。特に、広告アカウントの開設から言語や文化の違い、そして激しい広告競争など、日本企業が直面しやすい障壁がいくつかあります。
アカウント開設には「事業者登録証」が必要
広告配信の前段階として、NAVER広告アカウントを開設するためには、韓国での事業証明である「事業者登録証」が必要です。韓国に事業拠点がない企業にとって、この点が大きなハードルとなります。
言語と文化の壁
韓国ユーザーの検索習慣は日本ユーザーとは異なる点が多く、効果的な広告文やキーワードを設定するには、韓国市場に関する専門的な知識が求められます。韓国市場への進出が初めての場合や、社内に韓国人スタッフがいない場合は、広告代理店などのサポートを受けることをお勧めします。
※ 韓国で検索エンジンを「使い分け」している特徴がありますが、以下の記事より紹介しています
韓国で人気の検索エンジン 2024
韓国向け検索エンジンマーケティング
広告競争の激しさ
NAVERでは、一つのキーワードに対して最大15件のリスティング広告が、入札価格などさまざまな要因によってリアルタイムで順位が変動します。そのため、リスティング広告を上位表示させるためには、継続的なデータモニタリングと迅速な最適化作業が必要となります。
競合状況や広告パフォーマンスを一目で確認できる自動化レポートを用意し、パフォーマンスの良し悪しの基準を設けて、素早く戦略判断や施策の実行を行うことが重要です。
NAVER広告を検討する場合、多くの日本企業は韓国のデジタル事情やNAVERの独自システムを理解している広告代理店を通じて広告を運用することが一般的です。まずは良きパートナーを見つけ、広告配信を進めながら、究極的には社内でノウハウを蓄積する体制を構築しましょう。
まとめ
NAVERリスティング広告は、韓国市場でのデジタルマーケティングにおいて、重要な手段の一つです。韓国市場に進出する際には、まずNAVER広告の特徴をしっかりと理解し、韓国ユーザーの検索習慣や文化に合わせた戦略を立てることが、成功のカギとなります。
しかし、韓国向けデジタルマーケティングはNAVERリスティング広告だけで成り立つものではありません。他にも多くの施策があり、その中から最適な方法を選択する必要があります。たとえば、「他にはどのような施策例があるのか?」「自社と似た業界ではどのような施策でどんな効果を得たのか?」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。
特に、韓国のデジタル環境に不慣れな日本企業にとっては、広告運用において適切なサポートが必要不可欠です。効果的な広告運用や最適化のために、専門的な知識を持つパートナーとの連携が成功のカギとなります。「実際の海外デジタルマーケティング支援事例」をご案内しておりますので、グローバルビジネスの強化に向けた参考として、ぜひご活用ください!
ヨンス チェ マーケティング部
大学では日本語の通訳・翻訳を専攻し、韓国から日本への移住を決意。 「日本と世界をデジタルで繋ぐ」マーケターとして活躍したいとを思い、インフォキュービック・ジャパンへ入社。 淡水エビ・タランチュラ・大型オウム・希少クワガタなどの飼育・繁殖経験もあるほど生き物が大好きです。現在、ヤモリを飼育して10年以上、ヤモリ愛に溢れた韓国人です。